私の名前は粕田舞造(かすたまいぞう)。AmazonのPrime Nowがサービス対象エリアを大幅に縮小して残念だ。夜にシリコングリスが尽きたり、micro HDMIケーブルが必要になったときなどに便利だったのに。いま考えると、そんなものまで扱っていたのかと驚くが。

今回はAMDの第3世代RyzenとX570チップセットの組み合わせで実現するPCI Express 4.0(以下PCI-E 4.0)の有効性について検証してみたい。現在(2019年12月末)のところ、IntelのCPUとチップセットの組み合わせではPCI Express 3.0まで。PCI-E 4.0対応はAMDの大きなアドバンテージとなっている。

PCI-E 4.0は片道の1レーンあたりの理論帯域は約1.97GB/sとPCI-E 3.0の約0.98GB/sの約2倍になっている。この恩恵を一番受けられるのはSSDだ。現在NVMe SSDは理論帯域は約3.94GB/sのPCI-E 3.0 x4が主流だ。しかし、ハイエンドモデルのSSDではこの理論帯域の上限に近い性能に到達している。この限界をPCI-E 4.0 x4なら理論帯域で約7.88GB/sと簡単に突破できるというわけだ。

ここではSeagateのPCI-E 4.0 x4対応NVMe SSD「FireCuda 520」の1TB版を使って、PCI-E 4.0とPCI-E 3.0でどの程度性能に差が出てるのか試していく。テスト環境は以下の通りだ。

■テスト環境
CPU:AMD Ryzen 7 3700X(3.6GHz)
マザーボード:MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)
メモリ:Kingston HyperX FURY RGB DDR4 HX432C16FB3AK2/16(DDR4-3200 8GB×2)
グラフィックスカード:GIGA-BYTE GeForce RTX 2070 WINDFORCE 8G(NVIDIA GeForce RTX 2070)
システムSSD:Kingston KC600 SKC600/1024G(Serial ATA 3.0、1TB)
OS:Windows 10 Pro 64bit版

  • SeagateのFireCuda 520。フォームファクタはM.2でPCI-E 4.0 x4に対応する。1TB版の実売価格は30,000円前後

  • Ryzen 7 3700XとX570チップセットの組み合わせを使用

  • 動作時はマザーボード付属のヒートシンクを使用している

FireCuda 520はコントローラにPhisonの「PS5016-E16」を採用するPCI-E 4.0 x4対応のSSD。500GB版、1TB版、2TB版をラインナップする。公称のデータ転送速度はシーケンシャルリードは全容量で5GB/s、シーケンシャルライトは2TB/1TB版で4.4GB/s、500GB版で2.5GB/sだ。保証期間は5年間。

マザーボードのMSI MPG X570 GAMING EDGE WIFIは、CPUに近いM.2スロットがPCI-E 4.0対応、遠いM.2スロットがPCI-E 3.0対応とテストするにはうってつけの構成。ちなみに、PCI-E 3.0のM.2スロット使用時は念のためUEFIの設定も「Gen3」(PCI-E 3.0)に変更をしている。

まずは最大速度を見るCrystalDiskMark 7.0.0gの結果から見ていこう。デフォルト設定で測定している。PCI-E 4.0接続時はシーケンシャルリードで約5GB/s、シーケンシャルライトで約4.3GB/sとほぼ公称通りの性能を発揮。一方のPCI-E 3.0接続時はシーケンシャルリード、ライトとも約3.2GB/sとインターフェースがボトルネックになって最大性能を出せていないのが分かる。また、ランダムリードやライトも若干低下した。

  • CrystalDiskMark 7.0.0g、PCI-E 3.0接続時

次はPCの総合性能を測るベンチマーク「PCMark 10」のProfessional版に新たに搭載された「Storage」を試して見たい。このStorageテストはWindows 10の起動、Adobe PhotoshopやIllustratorなどアプリケーションの起動、Microsoft Officeの操作、ファイルコピーなど実際の利用シーンを使って測定している。最大性能ではなく、実際の使用感として差があるのか確かめられるテストと言える。PCI-E 4.0接続時はPCI-E 3.0に比べて総合スコアで約8%上昇、データ転送速度を示すBandwidth、平均アクセス時間の示すAverage access timeもPCI-E 4.0接続時のほうが高速だ。

  • PCMark 10 Storage、PCI-E 4.0接続時

  • PCMark 10 Storage、PCI-E 3.0接続時

PCI-E 4.0接続ではデータ転送が高速になるため、SSDの温度も気になるところ。とはいえ、X570チップセット搭載のマザーボードはほとんどがM.2スロットにヒートシンクを搭載。今回のMPG X570 GAMING EDGE WIFIもヒートシンクに加え、チップセット冷却ファンの風がM.2スロットにも送り込まれる仕組みが採用されている。TxBENCHで10分連続でシーケンシャルライト(容量150GB設定)を実行し、HWiNFO64で温度の変化を測定したが、最大で68度とまったく問題のないのレベル。一般的な使い方でここまでの負荷がかかる状況はあまりないので、ヒートシンクを取り付ければ、PCI-E 4.0でも温度の心配はいらないと言える。

PCI-E 4.0対応SSDとPCI-E 4.0対応環境の組み合わせはPCI-E 3.0環境よりも性能の底上げが可能と言える。PCI-E 4.0対応SSDは登場当初は高価であったが、値下がり傾向にあり、製品によってはハイエンドのPCI-E 3.0対応SSDよりも安いことも。第3世代RyzenとX570チップセットを使っている、または使うことを考えているなら、合わせてPCI-E 4.0対応SSDを導入する価値はアリだ。