パナソニックが新型レッツノートを発表した。12.4インチ(3:2)のSCがこの6月から、14インチ(16:10)のFCが秋頃から受注を開始する

  • 12.4型のレッツノート SC(カームグレイ)、そして14.0型のレッツノート FC、12.4型のレッツノート SC(ブラック)を並べたところ

セキュリティ重視の声でSDスロット廃止

今回の新型レッツノートでは、同シリーズが頑固に守り続けてきた3つの要素が撤廃されることになった。いわゆるレガシー、つまり、遺産と呼ばれる規格の装備がなくなる。また、電源スイッチも、従来のスライド式からボタン式へと変わることになった。

まず、SDカードスロットがなくなる。SDメモリーカードは1999年に発表された規格で、松下電器産業(現パナソニック)、東芝(現キオクシア)、サンディスクによって開発・発表された。今もデジタルカメラなどで使われているポピュラーな規格だ。

大企業ユーザーが多いレッツノートでは、顧客の多くがセキュリティを重視する。その一環として、外部メモリーカードを読み書きできないほうが望ましいという声があったようだ。その意見を聞きいれ、撤廃に踏み切ったという。

これまでは、多くの企業ユーザーがカードスロットを論理的に無効にしたり、スロットを物理的に塞ぐような加工を施したりしていたのを受けての判断だそうだ。

レッツノートからついにVGA端子が消える

そして、VGA端子もなくなる。D-Sub15ピンのコネクタでアナログRGB信号を伝送するもので、ディスプレイの接続に使われてきた。

2000年代以降、ブラウン管のディスプレイから液晶ディスプレイへの移行が起こり、HDMIやDisplayPortなどでの映像出力に切り替わっているが、プロジェクター製品などでVGA入力しか受け付けないものが少なくなかったため、レッツノートはずっとVGA端子の搭載を続けてきた。

今後はHDMIポートやUSB Type-CポートのDisplayPort Alternate Modeを使っての映像出力を頼ることになる。

交換式バッテリーの使いやすさも見直し

そして最後が交換可能なバッテリーだ。ただし、バッテリーが内蔵されてしまってエンドユーザーが交換できなくなったわけではない。これまではスライド式のレバーなどで脱着していたバッテリーパックを、2本のネジで固定するように変更した。つまり、脱着には工具としてのドライバーが必要になる。

  • レッツノート SCの底面。バッテリーはこれまで、スライド式レバー機構により、手元に工具がなくても外せたが、SCではドライバーでネジを外す必要がある

消耗品としてのバッテリーパックは、使い続けるうちに、だんだん劣化していく。通常は新品時の半分程度しかPCを駆動できなくなったときを寿命とするようだ。だが、バッテリーが経年で劣化したときにも、それを新品に交換すれば、本体が購入時のような状態に蘇る。レッツノートのリセールバリューが高いのは、そんな面も評価されてのことだ。

多くのPCはバッテリーをパーツとして内蔵しているため、劣化したときの交換はエンドユーザーにはできず、保守サービスに預けての修理扱いとなる。バッテリーを交換するためだけに、一定の期間、そのPCが使えない時間が発生したり、場合によってはセキュリティ確保のために、PCをバックアップ後、いったん初期化して工場出荷状態に戻し、交換修理を行い、戻ってきたPCにバックアップを書き戻すといった手間をかける必要があった。

発表会での係員の説明によれば、工具なしで簡単に交換できるバッテリーの機構は、PCのバッテリー駆動時間が決して長くなかった時代の名残のようなもので、当時は、複数のバッテリーパックを用意しておき、バッテリーが空になったら別のパックに取り替えるような使い方で1日を乗り切るユーザーがいた。一部のモデルでは、バッテリーパックを単体で充電できる充電器も用意されていたりもした。

だが、現在では、そんな使い方をするユーザーはほとんどいないことがわかってきて、ネジを使っての脱着方式採用に踏み切った。これによってわずかながらも軽量化に貢献することができたという。

この刷新は終わりではなく始まり

SDメモリーカードスロット、VGA端子、着脱が容易なバッテリーパック。これらはレッツノートのシンボルのような存在でもあったわけだが、それがなくなるというのはひとつの時代の終焉であるともいえる。

次にレッツノートが撤廃するのはなんだろう。有線LAN端子、3.5mmオーディオポート、HDMIなどはUSB Type-Cに集約できそうだし、そのころには、USB-Aもいらなくなっているかもしれない。もっともUSB Type-C Power Deliveryによる充電をサポートするようになった今も、あえて専用のDC-IN端子を残しているのがレッツノートだ。製品添付のアダプタも専用のものだ。

ビジネスの現場における安定性や互換性を頑なに守り続ける哲学こそがレッツノートの真骨頂でもある。今回の刷新はきっと新しいこだわりへの序章にちがいない。次の刷新がいつになるのか興味は尽きない。ただ、相当の時間がかかりそうではある。