パソコンをインターネットに接続するにはなんらかの通信手段を確保する必要がある。オフィスなどの仕事の拠点や学校内といった場所なら、その組織が提供する安心安全に使えるWi-Fiが用意されているかもしれない。

そうしたWi-Fiにしか接続を許可していないところも少なくない。何かがあっては情報漏洩などのたいへんな事態になる可能性を考えれば、そうしたい気持ちもわかる。安全なネットワークが使えるところだけでインターネットに接続できることはビジネスで使うパソコンでは必須条件だともいえる。

その一方で、カジュアルなインターネット接続はどうか。最近は若い世代に限らず、スマホに頼ることがほとんどでパソコンを使うことを億劫に思う傾向が強いようだ。

いろいろな理由があるとは思うが、大きな要因のひとつがいつでもどこでもすぐにインターネットにつながるスマホに対して、パソコンは、とにかく「つなぐ」ということを真っ先に考えなければならないからではないだろうか。

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    2025年1月、KDDIはノートPCにデータ使い放題の5G/LTEモバイル通信機能を内蔵する法人向けサービス「ConnectIN」(コネクティン)を発表した。こういったサービスが個人向け製品にも広がれば市況は違ってくるのかもしれない

PCを持ち運んでネットワークに接続、スマホよりは面倒

もちろんパソコンはポケットに入らないからカバンに入れて持ち運ぶ。そして、カバンから取り出すにしても、キロ単位に届く重量はやっかいだ。取り出して液晶を開けばすぐに使えるようになるが、そこがいつものWi-Fiにつながる場所であるとは限らない。

だから、パソコンを開く前に、そこはいつものWi-Fiが使える場所かどうかを把握しなければならないし、そうでない場合は、携行している愛用のスマホに通信を頼るために、前もってスマホのインターネット共有をオンにしてからパソコンを取り出すようにする。

先にインターネット共有をオンにしておけば、少なくともパソコンを開けばそれに接続するという点で、いつもの使い方と同じイメージでインターネットに接続できる。

もちろん丸一日インターネット共有をオンにしたままスマホを使っていれば、パソコンを開けばつながっているという環境が得られるのだが、それではスマホのバッテリの消費が負担になる。

もし、パソコンが単独でモバイルネットワークに接続することができるのなら、そんな手間をかけることなく、いつでもどこでも液晶ディスプレイを開くだけで、自動的にインターネットにつながる。

だが、まるで空気のようにモバイルネットワークが張り巡らされているこの時代に、それにつながるパソコンがいたって少ない。特に個人向けのパソコンでモバイルネットワーク対応のものを探すのはとても難しい。人気のMacBookシリーズでも対応機は皆無だ。iPadであればちゃんと対応モデルがあるのにノートパソコンにはない。

単独でネットにつなげられるPCはまだ多くない

モバイルネットワークはいわゆるスマホのためのネットワークで、Wide Area Networkの頭文字をとってWANとも呼ばれる。ドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルといった携帯電話事業者のネットワークを通じてインターネットに接続するサービスだ。スマホ同様にパソコンにも契約が必要で、インターネットを利用するとそれなりのデータ通信量を消費する。

各社、スマホ通信を契約していれば、そのオプションサービスとして1,100円で30GBといったデータ通信専用のサービスを提供しているので、こうしたサービスに加入するなり、別の事業者で毎月のデータ通信量に応じたサービスを探すなりの手間が必要になる。

それでもエンドユーザー側から見れば、モバイルネットワーク対応のパソコンを手に入れるために追加のコストがかかり、さらにそれをモバイルネットワーク経由でインターネットに接続するためにけっこうなランニングコストがかかることを覚悟する必要がある。ただでさえスマホにカネがかかっているのに、そんな余裕はないということで敬遠もする。だから各社もあまり熱心に対応機を揃えないという悪循環があるわけだ。

だからといって、QualcommのSnapdragon搭載Windows Copilot+ PCといった、まさにモバイル対応を真っ先に謳った尖った最新鋭のパソコンにもWAN対応機が存在しないというのはどうかと思う。

WANにつながるPCが当たり前の時代が来るか

もはや、インターネットにつなげなければ使う意味がないのがスマホやパソコンといったスマートデバイスだ。

モバイルネットワーク対応には、コストのかかるアンテナ実装や、モデムモジュールの搭載などが必要で、どうしても価格は高くなる。だが、そこを企業努力で何とかして、Wi-Fiに加えてWANにつながるパソコンを当たり前にしてほしいものだ。そう考えるようになって四半世紀、遅々として対応は進まない。