アイロボットが掃除機と床ふき双方に対応するロボット「Roomba Combo Essential robot」を発売する。ユーザーニーズに応え4万円を切る普及価格モデルとして清掃力と手軽さを兼ね備えたシンプルルンバとして発売する。
世の中に出てきた新しい製品が社会に浸透し、それまでの高付加価値製品がごく一般の市民にも慣れ親しまれるようになり、あって当たり前のコモディティとして受け入れられるようになるきっかけになる製品かもしれない。
世帯普及率が約10%を達成、ルンバが目指す次のフェーズ
アイロボットジャパン合同会社代表の挽野元氏は、2002年に誕生した同社のロボット掃除機は全世界での累計販売台数が5,000万台を突破し、日本国内でも600万台を売上げていることを公表。現在の世帯普及率は約10%を達成しているという。
これは挽野氏がこれまで目指してきたマイルストーンでもある。そして、ここからロボット掃除機がアーリーアダプター向けの製品と、アーリーマジョリティの間にあるキャズムの溝を超えれば、次のフェイズに移ることができると同氏はいう。
アイロボットジャパンは、すべての家庭にロボット掃除機がある時代を目指してきた。今回は、普及価格帯製品として今回の新製品を投入する。
キャズムを超えるためには価格が重要だと挽野社長はいう。今回は、39,300円という戦略的価格を設定する。2022年にルンバ史上最安価格で発売された「ルンバ i2」(直販価格39,800円)は、ロボット掃除機購入の障壁となる機能や金額での誤解、いわゆるルンバパラドックスを払拭するためのモデルだったが、それと同価格帯でありながら床の水拭き機能を追加、新たな付加価値を持つモデルとして位置づけられる。
今、ほとんどのルンバユーザーはクリーンベースつきを選ぶそうだ。これは掃除後のルンバが帰還するベースステーションで、充電でエレルギーを復活させるとともに、ルンバが掃除で吸い込んだゴミを回収する。掃除の頻度にもよるが半年以上もゴミ捨ての必要がないともいう。ルンバを使ってみていいと思ったユーザーが向かう道だ。
人気の機能を割り切って戦略的な価格を実現
だが、今回の新製品はクリーンベースには対応しない。こうした人気機能を抑えてでも価格を追求し、挽野氏がいうところのキャズムの溝を超えようとしているわけだ。
またカメラセンサーも持たない。カメラは障害物を認識、検知、それを回避するために使われるがそれがない。実際には、障害物に衝突するとそれを検知して別の場所に移動するような動きで代替する。
今回は、ルンバの人気機能を省略してまでも価格を優先したわけだが、それでも床拭き機能は搭載している。ルンバの多くを理解しているアーリアダプターではなく、ルンバパラドックスに陥った次のマジョリティを確保するためには、こうした商品企画上での割り切りも必要だったということなのだろう。
一筋縄ではいかない大きな溝を超える必要がある
挽野社長は近年人気のスティッククリーナーとの競合も気になっている様子で、そこを超えて一家に一台のロボット掃除機という世界観の実現をめざすという。
今回の「Roomba Combo Essential robot」投入と同時に、新製品として「Roomba Combo j5+」「Roomba Combo i5+」も登場する。こちらも従来モデルに対して水拭き機能が追加され、上位のj5+ではカメラセンサーも搭載されている。
だが価格的には倍以上の開きがあるイメージで、その間にも何らかの価格戦略的商機があるようにも思える。一家に一台と気軽にいっても、それを実現する戦略は一筋縄ではいかない大きな溝を超えなければならないのだろう。