• 生産性高く在宅勤務をすすめるためには、個人それぞれのちょっとした工夫が必要だ

    生産性高く在宅勤務をすすめるためには、個人それぞれのちょっとした工夫が必要だ

かつてのNGが許容される時代だ。いわば、それが新しい当たり前なのだが、それによって世の中は大きく変わっていく。いい面もあれば悪い面もあり、それはみんなコロナのおかげだと言ってしまうのは簡単だが、その背景には考えなければならないこともたくさんある。

調査会社大手のガートナーが4月に発表した調査結果によれば、世界主要国の従業員の5人にひとりがデジタルテクノロジーのエキスパートを自認しているという。つまり、デジタルで仕事をする2割の従業員が、自分がそのテクノロジーに習熟していると考えているようなのだ。

どうしてかというと、コロナでリモートワークが当たり前になった結果、これまでは至れり尽くせりだった情報システム部の庇護に、気軽に頼ることができなくなり、また、対面でのサポートも受けられなくなった結果、それを自ら解決しようとしたからのようだ。

調査では、業務における在宅勤務時間が増えた従業員のうち、36%が生産性が向上し、35%が変化なしと回答している反面、4分の1は生産性が低下したと回答していることが明らかにされている。

生産性の低下は「横のつながり」不足

生産性低下の理由は、従業員同士のつながりをサポートするテクノロジーの変化だ。

つまり、7割近くの従業員が生産性が同じか上がったといっている。コミュニケーションツールを使いこなせるエキスパートを自認する人たちを筆頭にした層だ。だが、それに取り残された25%の従業員はなんらかの悩みを抱えたまま、生産性を上げられずに苦しんでいる。ガートナーは、情報システム管理者は、従業員同士の横のつながりを重視すべきだと結論づけている。

コロナ禍によって多くの企業や個人のユーザーが在宅勤務のための装備を求めたことや、寒波の影響による工場の停止、また、火災による被害などによって、世界的な半導体不足が、今、いろいろな方面に影響を与えている。米中の関係悪化を懸念し、中国が半導体の備蓄規模をあげていることも影響しているようだ。

ガートナーの調査結果のように、5分の1の従業員は、優れたデジタルスキルがあればこそ、プアな装備であっても、それを駆使できる。つまるところは、プアな装備をスキルで補うことができたともいえそうだ。

一方、それほどのスキルを身につけていない層については、そのプアなスキルをリッチな装備で補う必要がある。たとえば13.3型程度のモニターしかもたず、また、プロセッサーの処理能力やメモリ量が貧弱なモバイルノートパソコンで、ZoomやTeamsを使ってオンラインミーティングをこなし、Webで文書を参照しながら、自分のフォルダで既存の文書を探し出し、それを開いて編集してといった作業をこなすには、相当のスキルが必要だ。やってできないことはないが、スキルがあったってやりたくない。

一時のコストでスキル不足は解消する

リッチな装備は、スキル不足をカンタンに解消する。テクノロジー以前の問題だ。一時的なコストで解決できるのだ。たとえば、大きなモニターを複数台つなげばモバイルノートパソコンでも、より高度な使い方ができる。低い処理性能もそれほど生産性を下げない可能性もある。

だが、それができる環境とできない環境がある。在宅でフルタイムの仕事をすることを想定していない住居で仕事せざるを得ない場合はよくある話だし、悪意はないにせよ協力的ではない家族の存在もあるだろう。また、与える側は、そんなコストを想定していなかったりもするだろう。さらには、リッチな装備があっても、もともとのスキルが追いつかないケースもある。

もっというなら、スキルを高める向上心をもち、自宅をフルタイム勤務のためにちょっとした改造をし、雇用側もリッチな装備への投資を惜しまなかったとしても、ドライバーIC不足による液晶パネル不足、パソコン用プロセッサーの供給不足などで、かけるコストに対して得られる装備がプアなものになってしまう懸念もある。それが2021年の今起こっていることだ。

デジタル機器の調達危機を乗り切るために

ちょっと覗いて見るとわかるが、大手パソコンベンダーのダイレクト販売サイトでは、即納で入手できる製品がきわめて限られている。よりどりみどりというわけにはいかないのだ。10日前後の納期を覚悟で注文しても、数カ月待たされることだってあるかもしれない。

潤沢にデジタル機器の部品調達ができるようになるまでは、当面、エンドユーザーは自分のスキルを伸ばすことを考えなければならないだろう。でも、そのスキルは、デジタル機器の供給が落ち着いたときにもきっと役に立つはずだ。

もっというなら、この危機を乗り切るスキルが身についたのだからリッチな装備はいらないという結論を出さないことだ。そのスキルは、リッチな装備をさらに活かすことにつながるにちがいないからだ。雇用側、そして、企業のITを管理する立場にいる層は、そこを勘違いしないようにしてほしい。