メルカリが、「2020年度フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」に関する意識調査結果を発表した。

2020年8月12~14日にインターネット調査を実施したもので、調査対象は全国の20~69歳、男女1,463名だ(フリマアプリ利用者500名、フリマアプリ非利用者500名、緊急事態宣言中にフリマアプリ利用を開始した人463名)。まさに、コロナ禍におけるC2C市場の消費行動を反映した興味深いデータだ。

中古品の購入に抵抗感を感じる人が増えた

サマリーとしては、中古品の購入・使用への抵抗感が、2019年の調査より増加している。同時に、中古品の購入機会が減少してもいるようだ。やはり見知らぬ他人が使ったものに感染リスクを感じる層が一定数いるということでもある。だから、いわゆる中古品より新古品のニーズが増えている。だが、いったん売る側に回ると、自分で使って不要になった中古品を出品したいという意向は高まっている。人間はいかに勝手なものかがよくわかる。

  • 中古品の購入・使用への抵抗感が、2019年調査から8.4%増加しているという(メルカリ「2020年度フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」より)

この調査の発表会後のパネルディスカッションで、同社President(会長)の小泉文明氏は、「フリマアプリは定着しているが、ライト層に拡がっていることで、中古品への抵抗が増しているように見える。だが、これは空気で動く人たちだ。買い物はエンタテイメントであり、コロナ禍において収入が不安でもつい探してしまう。それがホッとするタイミングになっているのではないか」と調査結果を分析する。

また、ディスカッションに参加した三菱総合研究所 政策・経済研究センター センター長の武田洋子氏は「自宅にいる時間が長くなって、身の回りを見つめ直す機会が増えたことで、いらないもの、いるものが明確になってきたのではないか」と分析する。ちなみに、同氏が紹介した三菱総合研究所の別調査では、ポストコロナの時代には、SDGs(持続可能な開発目標)の優先順位が上昇するなど、今までの他人事が自分ごとに変わり、ヒトの集中から分散への世界観の台頭、そして、デジタルが加速すると同時に、そのリアルとの融合が起こり、リアルならではの魅力がデジタルによってあぶりだされる……といったトレンドが指摘されている。

  • 三菱総合研究所 政策・経済研究センター センター長の武田洋子氏(左)と、メルカリ President(会長)の小泉文明氏(右)

個人が売る中古品から、プロも関わる新古品へ

メルカリは、捨てることの罪悪感より、ほとんど儲けがなくても誰かが使ってくれれば捨てなくても済むという気持ちでフリマが成立していると言ってきた。経済的にものを売買してカネを回すビジネスでのみならず、地球を守る意識が原点になることで、その消費行動が活性化されてきたという。

市場で新品で買えないものを探して買うことや、買って使ったらすぐに処分するから新品である必要はないといった消費者行動は、いわゆるオークションでポピュラーになったが、メルカリはその先の行動を誘う。その結果、気に入らなければ売ればすむので試着しないで洋服を買うといった層まで生んでいる。

そのメルカリでの消費行動にさえコロナが影響を与えつつある。中古品が嫌われ、新古品の需要が高まることは、いわゆる(個人ではない)プロの割合が増えることにつながらないか。それが一時的なものなのか、これからのフリマ市場のトレンドとなるのかはわからないが、フリマのおもしろさという点ではつまらなくなっていくことの懸念も感じないわけではない。

インターネットが非対面で現物との接触なしでの売買を可能にして、フリマの世界を変えた。そのフリマがC2Cの消費者行動を変えた。だが、コロナはそこを台無しにしてしまうのか、それともポストコロナの時代には、元のように意識の高いマーケットに戻るのか。そこの面は、今後も注意深く見守っていく必要がありそうだ。