GoogleがPixel 4aの日本における出荷を開始した。

5.8型OLEDスクリーンのスマートフォンで、重量は143グラムと最近のスマホとしては軽量、ストレージも128GBある。プロセッサはQualcomm Snapdragon 730Gで、ハイエンドとはいかないが、Googleストアでの価格は42,900円(税込)と、コストパフォーマンスは抜群だといえる。

  • Pixel 4a。8月20日にGoogle直販サイトなどで販売を開始した

    Pixel 4a。8月20日にGoogle直販サイトなどで販売を開始した

とにかくスキがないPixel 4a

Pixel 4やPixel 3aまではスクリーンサイズの大きなXLバージョンが用意されていたが、今回は5.8型のみで、色もJust Blackだけと、製品バリエーションを絞ってきたことも、価格の抑制に貢献しているのだろう。

また、顔認証に代わり指紋認証が復活したのはマスク着用が多いコロナ禍にはうれしい。さらに、ワイヤレス充電も省略されているなど、いろいろなところでコスト削減が図られているが、それらが大きくユーザー体験を損なっていないところはさすがだ。防水防塵については技術仕様に記載がなく、丸洗いなどはできそうにないが、イヤホンジャックの追加や、おサイフケータイにもきちんと対応しているなど、とにかくスキがない製品に仕上がっている。

  • 背面には指紋認証センサー。上部にはイヤホンジャックも搭載している

Pixelシリーズは、ピュアGoogle体験を得られるAndroidスマホのリファレンス的な存在として、毎年秋に無印、毎年春に廉価版のa版がリリースされてきた。

2020年はコロナの影響で少し遅れての登場となったが、a版としてのPixel 4aだ。とにかく、これがもっともGoogleを楽しめるスマホだとGoogleが考えているという自信がみなぎっている。まさにGoogle体験のショールームだ。なのにその押しつけがましさをいっさい感じさせないところが潔い。

待てば5Gの日和あり

今回の発表と同時に、Googleは「今秋、5Gでのビデオ ストリーミングやコンテンツダウンロードなどをより高速かつスムーズに楽しめる新端末 Google Pixel 4a(5G)(60,500円から)とGoogle Pixel 5が登場します」とアナウンスしている。

最先端の5G対応Pixelが欲しいなら秋まで待てばいいということを明確に伝えているのだ。ただ、日本における5Gネットワークはまだまだ使える場所が限られているし、そのキーラーアプリも登場していない状況だ。

一般のエンドユーザーが5Gを堪能できる状況にはなっていないというのが現状で、仮に日常的には4Gネットワークだけしか使えないにしても、5G対応端末を用意して5Gプランに移行することで、データ容量をほとんど気にしないで使えるプランが通信事業者各社で用意されているなど隠れたメリットもある。だから秋まで待つというのもありだろう。

だが、カジュアルにスマホを使うユーザーにとっては、この秋に5Gを選ぶという積極的な理由はまだない。だから、5G対応端末しか選べないようになってから考えればいいという判断も賢明だ。今、4Gのみ対応のスマホを買ったとしても、5Gが全盛になるころには、そのスマホのライフサイクルは終わっていて、次の機種変更を検討しているタイミングだろうからだ。

そもそもスマホの買い換えは、ほとんどのユーザーが「壊れたとき」で、修理代金が新規購入より安上がり、という事実に強いられるものとなりつつある。なくては困るものだから切実だ。もはや、新製品の登場を待ち構えて買い替えるという時代でもないようだ。そういう意味では春と秋に刷新したモデルをリリースし、1年中いつ買っても、それなりに最新の体験が得られるようにしているPixelのポリシーは悪くない。

廉価なスマホほど割引率が高くなる

Pixel 4aを手にしたときに、どうしても比べたくなるのはiPhone SEの存在だ。iPhone SEはiPhoneが大きく重くなってきていることを嫌うカジュアルなユーザーに支持されているリーズナブルな製品だが、Pixel 4aはiPhone SEよりさらに5グラム軽く、昨今のスマホ製品の中では突出している。こういうスマホが欲しかったのだというニーズは決して少なくないはずだ。

平気で100,000円を超えるスマホの高価格化のトレンドは一段落し、今年から来年にかけては50,000円以下のレンジが充実するといわれている。ただ、徹底したコストダウンで廉価なスマホが増えている今、40,000円前後はそれでもまだ高いと感じるユーザーも多い。

気になるのは、Pixel 4a発売にあわせて、iPhone SEをMVNOが扱うようになり、回線セットの割引施策を打ち出す傾向にあることだ(取り扱いを開始したUQ mobileワイモバイルは、新規契約の場合いずれもApple公式価格より安い)。MNO各社の「購入サポート」戦略とあわせ、端末と通信料金の明確な分離が、またしても曖昧なものになろうとしている。

もちろん、ユーザーにとって割引はうれしいことかもしれないが、本当にそれでいいのかどうかを、よく考える必要があるだろう。

現時点で、改正電気通信事業法による端末の割引制限は20,000円までとなっている。これが売価の割合ではなく絶対額となっているため、廉価なスマホほど割引率が高くなるという結果を生んでいる。消費者がいちばん安いルートを見つけて端末を調達し、いちばんリーズナブルなキャリアと契約して通信を楽しむという時代はまだ遠いのだろうか。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)