日本マイクロソフトとソフトバンクが戦略パートナーシップを締結し、次世代コミュニケーションの構築に向けて動き出した。具体的には、ソフトバンクがMicrosoft Teams向けの音声通話サービス「UniTalk」を提供開始するというものだ。

  • 日本マイクロソフトとソフトバンクが協業を発表、Microsoft Teams向けの音声通話サービス「UniTalk」を8月1日からスタートする(写真は日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏[左]と、ソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼COOの今井康之氏[右])

マイクロソフトの企業向けグループウェア的なソリューションは、古くはExchange、そしてSharepoint、Skype for business、Yammerなどがあったし、コミュニケーションツールとしては、コンシューマー向けにWindows MessengerやMSN Messenger、Skypeなどがある。特にSkypeは、コンシューマー向けと企業向けのネーミングが似ていて、どれをどう使えばいいのかがわかりにくかった。

こうした混沌とした状態を、コラボレーションツールとして一気にまとめるのがMicrosoft Teams(以下、Teams)だ。企業内でのTV電話やチャット、ファイル共有にともなうコミュニケーションはSkype for Businessが長い間定番だったわけだが、それもTeamsへの移行が着々と進んでいるようだ。Office 365を契約している中小企業は、すでに強制的にSkypeに移行させられているようだし、大企業ももうすぐ移行を決断しなければならない。

どこにいても固定電話を発着信

今回のソフトバンクによるUniTalkは、このTeamsに03や06から始まる一般的な電話番号による通話サービスを追加するものだ。

各ユーザーはその電話番号の発信者としてパソコンやスマートフォンなどのTeamsから音声通話を利用できるし、当然着信もできる。Teamsには、音声のAI活用によるスクリプティングや翻訳サービスなどの実装が始まっているが、Taamsから見たUniTalkは、他の音声サービスと同様なので、これらを利用することも容易なように設計されているらしい。

  • UniTalkはマルチデバイス対応。ソフトバンクの電話網とはクラウドで直接つながるため、物理的な回線工事は不要だ

今、国をあげての働き方改革が進んでいるが、こうした電話サービスとの統合によって、テレワークや在宅勤務といった形態も重宝されるだろう。電話番号にしばられるばかりに、一定の固定された場所に赴かなければならなかった職種でも、あたらしい働き方ができるようになる可能性がある。

その一方で、Teamsのようなコラボレーションツールは、どうしても組織内に閉じた環境で使われることが多い。

今後は、フリーランスや外部の協力企業とのコラボレーションも増えていくはずだが、多くの企業は、コラボレーションツールのカギを外部に対して開放せずに、社内だけで使っている。Teamsの名誉のためにいっておけば、管理者が設定を変更するだけで、あるいは、設定を変更しなければデフォルトで外部とのコミュニケーションが可能なのだが、それをしない企業が多いようなのだ。

次世代の伝達手段か、それとも過去のしがらみか

何かがあったら困るし、困らないようにあらかじめカギをかけておく。そういうことなのだろう。そのために電話番号という、いっさい外部からの着信を拒めず、そして、どこにでも発信ができる方便がまかり通るというのはちょっと変な感じがしないでもない。

ソフトバンクでは、ごく短期間で100万契約を突破できると鼻息も荒い。逆にいうと、それほどこのサービスに興味を持つ企業が多いということは、なんとなく未来のコミュニケーションがやばいと思うのだ。過去のしがらみとしての電話にこだわることが未来につながるのか。これを次世代と呼んでいいのかどうか……。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)