一般社団法人日本データ復旧協会が、メディアに対してその活動について説明した。日本では、1995年頃に2社がデータ復旧事業をスタートしたが、それまでは失われたデータの復旧はできないものと考えられていたという。その後、新規参入が増え続け、現在では100社を超える業界になったとのことだ。

  • 一般社団法人日本データ復旧協会、会長の本田正氏

協会会長の本田正氏は、そのパイオニアとして知られる人物だが、このビジネスを始めたきっかけが興味深い。

20代だった本田氏はアマチュア無線で使う八木アンテナの設計者だったが、ある日突然のクラッシュで、その設計データを失ってしまったという。なんとかならないかと探したところ、世界には約30社のデータ復旧事業者がいることを知った。そのうちの一社にコンタクトをとり、わらにもすがる思いでカナダを訪ねてみたものの、残念ながらデータは復旧しなかった。だが、本田氏は、こういうこともできるのかとその業者に教えをこい、この事業を日本で始めることを決意したという。

悪徳業者を防ぐために生まれた協会

歳月が過ぎ、競争の激化につれて心ない事業者が顧客の信頼を裏切るようなところもあるというのが協会の悩みになった。データを失って途方に暮れている弱みにつけこみ、できるかどうかもわからない復旧に対して高額の復旧料金をふっかけたり、調査料と称して別料金を徴収するといった具合だ。

そこで有志5社が2009年に日本データ復旧協会を発足、その活動の中で2017年には一般社団法人化、会員は12社になった。今後も新たな仲間を探して会員増強をはかり、事業を推進していきたいと本田正氏はアピールする。

同協会によれば、デル/EMCの昨年(2018年)の調査では25%のデータが永遠に失われたという。また、2016年から2018年でデータロスは2倍に増加したともいう。だが、壊れないものは世の中にない。必ず壊れる。それがいつ壊れるのかがわからないのが問題だからこそ、バックアップは重要と本田氏は訴える。そして、扱われるデータは天文学的な量に達しようともしている。失う側もたいへんだが、復旧する側もたいへんだ。

すでに8年が経過しているが、東日本大震災当時、津波で機材が濡れてしまい、その復旧率は20%とかなり低かった。そこまでいかないとしても、復旧率90%やら95%といった実績をあげるというのはありえないと業者選定時の見分け方をレクチャする同氏。

相談も受け付けているが、やはり影響があるのは個人が多いようだ。というのも、法人は法的なトラブルに発展する可能性を懸念してさけられ、悪徳業者は個人を狙って泣き寝入りさせることが多いらしい。

  • 日本データ復旧協会の「業界宣言」。データ復旧業界の健全化を強くアピール

データを失う被害者をゼロに、復旧による被害者をゼロに

同協会の会員企業は復元できたときだけサービス料をもらう。できなければカネはもらわない。そして、データの中に児童ポルノ関連の画像などが見つかった場合は即座に復旧作業を中止し、契約を解除するともいう。

同協会の願いは、データを失う被害者をゼロにすることと、復旧の過程での被害者をゼロにすることのふたつだ。

消えたデータや壊れたデータはともかく、ハッキングや物理的な侵入、マルウェア等で、故意に、あるいは悪意で消されたデータも少なくないのもご時世ということで、時代の切なさを物語る。

ドライブレコーダーや防犯カメラ映像などの復旧需要も多くなっている。特に、ドライブレコーダーの中には、いったんメモリーカードを抜いてPCなどで確認後、もういちど装着すると、有無をいわさず初期化してしまうものもあると注意が喚起されていた。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)