auがAndoroidスマートフォン「GALAXY S5 SCL23」の更新を公開、キャリアアグリゲーションとWiMAX2+の利用ができるようになった。特に、WiMAX2+対応は、今後のau端末に大きな意味を持つことになるだろう。その背景について考えてみる。

事業者を束ねる"キャリア"アグリゲーション

残念ながら端末が手元になくて、この記念すべき最初のWiMAX2+対応スマートフォンを試せてはいないのだが、Twitterのタイムラインには、それなりに検証した結果のつぶやきが流れている。

WiMAX2+は、UQコミュニケーションズなど、WiMAX陣営のグローバルブランドだが、日本でポピュラーなFD-LTEとは別の、もうひとつのLTEであるTD-LTEそのものだといってもいい。WiMAX2+とTD-LTEは、実際には互換性を持った規格とされているが、基本的にはイコールだ。

キャリアグリゲーションは、複数の周波数帯域を束ねて利用することで通信帯域を向上させる技術だが、今回のWiMAX2+対応「GALAXY S5 SCL23」や、あとを追う「Xperia ZL2 SOL25」は、"キャリア"アグリゲーション、つまり、事業者を束ねる端末でもある。

5月になって総務省が携帯電話事業者同士が電波を共用利用することが容易になるようにする方向で検討に入ったことが明らかになった。事業者単位ではなくグループ単位での電波割り当てポリシーが取り入れられることになるともいう。総務省の陸上無線通信委員会報告(案)に対しては意見募集も行われた。先日は、Yahoo! によるイー・アクセスの子会社化を取りやめたニュースが世の中を騒がせたが、この決定はこうした動きを視野に入れたものだと思われる。

4Gのバックグラウンド

過去においても、auは、WiMAX対応をした端末を提供していたが、それらの端末は、auのためにわざわざWiMAX対応させたものを、端末ベンダーに頼んで作ってもらう必要があった。

だが、WiMAX2+は、TD-LTE互換であり、auに特化したものではない。実際、今後は、グローバル端末の多くがFD-LTEとTD-LTEを両サポートするようになるだろう。中国におけるTD-LTEサービスの開始が、端末の動向に大きな影響を与えた結果ともいえる。

想像の域を出ないが、今後、auが提供する端末は、そのすべてがWiMAX2+対応となるだろう。といっても、今のところ、端末の通知バーに表示されるのは「4G」という通知のみで、使っているユーザーはauのLTEにつながっているのか、UQのWiMAX2+につながっているのか、サービスモードなどに入って接続状況を確認する以外、基本的にはわからない。関係者の話によれば「(両波の圏内においては)すいている方につながる」ということのようだ。さらには、基地局をコントロールするサービス設備から、どの端末をどちらの電波に接続させるかといった制御ができるようにもなっていくとしている。

端末の調達もアグリゲーション?

auからのトラフィックが高まれば、UQはそのニーズに応えるために懸命になるだろう。基地局の増強やエリア拡大、さらには既存基地局のWiMAX2+化にもさらに力が入るはずだ。auもできるだけ早い時期に3Gのトラフィックを消滅させたいと考えているのは明らかなので両社の利害は一致する。

懸念があるとすれば、auトラフィックを優遇するあまり、オリジナルサービスであるWiMAX2+のマーケティングがおろそかになってしまわないかということだ。個人的には古くからのWiMAXユーザーなので、、データ通信に特化して多くのユーザーの支持を得ていたUQのサービスが普通の大手キャリア然としたものになっていきはしないかと心配もするわけだ。

ただ、auがTD-LTE端末を調達しやすくなるということは、UQにとっても端末調達が容易になるということでもある。現時点で、UQが提供しているWiMAX2+対応端末はWi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14一機種のみで、WiMAX、WiMAX2+、auLTEの3方式に対応している。

今後、基地局のWiMAX2+対応が進み、WiMAXエリアとWiMAX2+エリアがほぼ等しくなれば、WiMAXをサポートしない端末でも困らなくなる。そして、それはauの端末調達事情と等しいか、ガラスマ的な要素がなくてもいうぶん、さらに容易になるわけだ。

つまるところ、端末メーカーに特別なリクエストをしなくても、グローバル端末に大きな変更を加えることなく、それをベースにしてUQ用端末を開発してもらえる。コストも削減できるだろう。場合によっては、auとUQの両社に提供する端末というのも現実的になってくる。これは端末ベンダーにとっても"キャリア"アグリゲーションとなるわけだ。

もちろん、今後、UQがSIMフリーならぬ、端末フリーを認め、同社のSIMで、いわゆるTD-LTE対応の勝手端末の接続を許すような判断をすることがあれば、グローバル端末を調達して技適を通した上で販売するビジネスが成立するような可能性もある。

電波が有限の資源である以上、それを利用する事業者が熾烈な戦いのもとに電波を取り合うという図式はある意味で健全でもある。また、それによって事業者の独立性も保たれる。だが、グループ内での電波共用は、その図式を有名無実化するという懸念もある。消費者としては、そこが気になるところだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)