シャープがスマートフォンの新製品AQUOS zeroを発表した。3,130mAhのバッテリを内蔵した6.2型スクリーンのスマートフォンで、AQUOSとしては初めて有機ELを採用している。有機ELはもちろん自社生産だ。

  • AQUOS zero

世界最軽量のヘヴィ級スペック

同社ではこの製品を「世界最軽量のヘヴィ級スペック」と称している。なにしろ146gという重量は、重くなる一方のハイエンドスマートフォンの中でも飛び抜けて軽い。200gを超えるような製品も珍しくない中で異色の存在だ。

  • AQUOS zeroは風船で持ち上げられるくらい軽い

手元には2016年当時、世界最薄の5.2ミリを誇ったmoto Zがある。5.19ミリで5.5型有機EL、134gというスペックは、当時、相当のインパクトがあったのを覚えているが、今回のAQUOS zeroは、12g重いのだが、サイズは大きくなっていて、当時の印象に匹敵するインパクトがある。

軽さの秘密は、実装構造がシンプルな有機EL採用も功を奏しているが、超軽量マグネシウムボディの採用によるものが大きいそうだ。一般的なアルミ製構造から41%もの軽量化を果たしているという。また、バックパネルには軽量素材として強度と軽量を両立した「テクノーラ」を採用した。帝人が開発した繊維でナイロンの一種だという。帝人のサイトで確認すると、同社が1987年に商業生産を開始したものであり、同一質量でスチールの8倍、ガラスやポリエステル、ナイロンの3倍の破断強度を有し、軽量化に大きく寄与できる新しい合成繊維だという。

  • バックパネルは帝人の頑丈素材「テクノーラ」。スチールの8倍の破断強度を持つ

「大きいから重い」ままでいいのか

シャープはスマホのパワーユーザーであればあるほど重いスマホに耐えていることを指摘する。確かに200g近い、あるいはそれを超える重量のスマホは男性のポケットはもちろん、女性のハンドバックに入れてもその存在感はハンパではない。世界的な傾向としてはスマホの大型化は好まれる傾向にあるので、よけいに重量増が進行している。日本人はコンパクトなスマホを好む少数派の国民だというが、それはコンパクトさと同時に重量も気にしているのではないか。多くのユーザーは、スマホにカバーをつけるから、実使用時の重量はもっと重くなる。

だが、常に持ち歩くデバイスとして200gを超えるというのは、本当にそれでよいのかというと疑問も残る。大きいのだから、バッテリ容量が大きいのだから、重いのは当たり前ということを、なんとなく受け入れてしまってはいないか。

薄型軽量化は日本のお家芸

薄型軽量化は日本のものづくりのお家芸といってもいいかもしれない。それを実証した今回のシャープの仕事は、「軽さは正義」ということを再認識させてくれた画期的なプロジェクトだ。

製品は、販売業者を通じて年内には発売されるという。ただ、発表会場では、キャリアから発売されるのか、SIMフリーのオープン市場で発売されるのかは明らかにされなかった。シャープは日本のAndroidスマートフォンのベンダーとしてはシェア40%を誇る実力者だ。世界的なシェアでいえば、アップル、サムスン、ファーウェイといった巨人メーカーが君臨しているが、日本人に好まれる製品を作るシャープの実力は素直に認めたい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)