JR名古屋駅の新幹線ホームから見える、ビックカメラ名古屋駅西店。2003年11月にオープンして以来、中部地区における代表的な量販店として、その地位を確実なものとしてきた。そのビックカメラ名古屋駅西店が2009年11月、同店4階に、"Appleショップ"を開店した。

ビックカメラ名古屋駅西店

Appleショップとは、これまでビックカメラ有楽町店本館、札幌店、新宿西口店の3店舗に出店しているショップ・イン・ショップ形式のアップル専門店(他社量販店も展開しており、2010年1月現在計17店舗が存在)。アップルの全面的な協力を得て、Appleショップ専用の什器を使用するとともに専門スタッフを配置。専門性を高めながらも、初心者や女性でも入りやすい売り場作りを目指すものだ。そんなビックカメラ名古屋駅西店のAppleショップに、ふらりと寄ってみた。

売り場案内。Macだけ細かく機種名が書かれているのは同店がMacに力を入れている証左

1階入口のエスカレータ横にもAppleショップの告知

ビックカメラ名古屋駅西店は、JR名古屋駅太閤通口前にある。新幹線出口から最も近い出口であり、ロータリーを越え、横断歩道を渡ればすぐだ。また、雨の日は、地下街「エスカ」を利用すれば、駅からそのまま入ることもできる。立地条件は極めていい。

ビックカメラ名古屋駅西店では、オープン以来、アップル関連製品として、2階のオーディオ売り場にiPodの専用コーナーを、そして4階のPC売り場に、Mac売り場を配置している。いずれのコーナーも、2008年4月に拡張し、それに伴いアップル関連の売り上げが拡大しているという。

2階のiPodコーナーでは、約50平方mの売り場面積に数多くのiPodシリーズを展示。自由に試用できるようになっているほか、スピーカーやケースをはじめとする各種周辺機器、アクセサリーを幅広く展示しているのが特徴だ。

2階のオーディオ売り場のiPod専用コーナー

iPod用の周辺機器も充実している

多くの人に触ってもらうための展示方法に転換

4階のPCフロアにオープンしたのが、Appleショップだ。

ビックカメラ名古屋駅西店のAppleショップ

約160平方メートルの売り場面積に、MacやiPod、周辺機器、ソフトなどを展示。黒地をベースとした什器や、木目の展示台、黒いのカーペットを敷くなど、他の売り場とは一線を画す、Appleショップならではの店舗作りが目を引く。

Appleショップだけ黒いカーペットとしている

しかも、エスカレータを降りてすぐの場所。一等地ともいえる売り場を割いている。4階フロアの構成図を見ると、まさに真ん中ともいえる場所にAppleショップが置かれている。

エスカレータで4階にあがると、すぐ横にAppleショップがある

フロア構成図をみると、4階のPC売り場のちょうど中央部にAppleショップがある

ビックカメラ名古屋駅西店・富田大祐店長

「Macの販売実績は、これまでにも前年比2桁増で推移していた。Appleショップの展開によって、この勢いを維持し、売り上げ規模でも、Appleショップ展開で先行する有楽町店本館、新宿西口店を追随したい」と、ビックカメラ名古屋駅西店の富田大祐店長は意欲を見せる。

同店では、Appleショップとする前にも、同じスペースをMac売り場としていた。「従来のMac売り場に比べて、実際に触ってもらえる売り場作りを心がけた。なかでも、ビデオ、写真、音楽での体験を通じて、Macの良さを知ってもらいたい。女性層でも気軽に入れる売り場作りを目指した」という。

従来の売り場では、横長の売り場に対して、長方形の展示台を縦方向に設置したり、売り場入口に円形の展示台を設置していたが、Appleショップへのリニューアルに伴って、展示台を横方向に配置。また円形の展示台も撤去した。

縦長のフロアに対して横に長方形の展示台を設置することで視認性を高めた

「横長の売り場に対して、それに沿う形で横方向に展示台を移動させたことで、エスカレーターをあがってきた時点で、多くの製品を一目で見られるようになった。また、円形の展示台では触ることができる人数や機種が限定されることから、これもゆったりとした展示が可能な長方形の展示台に変えた。いずれも、多くの人に触ってもらうための展示方法への転換」と、富田店長は語る。「回遊してもらえる売り場作り」をコンセプトとしており、これが触ってもらう売り場作りの基本的な考え方となっている。

各種製品を展示。ゆったりとしたスペースを確保し、触れることを前提に展示している

プロフェッショナル向けの展示もAppleショップならでは

中部地区で随一の品揃えを誇る周辺機器展示

また、「とくに、周辺機器、ソフトの展示を強化した。従来も周辺機器は展示していたが、4階のMac売り場で本体を購入したのに、周辺機器は3階フロアで購入するというケースも出ていた。タブレットの展示を強化するなど、Mac用周辺機器の品揃えは1.5倍に拡大し、中部地区では随一の品揃えとした」という。

周辺機器、サプライなどの展示は従来の約1.5倍となった

タブレットの展示はAppleショップになって展示を強化した

サプライ製品の強化もAppleショップになってからのもの

ソフトウェアの展示も力が入っている

ガラス棚を利用した展示で高級感を演出

3階の周辺機器売り場に行かなくても購入できる環境を用意

中央部の黒い什器にはアップル純正製品が展示されている

Windowsからのスイッチを強く意識

もうひとつ特徴的なのは、Windowsからのスイッチを強く意識した展示としたことだ。

Appleショップ内で展示しているMacでは、BootcampによってWindowsの動作を実現できるようにしているほか、Appleショップに隣接する形でWindows PCの売り場が置かれており、比較しながら購入を検討できる仕組みとしている。「Windowsユーザーが、Macを購入するケースが増加している。Mac購入者にとって、Windows PCとの比較検討は重要な要素となっており、売り場構成においてもそのあたりを強く意識した」という。

Appleショップに隣接するWindows PCの売り場。比較検討しやすい

ここでもMacに触れながら、Mac上でのWindowsの操作環境を確認できる。

触れる展示という点での工夫は随所に凝らしているのは確かだ。だが、ひとつ要望をあげるとすれば、常設されているMacがインターネットに直接接続されていないのは残念だといえる。アップルストアでは、展示しているMacのすべてがネット接続されているだけに、触れることを前提とするAppleショップの展示機も、常時ネット接続が可能になるといいだろう。

富田店長は、「スタッフに声をかけてもらえれば、展示機のすべてがネット接続ができるようにはしている。それによって、ネットを利用した環境も確認できる。遠慮なく声をかけていただきたい」と語る。

いつでも相談できる専門カウンター

いつでも相談に応じられるよう、イスを常設している

Appleショップの中央には、専門カウンターを設置している。

かつてのMac売り場時代には、やや奥側に同様のカウンターがおかれていたが、Appleショップのリニューアルとともに、これを中央に配置した。これには大きな意味があると富田店長は語る。「Macを初めて購入する人も安心して購入ができるようにすること、そのためには展示してあるMacに近いところ、最も多くの人が出入りする場所の近くに相談用のカウンターを配置するのがいいと考えた。気軽にこのカンターを利用してもらい、安心してMacを購入してもらえるようにした」という。

専用カウンターの場所を利用して、MacやiPodの各種デモストレーション、ワークショップを実施するほか、予約なしでも1対1の相談に応じることができるようにしている。「専用カウンターは、多目的に活用していきたい。他の売り場ではできないような、落ち着いた形での相談にも活用したい」とする。

Appleショップ専用カウンターではミニセミナーやデモストレーションも実施

ASTOセールスプロフェッショナル取得の専門スタッフを増員

また、Appleショップの開設にあわせて、新たに2人の専門スタッフを常駐させるなど、接客強化にも余念がない。

アップルでは、アップル・セールス・トレーニング・オンライン(ASTO)と呼ばれる販売員の認定制度を実施しているが、その中でも最上位となるセールスプロフェッショナルの認定を取得した社員を常駐させ、専門的な対応から、初心者に向けた提案まで行えるようにした。これもAppleショップならではの提案のひとつだといえる。さらに、PC売り場を担当する11人のスタッフも、Macの販売をサポートできるようにしており、「今後は、スタッフ全員が認定取得ができるようにしたい」とスタッフのレベルを底上げする考えだ。

Macの専門スタッフを2人常駐。安心して質問できる

専門スタッフはアップルのロゴが入ったシャツを着ている

また、有楽町店本館のAppleショップで行っている修理受付については、名古屋駅西店では現時点では対応していないが、「時期は未定だが、なるべく早いタイミングで修理対応も行えるようにしたい」と、今後、サービス拡張を見込んでいる。

富田店長は、「とにかく楽しんでもらえること、触ってもらうことをAppleショップの目標とした。女性層や若い人たちなど、多くの人に来てもらいたい。中部エリアにおいては、最大の売り上げ、販売シェアを目指したい」と意欲を見せている。