アメリカで、Kyocera(日本の京セラです)の「Hydro Vibe」というスマートフォンを買ってみました。Virgin Mobileのプリペイドサービス用の端末で77ドルで買うことができました。今回は契約プランなどの話は別にこのスマートフォンを評価してみることにしましょう。

最初にお断りしておきますが、このスマートフォンは米国のSprint社(あのソフトバンクが買った事業者です)のCDMA2000とLTEのネットワークを利用する端末で、日本国内で使うことはできません。今回のレポートは米国で利用したときのものです。言語設定は英語とスペイン語のみですが、More Locale2などのロケール設定アプリを使うことで日本語に切り替えることができますが、一部のアプリや設定項目などは英語のままです。また、More Locale2に設定変更権限を与えるためにAndroid SDKを使ってPCからの操作が必要になります。

京セラは、米国でスマートフォンビジネスを展開しており、Virgin Mobileのほか、親会社のSprint、T-Mobile、VerizonやMVNO各社にスマートフォンや携帯電話を供給しています。京セラは、もともとPHSなど国内向けの携帯端末を製造していましたが、1999年にQualcomm社の端末部門を買収して米国での端末ビジネスを開始、また2008年には米国で事業展開していた三洋電機の携帯端末事業を買い取っています。このため、米国の携帯電話市場では日本メーカーとしてはかなり存在感があります。おそらく、国内に出荷している端末よりも、海外のほうが機種が多いはずです。

米国で販売されている京セラのスマートフォンや携帯電話には、すべて名前がついていますが、そのうち「Hydro」はスマートフォンのシリーズ名で、同様のネーミングの機種がいくつかあります。日本でも、海外仕様の防水耐衝撃仕様のTorqueはちょっと話題になったことがあります。

このHydroシリーズは、防水機能を持つシリーズで、Hydro Vibeは、IP57という等級の「防塵」「防水」機能があり短時間ならば水没にも耐える仕様のようです。Hydro Vibeは、最近の機種では珍しくバッテリが交換可能で、裏蓋がパカッと外れる構造なのですが、内側にパッキンがあり、バッテリまわりを防水にしているようです。

京セラのHydoro Vibe。16対9の液晶(qHD。540x960ドット)に額縁の左右が細めで上下も抑えめなので、全体として縦長の印象

最近の機種にしては珍しく裏蓋が開くタイプ。防水なので電池のまわりにパッキンがある。また、ワイヤレス充電のコイルとNFCアンテナはフタ側にある

簡単にスペックを説明しておきましょう。スペックは表01のようなものになります。また、事業者であるVirgin Mobileとメーカーの機種のページは、以下のようになります。

・Virgin Mobile
http://www.virginmobileusa.com/shop/cell-phones/kyocera-hydro-vibe-4G-LTE-phone/features/

・京セラ
http://www.kyoceramobile.com/hydro-vibe/#specs

■表1
機種名 京セラ
メーカー Hydro Vibe
基本スペック OSバージョン Android 4.4.2
CPU MSM8926(Snapdragon)
コア数 4
Clock 1.2ギガヘルツ
内部ストレージ 8ギガバイト
メインメモリ 1.5ギガバイト
画面 画面解像度 960x540(qHD)
画面サイズ 4.5インチ
カメラ フロントカメラ 2メガピクセル
リアカメラ 8メガピクセル
通信 無線LAN b/g/n
Bluetooth 4.0LE
4G LTE
3G CDMA2000(1x-RTT/EVDO Rev.A)
2G (CDMA)
機能 ワイヤレス充電 PMA
GPS
NFC
メモリカードスロット microSD
バッテリ スタンバイ時間 193時間
通話時間 14時間
物理特性 サイズ 127.4×63.5×10.9mm
重量 139グラム
その他 - IP57防塵防水

今年5月に発売された機種なので、クワッドコアのSnapdragon 400(MSM8926)を採用、クロック周波数は1.4ギガヘルツ、メモリは1.5ギガバイトを搭載しています。マイクロSDカードスロットを持ちますが、内蔵ストレージとして8ギガバイトを搭載します。NFC搭載など、押さえるところはちゃんと押さえた感じのスマートフォンです。

液晶は、HD解像度の1/4となるqHD(540×960ドット)で左右の額縁部分が狭く、全体的に縦長の感じになります。最近のスマートフォンとしては、比較的コンパクトなほうになるでしょう。

電源ボタンが本体上部、ボリュームキーは本体左側面上方、右側面にはカメラキーがあります。また、ナビゲーションボタンは、画面表示ではなく、タッチキーとして液晶の下に配置されています。最近では、スマートフォンで写真を撮るというのが当たり前になってきて、筆者もメモやSNS投稿などはスマートフォンを使うことがほとんどです。こうしたとき、カメラの起動とシャッターに使える専用キーがあるのはやはり便利です。リアカメラは8メガピクセルでオートフォーカス、LEDフラッシュ付きで、一般的なものです。ただ、ISO感度が最大800となっていて、室内撮影ではシャッタースピードが遅くなってしまうことが多く、ブレた写真になりやすい(というかカメラのように構えることができないのでほんとんどぶれる)のが欠点といえば欠点でしょう。

また、ワイヤレス充電機能はあるのですが、PMA(Power Mat Allaiance)という米国を中心に販売されている機器の仕様というところがちょっと「イケ」てません。

Hydro Vibeは、独自アプリを搭載するだけでなく、ホーム画面(ラウンチャー)やロック画面もオリジナルのものになっています。ちょっと面白いのは、「ICE」(In Case of Emergency)というアプリで、自分の緊急連絡先を5つまで登録しておくことができます。ただし、実際に起動するのは、アドレス帳で、ここに「In Case of Emergency」という項目があって、ここが開きます。これは何に使うのかというと、何かあったときに、このスマートフォンの持ち主をを助けた人が簡単に連絡できるようにするためです。パターンやパスワード、PINなどのロックを掛けた場合には、画面右下にこのICEのアイコンが表示されて、Hydroがロックされていても連絡できるようになっています。

ロック画面を設定すると画面右下に「ICE」アイコンが表示され、ICEに設定した連絡先にすぐ電話できるようになっている

ICEアプリアイコンを開くと、実際には、連絡先のICEという項目が開く。ここには5つまでの連絡先を登録することができる

調べてみると、緊急時の連絡先として電話帳にICEという単語を付けて携帯電話に登録しておけば、たとえば、特別な医療が必要な人が意識を失った場合などに救急現場で連絡することが可能になるとしてイギリスで2005年に提唱されたもののようです。ICEアプリやアドレス帳のICEの項目は、それを実現するためのもので、システム側がこれをロック中にもアクセスできるようにすることで、その役目を果たしてくれるようにしているようです。日本だとなじみがないようですが、普及している国では役にたってくれそうです。もっとも、Android自体が対応すべき機能という気もしますが。

・ICEに関するWikipediaのページ(日本語はない)
http://en.wikipedia.org/wiki/In_case_of_emergency

ホーム画面は、アイコンが大きくなり、操作がしやすくなる「Easy Mode」とアンドロイドの標準ホーム画面に似た「Standard Mode」が設定可能です。ただし、Standard Modeも、アプリ画面は、独自になっていて、アイコンの並べ替えなどが可能になっています。

アンドロイドの設定では、設定ページやアイコンのタイトルなどに使う文字を「設定」 ⇒ 「ディスプレイ」でサイズ変更することができますが、Hydro Vibeには、通常設定の「ラージ」よりも大きな「Magni Font」という設定が可能です。専用のアプリを使うと、標準設定以外のフォントの拡大もしてくれます。

標準のホーム画面。アンドロイド標準のラウンチャーアプリによく似ているが、背景部分の長押しで、ショートカットやウィジェットの配置モードへ移行する

通常状態のアプリ画面。上部のタブがカスタマイズされているほか、アイコンの並びを変更できる。また、ユーザーがあとからインストールしたアプリは文字が青色になっている

ホーム画面をEasy Modeに設定したところ。標準で配置されているアイコンが大きく表示される

Easy Modeでは、アプリ画面は縦に並ぶリスト形式になる

特大文字をシステムの標準フォントとして指定「MagniFont」アプリ。「設定」 ⇒ 「ディスプレイ」の文字フォントサイズが変更されるだけでなく、一部の標準アプリも特大フォントを使うようになる

MagniFontを有効にしたときのアプリ画面。アイコンのタイトル文字が大きなものに変更されてアイコン間隔が開く

また、この機種は、テザリング機能があるのですが、Virgin Mobileでは、テザリングは別料金になっていて、1日あたり5ドル出さないとテザリングができません。もともとテザリングの嫌いな会社で、以前はテザリング機能を抜いていた端末を販売していました。使えるようになっただけマシではありますが、1日5ドル(しかも転送量の制限あり)は、ちょっと高い感じがあります。月35ドルで通話300分、データ通信やSMS使い放題(ただし、一定量以上は速度制限あり)というプランを実現するにはこれぐらいシビアにならないとダメなのかもしれません。

Easy Modeといい、Magni Fontといい、なにか日本の「簡単スマホ」を想像させるようなことがありますが、特に、年配の方を対象にした機種というわけでもありません。

大きい画面のスマートフォンを否定するつもりはありませんが、筆者個人的には、4インチ台のコンパクトなスマートフォンのほうが日常的には使いやすいと思っています。シャツの胸のポケットに入れても、さほど重さを感じないし、米国でレンタカーを運転する際にナビゲーションで利用しましたが、特に小さいと感じることもありませんでした。もっとも、人によって、使い方はさまざま。ただ、大きなスマートフォンが売れると、どの機種も大きくなっていくというのは、なんとかしてほしいところです。

本連載は、2014年10月19日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。