アンドロイドでは、一部の機種に外部ディスプレイを接続する機能を持つものがあります。一般的なディスプレイは、HDMIやRGB入力などの画像入力コネクタを持っていますが、最近では、HDMI入力端子を装備するものが増えてきました。今回は、こうしたディスプレイの接続端子をちょっと整理してみます。

映像出力端子には大きく3種類

アンドロイド機で採用されている外部映像出力端子には、大きく、以下の3種類あります。

  • HDMI
  • MHL
  • MyDP(SlimPort)

このうち、HDMIはディスプレイが持つ一般的な映像端子で、コネクタのサイズがいくつか用意されていて、おもにアンドロイドではスマートフォンなどの筐体の小さなものがあるために「マイクロHDMIコネクタ」を装備したものが一般的です。ほかのサイズのHDMI端子をつけてはいけないというルールがあるわけではないのですが、本体が小さいために、マイクロHDMIコネクタの採用が多いというだけです。ドッキングステーションなどをオプションで持つ場合、ドック側にフルサイズのHDMI端子を装備していることもあります。

マイクロHDMIコネクタ

のこりの2つ、MHLとMyDP/SlimPortは、マイクロUSBコネクタ兼用するため、専用のコネクタを別に付ける必要がなく、最近増えてきている方式です。アンドロイドの場合、PC接続や充電用に最低でも1つは、マイクロUSB端子を搭載しているため、コネクタを兼用できるこれらの方式だと、コネクタが不要になるだけでなく、きょう体に複数のコネクタ用の穴を開ける必要がないため、金型などが単純になり、コストが下がる、あるいは開口部が少ないため、強度が低くならないといったメリットがあります。

MHLは、「Mobile High definition Link」の略で、HDMIに似た信号をマイクロUSB端子を使って出力する方式です。開発したのは、米国Silicon Image社で、同社は、HDMIの規格化を行った会社の1つです。HDMIは、ソニーや東芝、パナソニック、日立製作所、フィリップス、トムソンといった家電メーカーが中心になって策定した映像、音声のデジタル信号の規格で、最近では、多くのテレビやディスプレイがこれを備えています。

MHLは、マイクロUSB端子に接続するものの、本体内部の回路がUSBなのかMHLなのかを検出して回路を切り替え、MHLに接続されたときには、映像や音声の信号を出力するようになっています。HDMIコネクタを持つアダプタが市販されていますが、最近では、一部のテレビにMHLを内蔵するものもの登場しています。

現在、多くのアンドロイド機では、マイクロUSBコネクタを充電端子して利用しているため、MHLでは、規格上、ディスプレイやアダプタ側から本体側へ電力を供給する仕組みがあります。

DisplayPortベースのMyDP/SlimPort

これに対して、MyDPは、一部のパソコンに装備されているDisplayPortのモバイル版であり、「Mobility DisplayPort」の略です。SlimPortは、MyDP用の半導体を製造する米国Analogix SemiconductorがMyDPにつけたブランドです。DisplayPortやMyDPは、米国のモニタディスプレイの業界団体であるVESAの規格です。ですが、Nexus 7(2013)などに搭載されたときにSlimPortととして紹介されたことから、規格の名称であるMyDPよりもSlimPortのほうが通りがいいようです。

SlimPort/MyDPは、DisplayPortのモバイル版であり、MHLと同じくマイクロUSB端子を使うものの、MHLとMyDPの信号はまったくの別物で、基本的には、DisplayPortに似た信号を使います。アダプタでは、DisplayPort同様にHDMIやRGBコネクタなどに変換が可能です。ただし、いまのところSlimPort/MyDPを内蔵した「テレビ」は発売されていないようです。

というのも、HDMIは、家電メーカーが中心になって策定しましたが、DisplayPortは、ディスプレイモニタのメーカーやPCメーカーなどが中心のVESAで策定されたため、参加している企業が違うのです。どちらかというとDisplayPortは、PC業界の仕様といったほうがいいでしょう。

どちらも同じマイクロUSBコネクタを使い、接続先を区別して信号を切り替えるようになっていますが、MHLとSlimPort/MyDPはお互いを認識しないため、アダプタは、どちらかの形式のものを使うしかありません。いまのところスタートが早かったMHLのほうが普及しており、SlimPort/MyDPを装備しているデバイスはそれほど多くありません。そのためか、アダプタの価格や採用するテレビなどといった点で差ができてしまっています。

無線接続もあり、まだ勝者は決まらない

ただ、スマートフォンやタブレットをテレビなどの映像表示デバイスに接続する方法は、この3つしかないというわけではなく、たとえば、Miracastやワイヤレスディスプレイ(WiDi)といった無線接続方法があり、モバイルデバイスでは、どれが主流になるのかはこれから決まるといった感じです。ただし、すでにマイクロHDMIコネクタを採用した機種は減ってきており、選択肢としては、無線になるか、有線でMHLかSlimPort/MyDPのどちらかという感じです。

無線を使う表示方式は、インテル提唱のWiDiとMiracastがありましたが、規格としては統一され、1つのアダプタで両方に対応が可能になっています。また、Windowsも8.1でMiracastへの対応が行われています。無線接続は、スマートフォンやタブレット側にコネクタが不要となる反面、テレビ側がMiracastに対応するか、アダプタを接続することになり、有線の場合と構成はほとんど変わらず、ユーザーの負担としては、有線も無線も同じ程度と思われます。

このあたり、結局、どの仕様を採用するテレビが増えるのか? という点で結着がつきそうな感じがあります。

コンピュータ用のディスプレイは、MHLやSlimPortを備える可能性がありますが、基本的にはPCに接続されたままとなり、ときどきスマートフォンやタブレットを接続するという利用形態になるため、MHLやSlimPort/MyDPが内蔵されたとしても、テレビほどの影響力を持たないと考えられます。また、コンピュータディスプレイは、テレビよりも先に高解像度化すると予想されており、無線接続では性能を生かし切れない可能性があります。

そう考えると、これから登場するテレビがどの仕様を採用するのかがスマートフォンやタブレットの映像出力方式を決めてしまうことになるでしょう。すでにMHL搭載テレビもあるようですが、スマートテレビなどで無線LAN内蔵が普及する可能性も否定できないため、Miracastへの対応も可能性があるでしょう。

本稿は、2014年3月14日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。