私シバタは愛煙家である。だが世界は禁煙ブームの真っ最中であり、愛煙家にはキビしい現状だ。愛する会社も多分に漏れず、数年前から全面的禁煙。会社が入ってるビルの1Fにある喫煙ルームに赴き、紫煙をくゆらす日々を続けている。もちろん嫌煙家の意見もわかるし、タバコが苦手な人の前で吸いまくるほど、デリカシーがないわけではない。だが、あの喫煙ルームは本当に勘弁して欲しい。

ガラスに囲われた喫煙ルームは、まるで動物園のオリのよう。自分がビル内の通行者に観察されているのでは、という錯覚を覚えてしまう。しかし、愛煙家ならわかってもらえるだろう。どんな状況でも何でもいい。"吸いたいときは、とにかく吸いたい"のである。そんなアンビバレンスな感情を抱きつつ、1Fへ足を向ける日々だ。

一方、自宅では俗にいう"ホタル族"というヤツに甘んじている。我が家だからといって家人に副流煙を吸わせるほど、愛煙家の我を張るつもりはない。ベランダに赴き、おもむろにポケットから取り出したタバコに口にくわえ火を付ける。そして深く吸い込み、肺にたまった煙を吐き出す。大気に溶けていく紫煙を見ると、当初は何とも面倒な作業だと、忸怩たる思いを持っていたが、最近では密室で吸うより何倍も旨く感じる。そこで思い立ったのだ。ベランダでPCを楽しめないだろうか、と。

「Aspire one D250」は約1.07キログラムとかなり軽量。持ち運びは言うまでもなく、バッテリ駆動も約3.5時間と、モバイルマシンとしては十分合格ラインをクリアしている。だが、問題はネットワークインフラだ。シバタの家は縦長になっており、自宅で仕事をするときや、趣味の動画編集をするコンピュータとベランダは端と端にあるため、仕事部屋に設置してある無線LANアクセスポイント(以下、AP)の電波はベランダまで届かない。APの設置場所を、あれこれと変更してみたが、やはり届かないものは届かないのである。

そもそもシバタ家のインターネット回線は、家の前にある電柱から光ファイバーをエアコン用ダクト経由で、室内に引き込んでいる。そのためメインのブロードバンドルータはリビングに設置し、仕事部屋までLANケーブルを引き回しているのだが、このメインルータに無線LAN APを増設すれば、どうにかなるだろうと設置場所へ向かうと、ルータには無線LANのアンテナが……。メインのブロードバンドルータには無線LAN機能が備わっていたのだが、不要なので無効にしていたのを、すっかり忘れていた。ご都合主義の漫画でもこうはいかないだろう、というぐらい間抜けな話だが、すべて真実だから致し方ない。

文書だけではわかりにくいので、シバタ家の大まかななレイアウトを示す。仕事部屋にあるAP1ではベランダまで届かず、リビングにある無線LAN機能を有効にした

早速ブロードバンドルータの設定画面を開き、無線LAN機能を有効にする。使用チャンネルも既存の無線LAN APと重ならないように変更し、ルータを再起動すれば準備完了。あとは「Aspire one D250」で無線LAN APへの接続テストと優先接続設定を実行すれば、家庭内ではどこでもインターネットに接続できるようになったはずだ。一服しながら早速Webブラウジングを試してみるが、拍子抜けするほど問題も発生せず一段落。

ブロードバンドルータの無線LANを有効にするだけで、APの増設が完了。言い訳するようだが、使っていない機能だからこそ存在を忘れてしまうのだ

「Aspire one D250」を起動すると早速、無線LAN APが登場した。ダブルクリックで新しいAPに接続し、パスワードを入力すれば接続完了

優先ネットワークの設定も確認。これで仕事部屋では古い無線LAN APを使用し、それ以外の場所では自動的に新しい無線LAN APに接続できるようになった

シバタ撮影のためモデルはいないが、ここがベランダの喫煙スペース。これで紫煙を楽しみながらWeb閲覧も可能に。ただし天気によってはディスプレイがかなり見にくくなってしまう

無線LAN APが近いだけあって、無線LANの電波状態も良い。アンテナもフル状態だ

新しいAPのおかげで、活躍の場が広がった「Aspire one D250」。次のチャレンジはキッチンである。雑誌編集者の頃は校了直前以外は、それなりの時間に帰宅できたが、Web媒体の編集者になってから、毎日が〆切日。もちろん早い時間に帰宅するのは夢のまた夢。その罪滅ぼしもあって、週末はシバタが晩飯の準備をしているのだが、何だかんだで2時間ほどは立ちっぱなし。一言でいえば退屈なのである。そこでシバタは思った。料理中のBGMが欲しい、と。

前回設置した「Aspire easyStore H340」のWindows Home Server(以下、WHS)と、「Aspire one D250」がLANにぶら下がっている状態ならば、特に難しい設定も必要はない。あらかじめ共有フォルダにアクセスするアカウントを作成し、WHSの共有フォルダに音楽ファイルを設置する。

まずは共有フォルダにアクセスするためのユーザー作成。ついでにリモートアクセスも有効しておこう

リモートアクセスを有効にしたので、パスワードは複雑かつ7文字以上が必要だという。WHSの設定で変更できるが、ちょっと面倒だ

「Aspire easyStore H340」を使うのは今のところシバタだけなので、共有フォルダに対するアクセス権はすべてフルアクセスを選択

これでユーザーアカウントの作成が完了した。早速次の操作に取りかかる

あとはWindows Media Player 11(以下、WMP11)を起動し、ライブラリの監視先として、WHSの音楽共有フォルダを登録すれば、WMP11によるリモート再生が実現。さあ軽快な音楽をバックに、フライパンを振りまくれる環境の完成だ。ただ実際には、「Aspire one D250」内蔵ステレオスピーカーの出力は弱く、据え置き型の一般的なスピーカーと比べると見劣りしてしまう。ボリュームを上げすぎると音が割れるし、小さくすると換気扇の轟音に負けてしまうのだ。そのため音楽を聴くというも、喫茶店のBGM程度という感じだが、調理しながら音楽を聴きけるのは大きな前進。シバタ的には大満足である。

WMP11のライブラリ監視機能を使い、WHSの音楽フォルダをライブラリに追加する

これでWMP11のライブラリに音楽ファイルが追加された。どこでも音楽再生が可能だ

キッチンでの使用はフライパンを振るときの油はねが怖いので、電子レンジの上に設置。電子レンジ使用中は無線LANと干渉してしまうが、その間は諦めるしかない

後日談ではないが、ある日、同じように「Aspire one D250」の電源を入れ、WMP11を起動しながら料理をはじめると、共有フォルダへアクセス失敗したというダイアログが表示され、あれだけ欲したBGM環境を満喫できなくなってしまったのだ。

突如WHSの共有フォルダにアクセスできなるなる現象が発生! メッセージを読めばアクセス拒否されたのはわかるのだが……

WHSに関する情報は残念ながら国内では少ないため、海外を中心にWebを見て回ると、似たような現象が記載されていた。どうやら、WHS上のアカウントとWindows OS側のアカウントのパスワードが異なる状態で、WMP11による共有フォルダへのアクセスを実行すると、アカウントがロックされるという。なるほどアカウントが無効になっているのかっ!

リモートデスクトップで「Aspire easyStore H340」のWHSにアクセスすると、案の定<アカウントのロックアウト>にチェックが入っている。チェックを外しても同じ現象が発生してはたまらないと思い、ローカルセキュリティの設定を起動し、アカウントロックアウトのポリシーを確認。<アカウントのロックアウトのしきい値>を0回(つまりロックアウトを無効化)に変更し、どうにかこうにか問題を回避できるようになった

別のコンピュータからWHSマシンでリモートデスクトップ接続を実行。ちなみにログオンアカウントはAdministrator、パスワードはWHSのパスワードを使用する。アカウントを確認すると、案の定ロックされていた

「secpol.msc」を実行してWHSのローカルセキュリティ設定を確認。アカウントロックアウトは50回となっている。WHSのコンソールからロック解除できないのは、ユーザーインターフェース的問題ではないだろうか

<アカウントロックアウトのしきい値>を0回に変更して、ロックアウトを解除することにした。これでアクセス拒否からは解放されるはずだ

ちなみに「Aspire easyStore H340」には、WHS標準のメディア共有機能(Windows Media Connect)だけでなく、iTunesサーバとなるFirefly Media Serverも導入されている。WMP11を使用せずとも、iTunesで音楽ファイルを管理できる。普段はWMP11がお気に入りだが、別の選択肢もあるのは気分的にも心強い。

Windows Media Connectによるメディア共有機能。原因は不明だがWindows Vista上のWMP11では表示されるサーバが、Windows XP上のWMP11では表示されなかった。きっと時間をかければ解決できそうだが、とりあえず再生できているので見送ることに

iTunesのサーバ機能も備えているため、iTunesをメインのプレーヤーにしている場合は便利かもしれないが、シバタは同アプリを使っていないので何ともいない

「Aspire easyStore H340」のWHSに関する設定と、「Aspire one D250」の連動として、もう少し試したいこともあったのだが、これ以上プライベートタイムを割くのは流石にキビしい。ひとまず今回はこの辺で。

(続く)