Intelは開発コードネーム「Panther Lake」のノートPC向けSoC「Core Ultraシリーズ3」を投入した。Intel 18Aで製造、Pコア、Eコア、NPUとも強化と見どころ満載だが、恐るべき進化を遂げたのは内蔵GPUだ。マルチフレーム生成に対応することで、AAA級タイトルも快適に遊べるようになった。ここでは、その性能に迫りたい。

  • Core Ultra X9 388Hを搭載するASUSの「Zenbook DUO UX8407AA」。価格は499,800円

    Core Ultra X9 388Hを搭載するASUSの「Zenbook DUO UX8407AA」。価格は499,800円

AAA級ゲームも遊べる? Panther Lakeの実力は期待通りか

まずは、「Core Ultraシリーズ3」について触れておこう。Intelの最新製造プロセスであるIntel 18Aで製造された新世代ノートPC向けSoCだ。新設計のPコア(Cougar Cove)とEコア(Darkmont)を採用。最上位のCore Ultra X9 388Hでは、16コア16スレッド(Pコア4、Eコア8、LP Eコア4)となり、すべてのラインナップが8コア8スレッドに統一されていた前世代のLunar Lakeから大幅に拡張。マルチスレッド性能を向上させている。対応メモリもLPDDR5X-9600と高速化、NPUも第5世代となりAI処理性能がさらにアップした。

Core Ultraシリーズの代表モデルのスペック
CPU Core Ultra X9 388H Core Ultra 7 258V Core Ultra 7 155H
開発コードネーム Panther Lake Lunar Lake Meteor Lake
製造プロセス Intel 18A TSMC N3B Intel 4
コア数(P/E/LP E) 4/8/4 4/4/- 6/8/2
スレッド数 16 8 22
Pコアクロック(定格/最大) 2.1/5.1GHz 2.2/4.8GHz 1.4/4.8GHz
Eコアクロック(定格/最大) 1.6/3.8GHz 2.2/3.7GHz 900MHz/3.8GHz
LP Eコアクロック(定格/最大) 1.6/3.7GHz 700MHz/2.5GHz
3次キャッシュ 18MB 12MB 24MB
対応メモリ LPDDR5X-9600 LPDDR5X-8533(CPUに搭載) DDR5-5600/LPDDR5X-7467
NPU 第5世代(50TOPS) 第4世代(47TOPS) 第3世代(11TOPS)
TDP 25W 17W 28W
内蔵GPU Arc B390(12Xe) Arc 140V(8Xe) Arc(8Xe)
  • Core Ultra X9 388HのCPU-Z。Pコア4、Eコア8、LP Eコア4で合計16コア16スレッドなのが分かる

    Core Ultra X9 388HのCPU-Z。Pコア4、Eコア8、LP Eコア4で合計16コア16スレッドなのが分かる

注目したいのは内蔵されているGPUだ。Core Ultra X9 388Hは、最新のXe3アーキテクチャー(Battlemage世代)の「Intel Arc B390」を搭載。Xeコアを12基、レイトレーシングユニットを12備えている。前世代(Lunar Lake)のCore Ultra 7 258Vの内蔵GPU「Arc 140V」がXeコア8基、レイトレーシングユニット8基だったので、大幅な強化だ。実際に性能は最大2倍としている。

  • Core Ultra X9 388HはXeコア12基のIntel Arc B390を内蔵

    Core Ultra X9 388HはXeコア12基のIntel Arc B390を内蔵

なお、Core Ultraシリーズ3ではモデルによって内蔵GPUは異なる。Xeコアが10基の「Intel Arc B370」、Xeコアが4基の「Intel Graphics」も存在。モバイルノートでもなるべく高いゲーミング性能がほしいという場合は、内蔵GPUの種類はチェックしておきたい。

Core Ultraシリーズの内蔵GPU
シリーズ Core Ultraシリーズ3 Core Ultra シリーズ2(200V)
内蔵GPU名 Intel Arc B390 Intel Arc B370 Intel Graphics Intel Arc 140V
アーキテクチャー(設計) Xe3(12Xe) Xe3(12Xe) Xe3(4Xe) Xe2
Xeコア 12コア 10コア 4コア 8コア

また、Core Ultraシリーズ3の内蔵GPUでは、Intelの描画負荷軽減技術「XeSS」を第3世代の「XeSS 3」に進化。AMDのFSRやNVIDIAのDLSSに相当する技術だが、XeSS 3ではNVIDIAのDLSS 4と同じくAIによって1フレームから最大3フレームを生成するマルチフレーム生成に対応。XeSS 2のシングルフレーム生成を強化した形だ。

なお、XeSS 3によるマルチフレーム生成はXeSS 2のフレーム生成に対応しているゲームなら利用できる。ゲーム内に設定が実装されているわけではなく、Intel Graphics Softwareの「XeSSフレーム生成オーバーライド」によって、シングルフレーム生成(2倍)を3倍または4倍のマルチフレーム生成に切り換える仕組みだ。XeSS 2に対応するゲームならすぐに試せるのが強みと言える。

  • XeSS 2対応ゲームなら、Intel Graphics SoftwareのXeSSフレーム生成オーバーライドによってマルチフレーム生成に切り換えられる

    XeSS 2対応ゲームなら、Intel Graphics SoftwareのXeSSフレーム生成オーバーライドによってマルチフレーム生成に切り換えられる

2画面ノートPCのASUS「Zenbook DUO UX8407AA」でCore Ultra X9 388Hの実力チェック

ここからは、Core Ultra X9 388Hを搭載するASUS「Zenbook DUO UX8407AA」で実際の性能をテストしていこう。14型で2,880×1,800ドットのOLEDディスプレイを2基搭載するノートPCだ。メモリはLPDDR5X-9600が32GB、ストレージはGen 4接続のNVMe SSDが1TB。本体のサイズは幅310.1mm×奥行き208.6mm×高さ19.6mmで重量は約1.65kg、バッテリー駆動時間は最長で19時間以上だ。リフレッシュレートは144Hzと高く、滑らかな描画でゲームを楽しむこともできる。

  • 14型で2,880×1,800ドットのOLEDディスプレイを2枚備えているユニークな作り

    14型で2,880×1,800ドットのOLEDディスプレイを2枚備えているユニークな作り

  • 本のように開いて縦2画面での運用も可能だ

    本のように開いて縦2画面での運用も可能だ

  • 底面にキックスタンドがあり本体を立たせることができる

    底面にキックスタンドがあり本体を立たせることができる

  • キーボードはBluetooth接続。下画面の上に乗せればマグネットで固定されるのでノートPCのように使える

    キーボードはBluetooth接続。下画面の上に乗せればマグネットで固定されるのでノートPCのように使える

  • ノートPC型にすればシンプルでスマートなデザイン。なおキーボードを装着している場合、下画面は自動的にオフになる

    ノートPC型にすればシンプルでスマートなデザイン。なおキーボードを装着している場合、下画面は自動的にオフになる

  • 右側面はThunderbolt 4、USB 3.2 Gen 2(Type-A)

    右側面はThunderbolt 4、USB 3.2 Gen 2(Type-A)

  • 左側面にHDMI出力、Thunderbolt 4、ヘッドセット端子

    左側面にHDMI出力、Thunderbolt 4、ヘッドセット端子

まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、PCの基本的な性能を測定する「PCMark 10」、定番3Dベンチマーク「3DMark」を実行しよう。

  • Cinebench 2024の結果

    Cinebench 2024の結果

  • PCMark 10 Standardの結果

    PCMark 10 Standardの結果

  • 3DMark Fire Strikeの結果

    3DMark Fire Strikeの結果

  • 3DMark Steel Nomad Lightの結果

    3DMark Steel Nomad Lightの結果

Cinebench 2024は16コア16スレッドだけあってMulti Coreのスコアは1,030ptsとノートPCとしては高い。前世代のCore Ultra 7 258VはMulti Coreのスコアが588pts前後なので1.75倍もアップしている。PCMark 10のスコアも非常に優秀だ。オフィス系処理のProductivityがとくに好スコアで、CPU性能の高さが見える。3DMarkの結果も内蔵GPUとして非常に高いスコアだ。

実ゲームに移ろう。用意したゲームは8本。Apex Legends、ELDEN RING、ELDEN RING NIGHTREIGN、ストリートファイター6は、XeSS非対応でフレーム生成を使えないタイトルの代表としてピックアップ。マーベル・ライバルズ、Battlefield 6、サイバーパンク2077、アサシンクリードシャドウズはXeSS 2対応でIntel Graphics SoftwareのXeSSフレーム生成オーバーライドによってXeSS 3のマルチフレーム生成に切り換えられるタイトルとして選択した。この4本についてはXeSS 2のフレーム生成2倍(FG2x)とXeSS 3のフレーム生成4倍(FG4x)の2パターンで計測した。

画質はすべて中画質程度に設定し、解像度はフルHDとした。測定条件は以下の通りだ。

  • Apex Legends:中画質設定で、射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ELDEN RING:画質“中”で、リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ELDEN RING NIGHTREIGN:画質“中”で、円卓の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ストリートファイター6:画質“NORMALT”で、CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • マーベル・ライバルズ:画質“中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • Battlefield 6:画質“中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ローカルでホストを作成して一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • サイバーパンク2077:画質“レイトレーシング:中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • アサシンクリードシャドウズ:画質“中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ゲームタイトル8本で性能ベンチマーク

    ゲームタイトル8本で性能ベンチマーク

モバイルノートPCでの利用が主流になるCore Ultraシリーズ3において、このゲーミング性能は驚異的と言ってよいだろう。前世代のCore Ultra 7 258Vでは、低画質設定ならフルHDで平均60fpsに何とか到達できるという性能だった。それでも内蔵GPUとしては高い性能だが、それをはるかに上回る。中画質というかなり見栄えする画質設定で多くのゲームで高いフレームレートを出しているのだ。

Apex Legendsでは144Hzのリフレッシュレートをかなり活かせる平均130.9fpsに到達。ELDEN RING、ELDEN RING NIGHTREIGN、ストリートファイター6は最大60fpsのゲーム。エルデンリングは描画負荷が高く平均49.2fpsだが、そのほか2本はほぼ平均60fpsに届いている。

XeSSに対応したタイトルは、XeSS 2のフレーム生成2倍(FG2x)でもほとんどで快適に遊べるだけのフレームレートを出しているが、XeSS 3のフレーム生成4倍(FG4x)にするとさらに1.6倍から2.6倍のフレームレート向上を確認。高リフレッシュレートのディスプレイに相まって滑らかな描画で楽しめる。しかも、サイバーパンク2077はレイトレーシングを有効にした上での中画質設定とかなり美しいグラフィック状況で平均126.1fpsが出ている。

続いて、Core Ultraシリーズ3のIntel Graphics Softwareには、バッテリー駆動時のゲームパフォーマンスを調整する「エンデュランス・ゲーミング」という機能が用意されているのでそれを試してみよう。ここでは「パフォーマンス」プリセットを選択した。サイバーパンク2077とアサシンクリードシャドウズでAC駆動時とバッテリー駆動時のフレームレートを比較する。測定条件は上記と同じだ。

  • Intel Graphics Softwareにはバッテリー駆動時のパフォーマンスをチューニングする「エンデュランス・ゲーミング」がある。「パフォーマンス」プリセット時でのベンチを行った

    Intel Graphics Softwareにはバッテリー駆動時のパフォーマンスをチューニングする「エンデュランス・ゲーミング」がある。「パフォーマンス」プリセット時でのベンチを行った

  • ACとバッテリー駆動時のフレームレート

    ACとバッテリー駆動時のフレームレート

どちらのゲームもバッテリー駆動時でほんのわずかにフレームレートが下がっただけだった。AC接続時と変わらない快適度でプレイできると言ってよいだろう。Core Ultraシリーズ3を採用するポータブルゲーミングPCも登場するのではないだろうか。

AI性能はどうだろうか。さまざまな推論エンジンを実行してAI性能を測定するUL Procyon AI Computer Vison BenchmarkをCPU、GPU、NPUのそれぞれで試した。

  • UL Procyon AI Computer Vison Benchmark

    UL Procyon AI Computer Vison Benchmark

前世代のCore Ultra 7 258VではNPUがトップのスコアを獲得していたが、Core Ultra X9 388HではGPUがトップになった。まだまだローカルAIはGPUでの処理がメインなので、AIの活用を考えた場合でもGPU性能強化はうれしいポイントと言えそうだ。

ちなみに小ネタではあるが、Core Ultra X9 388Hではデスクトップ版Core Ultra 200S Plusシリーズ向けのアプリ最適化ツール「Intel Binary Optimization Tool」が有効にできた。筆者が確認する限り、対応アプリとして表示されたのは有効にするとテスト結果に警告が出るGeekBenchだけ。この先、対応するゲームが増えるかは不明だが、ちょっと期待してしまうところだ。

  • Core Ultra 200S Plusシリーズ専用であるはずのIntel Binary Optimization Toolが有効化できた。何かの間違いか、それとも今後タイトルが増えるかは原稿執筆時点では不明

    Core Ultra 200S Plusシリーズ専用であるはずのIntel Binary Optimization Toolが有効化できた。何かの間違いか、それとも今後タイトルが増えるかは原稿執筆時点では不明

普通にモバイルノートでもゲームが楽しめる時代へ

Core Ultraシリーズ3は、これまでの高い電力効率設計を引き継ぎながらも製造プロセスの微細化、アーキテクチャーの進化などでCPU、GPU、NPU性能のすべてを底上げ。中でもGPUは、多くのゲームを中画質設定で普通に楽しめる性能を持つまでになった。これまで内蔵GPUは高めの性能があったとしても“軽めのゲームなら息抜きに遊べる程度”という評価に落ち着くことが多かっただけに、これはあまりにも大きな進歩だ。モバイルノートPCの汎用性をさらに高めるSoCの登場を素直に喜びたい。