Metaは3月10日に、メディアや教育関係者を集めて「10代利用者の安全なSNS体験を考えるラウンドテーブル」を開催しました。同社では2025年1月から10代のInstagram利用者向けに、一部の機能を制限する「ティーンアカウント」を提供しています。国内外からゲストを招いて展開されたパネルディスカッションでは、「子供の安全なSNS利用のためにできること」について、様々な意見が交わされました。
パネルディスカッションに登壇したのは、オーストラリアで青少年の安全なネット利用やいじめ問題に取り組む「PROJECT ROCKIT」CEOのルーシー・トーマス氏と、千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏。Meta日本法人 公共政策本部 ポリシープログラム担当の栗原さあや氏がモデレーターを務めました。
子供の権利を尊重し、当事者の声を聞いていくことが大切
最初に問いかけられたのは、オーストラリアで施行された16歳未満のSNS利用禁止法の現地での受け止めについて。トーマス氏は「SNSの使い方も人それぞれだし、保護者の見解も様々。『子供の心理的な安全面を考える上でよい』という意見と『少しやりすぎだ』という意見に二極化しており、当事者であるティーンエイジャーの多くは複雑な感情を持っている」と話しました。「法律を作った時に自分たちの意見を聞いてくれたのか」という不満や、SNSを通じた繋がりや情報収集の場が失われたという声があがっているといいます。
日本でも一部で同様の法整備を求める声もありますが、藤川教授は日本のこれまでの取り組みを踏まえつつ、子供の権利を尊重し、当事者の声を聞いていくことの重要性を語りました。
保護者はオープンな対話を通じて、信頼関係を築く努力を
トーマス氏は、保護するだけでなく「子供が社会に参加する権利」も重要であると強調。一律に規制するのではなく、子供たちに教育を与え、成長にふさわしいスキルを身につけさせること。SNSを通しても豊かな経験ができるようにしていくことが、最も効果的だと言います。藤川教授もこれに賛同し、青少年が安全に使えるインターネット環境を作っていくためには、子供たちが学んでリテラシーを身につけていくことと同時に、メタがティーンアカウントを導入したように、事業者が子供向けの安全な環境を作っていくことが重要だと話しました。
また、スマホデビューが増える新学期に向けて、「法律に触れることについては保護者がしっかりと把握しつつ、子供に教えてほしい」と藤川教授。一方で、制限については「一方的に押しつけるのではなく、子供自身にも考えてもらいながら、保護者としての意見を伝える。そういう関わりができるといいのかなと思う」と語りました。トーマス氏も、日頃から子供のオンライン活動に関心を持ち、オープンでリスペクトのある対話を通じて、信頼関係を築いておくことが大切だとアドバイスしました。
AIの時代に子供を危険に晒さないために、大人ができること
イベント終了後、ルーシー・トーマス氏と栗原さあや氏に、10代のSNS利用についてさらに詳しく話を聞きました。
──まずトーマスさんにお伺いします。日本の10代の若者に対してどのようなイメージを持っていらっしゃいますか。
トーマス氏:文化の違いはあっても、世界の若者全般に言えるのは、彼らはただ動画をスクロールして時間を消費しているのではないということ。友達や家族との繋がりを持ち、コミュニティに参加して友情を育んだり、情報を得たり、スキルの向上に役立てるなど、ポジティブにSNSを使っている。我々世代が経験していないような豊かな経験を、SNSを通してしているのだと思います。
──オーストラリアで施行された16歳未満のSNS利用禁止法はどのように運営されているのでしょう? ポジティブな影響は出ているのでしょうか。
トーマス氏:ポジティブな影響はまだわかりません。セーフティコミッショナーが2年間をかけて計測することになっています。ただ法律の施行によって、若者のオンラインの経験は非常に複雑であるということが露呈したと思います。SNSを見すぎることでメンタルヘルス的にネガティブな影響があることが分かってきている一方で、何か問題が起きた時に誰かに相談する最初の窓口が、SNS上の支援団体であることも分かっています。法的な規制によって、子供たちがそういう支援を受けられなくなっているのではないかということもまだわかっていません。
──Metaでは10代のSNSトラブルをどのように捉え、ティーンアカウントの導入でどのような効果を期待していますか?
栗原氏:デジタルネイティブな10代の子供たちにとって、SNSは日常の一部です。友達や家族と繋がり、新しい興味関心に出会うというすごくポジティブな側面がある一方で、悪用する人々がいるのも残念ながら事実ですし、保護者の方がそうしたトラブルへの懸念を持たれていることも、十分に意識しています。だからこそ、ティーンアカウントを導入し、継続的に取り組んでいます。すでに日本でも、対象となる子供たちは全て移行が完了していますが、もちろん導入して終わりではなく、保護者の方に見守っていただく。その負担をどう減らして使いやすくするかが重要です。ティーンアカウントを知っていただき、子供たちと話し合うきっかけにしていただくことが、重要だと考えています。
──子供たちを守るためには、どうすれば良いとお考えですか?
トーマス氏: オーストラリアでは16歳未満のSNS利用が法律で制限されましたが、それでも子供たちのオンライン生活は続いていきます。別のプラットフォームを見つけて参加している子供もいます。テクノロジーはすでに、彼らの生活の一部であるという認識を持つことが大切です。その上で法で規制して安全な環境を提供すればいいのか、リスクを負わせて色々試して学ぶことを良しとするのか。いずれにしても、当事者の声を聞きながら進めていくことが望ましいのではないでしょうか。
栗原氏:大人だけ、政府だけ、あるいは企業だけが一方的にルールを決めて、議論もないままに進めるというのは、望ましくありません。当事者である子供たちの声をきちんと聞きながら、安全性を保つためにイニシアティブを行っていくことが重要だと感じます。
トーマス氏:もし、それぞれに立場や意見が違っても、子供たちのオンライン上の安全性を確保したいという目的が同じなら、その共通のゴールに向かって話し合いを続けていくことです。どんな社会にしていきたいのか、考え続けるしかないと思います。
──今AIという新しいテクノロジーも出てきて、事態はより複雑になっています。この時代に子供たちを危険に晒さないために、どんなことができるでしょうか?
トーマス氏:SNSの安全性に関して、対応が遅れてしまった過去から学び、AIに関してはまさに今、話し合わなければいけないと思います。フェイクニュースや女性蔑視、倫理的な問題など様々な懸念がある中で、テクノロジーは使う人の安全性を第一に考えて、開発されるべきだと思います。
栗原氏:どんな新しいテクノロジーも、ポジティブな側面がある一方で悪用する人がいるのは、残念ながら事実です。でもAIのテクノロジーは、その悪用を防ぐことにも活用できます。私たちもAIを使って、有害なコンテンツが人の目に触れる前に検知して。削除することなどに活用しています。引き続きリスクを最小化し、子供たちを含めユーザーの皆さんにポジティブな体験をしていただけるよう、注意しながら取り組んでいきたいと思います。




