スズキ初の電気自動車(EV)「eビターラ」(e VITARA)がいいクルマであることは乗って実感できた。ただ、聞きたいこともたくさんある。今回はeビターラ試乗後に開発陣に実施したQ&Aの模様をお届けする。
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初めてのEVで「あえてやらなかったこと」は?
――今回はスズキ初のEVとのことですが、全くの初めてですか?
スズキの商品企画担当:「エブリィ」をEVにして浜松市に使っていただいたり、インドのちょっと大きい「ワゴンR」でEVを作ったりしたことはありましたが、量産したことはありませんでした。
――量産試作くらいの段階で止まっていた、という感じなんですね。なるほど。スズキ初のEVが軽自動車ではなかった理由は?
商品企画担当:eビターラの立ち位置は世界戦略車です。もしスズキが、初のEVを日本に最初に入れて頑張っていく、というのであれば、アイデンティティとして、軽自動車のEVにする手もあったかと思うんですが、世界的に見ると、軽自動車の市民権は限られています。どの国でも需要があって、乗ってもらえる車格で、四駆もあって、という仕様を考えると、もともと欧州ではビターラ、日本ではエスクードという名前で販売していたBセグメントのSUVが刺さるのでは、と考えた結果、この形になりました。
――初めてEVを作るとなると、いろんなことがやってみたくなると思います。テスラの先進性なんかを見ていると、クルマの作り手としては、真似してみたくなる機能や装備がいくつもあったかと思うんです。ただ、いろいろなモノを盛り込むと、クルマの価格が上ってしまいます。スズキ初のEVで「あえてやらなかったこと」「取捨選択したこと」はありますか?
商品企画担当:わかりやすいところでは、パワーバックドアを備えていません(荷室にアクセスするドア=リアゲートは手動で開く仕様)。EVとなると、「全て電動なんでしょ」というイメージがあるかもしれませんが、(パワーバックドアにするための)アクチュエーターを付けたりスイッチを付けたりすると、コストが上がってしまいます。サンルーフも、シェードの開閉は手動です。EVだから電動、という作り方ではなく、ガソリン車から違和感なく乗り換えていただく、という趣旨で開発しました。
バッテリー容量の決め手は?
――バッテリーの容量はどうですか? 49kWhと61kWhの2タイプを用意されていますが、もっと大きくできたけどコストを考えて抑えたのか、それとも、61kWhに関しては積めるだけ目いっぱいに積んだ感じでしょうか。
バッテリー担当:49kWhと61kWhの外観は変わらないんですけど、61kWhは目いっぱい積んでいます。LFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)を採用していますが、エネルギー密度でも十分に勝負できると考えています。
――三元系(NMC:ニッケル・マンガン・コバルトを正極材に使用)のバッテリーを使えば、もっと容量を大きくできるものなんですか?
バッテリー担当:もっと稼げますが、それと同時に危険性も増えます。それに伴ってクラッシュゾーンを広げたりもしなければいけないので、コストも増えます。
商品企画担当:航続距離は大事にしていて、お客様が日常、どのくらいクルマを使うかをアンケートなどで調査し、他社に見劣りしてもいけないというバランスの中で、航続距離をまず決めて、バッテリー容量を設定しました。
――プラットフォームを作る時点で航続距離の目安を決めたんですか?
商品企画担当:BセグのSUVにすることを決めた時点、まだクルマとしてはシルエットができたくらいの時点で、航続距離は決まっていました。
――考えてみれば、そうじゃないと、バッテリーを積むスペースの大きさを決められないので、プラットフォームも作れませんよね。
スズキはEV販売で有利?
――航続距離は49kWh(2WD)が433km、61kWhの2WDが520km、61kWhの4WDが472km。これで十分だとは思うんですが、最近は「700kmの戦い」になってきていますよね? 例えば日産自動車「リーフ」やトヨタ自動車「bZ4X」、スバル「ソルテラ」などが軒並み、航続距離700kmを超えてきています。
商品企画担当:航続距離競争で見劣りする部分はあると思いますが、そこは値段と、日常でどのくらい使うかをお客様としっかり話をしながら、訴求していきたいと思います。
――EVが普及するかどうか、自分がEVを購入できるかどうかは、自宅でクルマを充電できるか、自宅にクルマの充電設備が設置できるかどうかがカギになると思います。スズキの軽自動車ユーザーは地方に多そうで、セカンドカーとして使っている人もたくさんいらっしゃると思うのですが、そういう人たちは、戸建てに住んでいる割合が高いと思うんです。充電設備はマンション住まいだと設置が難しいと聞きますが、一軒家であれば、住人家族の意思ひとつで設置できる。そうすると、スズキはEVの販売で有利な立場ともいえるのではないでしょうか? 例えば、地方の一軒家に住んでいる家族で、奥さんがスズキの軽に乗っているようなご家庭があったとすると、「今度のファーストカーにはEVを検討してみては?」と勧めやすいのではないかと思うのですが。
商品企画担当:我々の狙いが、ばれているのではないかというようなお話です(笑)。おっしゃる通りで、充電設備の設置のしやすさ、販売網、軽ユーザーの多さなどから、地方にチャンスはあるのですが、販売価格も重要になってきます。今回の価格設定は競争力があると思うのですが、補助金の額に左右されるところもあります。
国からのCEV補助金127万円は取得できるのですが、そこにプラスして、お住まいの地域で取得できる補助金があります。例えば東京都だと、45万円です。一方、静岡県だと、水素(燃料電池自動車)には補助金が出るのですが、EVには出なかったりします。EVという商品のユースケースがうまくあてはまるユーザーさんであったとしても、やはりeビターラは、スズキのラインアップの中では高いクルマになるので、そこにミートできるかどうかが重要になってきます。
――とはいえ、eビターラの価格は399.3万円~492.8万円で、127万円のCEV補助金を引き算すれば、ハイクラスで装備満載の軽自動車に近寄ってきますから、競争力は高そうです。おなじBセグメントのSUVで人気のクルマといえばトヨタ「ヤリスクロス」ですが、値段でいえば、ほぼ変わらなくなります。
eビターラの販売目標を公表しない理由
――日本では発表(2025年9月)のタイミングから受注を始めていたそうですが、現在までの状況は?
スズキ広報:受注台数は公表していません。新しいクルマを発売する場合、これまでであれば、発表のタイミングで目標販売台数を必ずお伝えしてきたのですが、今回は、あえて公表していないんです。社会情勢、市場の状況で台数がどう変わるかわからないのと、EVの台数規模はガソリン車に比べるとどうしても見劣りするので、その数字を見て「売れていない」というイメージを持たれてしまうのは避けたかったため、非公表としました。とはいえ、社内では目標を立てていまして、受注台数は毎月、社内目標を上回っている状況です。
バッテリー担当:慎重な会社なので、そこまで大きな目標台数を設定しているわけではないんですけどね(笑)。
スズキ広報:EVがライフスタイルにマッチするお客様に、どれだけ届けられるか。そのお客様に、どれだけポジティブに使っていただけるかが重要だと考えています。無理に台数を追って、使い方が合わないお客様に無理して販売して、結果的に「EVはちょっと……」と思われることは、避けなければなりません。EVを理解していただく活動、マッチしている方に購入していただく活動を進めていかなければならないと思っています。





























