VAIO株式会社は12月某日、「VAIOの里」とも知られている安曇野本社・工場の見学会をメディア関係者を対象に実施しました。
2014年7月にソニーから独立してから早いもので10年以上が経過し、2025年には家電量販店大手の株式会社ノジマの傘下入り、12月には代表に糸岡 健氏が就任するなど、節目や変化を迎えたVAIOの現在地をじっくり確認してきたので、レポートをお送りします。
これからのVAIOは「スピードをあげていく」
見学会の冒頭、12月1日に代表に就任した糸島氏より、これまでのVAIO、そしてこれからのVAIOについて語られました。特に印象深かったのは「スピードをあげていく」と宣言していたことです。
「我々がベースとしていることを変える必要はないと考えている、と常々社員にも話しています。ただ、独立し法人向けにシフトしてからの10年間はクオリティファーストを一番大事にしてきました。ただ、そこに慎重になりすぎていた部分があったかなと感じています」
「以前からのVAIOのユニークさ、そしてVAIOとして独立してからのクオリティ、ここにスピードが加わればもっと強くなれると考えている。スピードに順番をつけるのではなく、すべてにナンバーワンで頑張っていけばいいと考えています」と、これまでの独立してからのVAIOの開発姿勢について語りました。
これからのVAIOの取り組みとしてスピードを重視していくことを強く宣言し、さらにソニー創業者・井深大氏の設立趣意書に触れながら「原点はものづくりへの情熱と未来の希望である。我々が目指すのは、新たな理想工場の形だ」と、設計、製造、品質保証、カスタマーサポート、修理、キッティング、自社製品のすべての工程が集まった安曇野工場の立地への強い思い入れが感じられました。
「ちょっといいPC」で働くモチベーションをあげる
個人でPCを選ぶとき、予算の問題もあるがデザインや性能で満足できるPCを選ぶ人は多いと思います。ただ、会社のPCは貸与されるもので、自分で好きなものを選ぶことができず、使い勝手が悪いと感じたり、いかにもなビジネス用のPCを人前で広げることに抵抗を感じた経験は誰しも一度はあるのはないでしょうか。
VAIOは現在、法人向けの販売を強化していますが、そこでも「デザイン」「使い勝手」など、使用者が「ちょっといいな」と思えるPCを提案することを意識しているそうです。
「ちょっといいな」を支えるのは豊富なカラーバリエーションで、法人向けに多いブラックやグレー、シルバーだけでなく、レッドやグリーンといた従来個人向けに展開していたカラーバリエーションを法人向けラインナップにも展開。ディスプレイを開いた際にキーボード面に角度がつく「チルトアップヒンジ」、ヘアライン処理を施して長く使っても色褪せもしづらい高級感のあるパームレストなど、見た目や使い勝手のこだわりも訴求しています。
設計責任者の林 薫氏は「毎朝パソコンを開いた瞬間に、今日も頑張ろうという活力を与える存在でありたい」と話し、「我々のお客様はPCの選定を行う人だけでなく、そのPCを使うユーザーまで含めた2人のお客様を考えて作っている」と、VAIOの設計思想が市場に受け入れられつつあるとも語っていました。
多数のオーダーに応えられる生産体制と、こだわりの安曇野FINISH
ここからは実際の製造工程についてご紹介していきます。VAIOといえばソニー時代から「VAIO Owner Made」として、CPUやメモリ、ストレージやキーボード、そして豊富なカラーバリエーションなど、ユーザーの好みにあわせ複数の構成を選び購入することができます。
この複雑かつ自由度の高い構成でも生産スピードをあげる工夫がセル生産方式の採用です。一人の担当者が複数の工程を担当することで柔軟かつスピーディに組み立て作業を行っています。
また、製造中に誤ったパーツの選択を行っていないか、また組み付けがVAIOの定めるクオリティに達しているかどうか、製造指示書のデータから適切なパーツのピックアップや、組みつけを行ったパーツを画像診断しながら、正しい組み付けになっているかを判断し、次の作業者・工程に進むようにすることで、スピードやクオリティを維持しています。
そして組み立ての終わったPCは負荷テストや通信機能のテストを行い、さらにVAIOの強みでもある「安曇野FINISH」の工程を経て出荷されます。
安曇野FINISHの検査を行うには社内認定制度があり、この制度に合格した作業者ではなければ行うことができません。また、認定作業者であっても毎日作業開始時のテストをクリアしなければ認定作業を行うことができません。
この毎日のテストですが、液晶パネルの色ムラや輝点のチェックを目視で行い、これに全問正解する必要があります。今回メディア向けにもテストの体験がありましたが、4K解像度の高精細なパネルでは輝点を見つけるのは難しく、ユーザー自身も気づけないような細かな部分までチェックを行っていることが、VAIOのクオリティの高さに繋がっています。
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製造過程で正しく部品が組み付けられているかを確認する仕組みも活用されています
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組み立ての終わったVAIOは非常に厳しい品質検査や負荷テストを行い、問題のないものだけが出荷されています
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安曇野FINISHを行う担当者は毎日厳格なテストを受けています
すべてが安曇野でこなせる強みを生かす
PCメーカーによっては設計、製造、修理の拠点が分散していることもありますが、VAIOではそのすべてが安曇野本社に集約されています。これによる強みはまさに「高速フィードバックループ」の実現だといえるでしょう。新モデルを発売してから1年間は故障したPCをすべて安曇野本社に集め、品質担当者が故障原因のチェックを行っています。故障原因が判明しない場合は設計担当者を呼んでチームでの原因特定を行っています。
また耐久試験として落下試験や振動試験、粉塵吹付試験などかなり過酷な試験を行い、正しく動作するかのチェックを行っています。振動試験の試験内容のひとつとして、自転車のカゴに入れて運んだ場合のテストがあり、同様のテストを行った他社PCではバッテリーの接続端子が振動による擦れ、摩耗でバッテリーが認識されなくなったとのこと。VAIOではこの試験でも問題ないよう設計を変更し対策しているそうです。
粉塵吹付試験ではさまざまな粉塵をブレンドし、冷却ファンが動作しなくならないような対策を設計で施しているそうです。 こうしたトラブルの再現、究明、また設計の変更を即時に現行モデルや次期モデルに反映していくことがVAIOのクオリティの高さに繋がっています。
また、昨今のノートPCではWi-FiやBluetooth、そしてハイブリッドワークが普及した現在、モバイルデータ通信など今までに比べ多くのアンテナを内蔵する必要があり、その通信品質もユーザーの満足度につながります。VAIOでは自社内に電波暗室などの施設を持つことで、高い通信品質を実現できるよう設計段階から工夫を施すできることも強みになっています。
10万円以下で購入できる「Reborn VAIO」
VAIOではリースアップした中古のVAIOを買い取り、整備した後に「Reborn VAIO」として再販売する事業を開始しています。一般的な中古のノートPCは本体のクリーニングやOSの再インストール、またメーカーユーティリティを用いたリカバリーを実施して販売されていますが、Reborn VAIOでは徹底して各種部品の交換まで行う徹底ぶり。
現在、Reboan VAIOとして販売を行っている「VAIO Pro PK」の場合は天板、液晶ベゼル、パームレスト、キーボード、さらにバッテリーも新品に交換しています。もちろん内部も各部品の交換に際し分解を行い徹底洗浄を行い、組み立て後は新品と同様の動作テストを実施し、動作に問題のないものだけがReborn VAIOとして販売されています。
またPC本体のシリアル番号も新たなものを付与することで、元の使用者・企業において管理されていた情報から、新たな利用者がセットアップ時にトラブルに遭わないような工夫も施されています。
Reborn VAIO事業を統括する花村 英樹氏は「3~4年使用された商品を再生して1年保証をつけるのは、品質に自信があるからこそできること」と語り、また「将来的にはエコシステムを構築したい。新品販売時に将来の買取価格を約束し、リースアップ後に買い取り、Reborn VAIOとして再販売を行うことで、廃棄ゼロを目指したい」とも今後の同事業の取り組みについても説明がありました。
また、品質だけでなく販売価格も10万円以下の9万9800円に設定し、企業が経費で購入できる価格に設定しています。PC価格が高騰する中、最新モデルほどの性能はいらないが、品質の高いPCを求める企業が買いやすい価格にすることでVAIOが購入候補になるよう、最新モデルとはまた違った戦略的な位置づけになっています。
法人向け市場で存在感を放つVAIO
「VAIO」と聞いて多くの人はソニー時代の他社にはないチャレンジングな製品を思い浮かべるはずです。また、現在のラインナップを見たときに、そうしたモデルがないことを残念に思うかもしれません。
ただ、今回の工場見学を通して見えたことは「見えない部分にVAIOらしい、チャレンジがある」ということです。PC本体だけでなくソフトウェアや周辺機器との組み合わせでユースケースは変わってきます。
安曇野本社・工場のエントランスには「VAIO Museum」として、ソニー時代から安曇野工場で生産されてきた歴代のVAIOが展示されています。現在のVAIOはそうした歴代VAIOの延長、未来にあり、しっかりと過去のDNAを継承しながらも、現在のPCの使われ方に対ししっかりとチャレンジし品質や信頼に重きを置いたモノづくりを行っていると感じました。











