Appleは10月15日(米国時間)、最新のAppleシリコン「M5」を搭載した新型「iPad Pro」を発表した。主な特徴は以下の通り。

  • 11インチおよび13インチモデルで展開され、デザインは従来と同様。本体サイズ・重量は、薄型・軽量化されたM4 iPad Proと同一である。
  • 新世代GPUアーキテクチャにより、AI処理およびグラフィックス性能が強化された。
  • M5に加え、Apple独自設計の無線チップ「N1」と5Gモデム「C1X」(Wi-Fi + Cellularモデル)を搭載し、内部仕様が大幅に刷新された。

発表と同時に予約注文が開始され、発売は10月22日を予定している。日本国内における価格は、11インチWi-Fiモデルが168,800円から、Wi-Fi + Cellularモデルが204,800円から。13インチWi-Fiモデルは218,800円から、Wi-Fi + Cellularモデルは254,800円からとなっている。

M5は、第3世代の3nmプロセステクノロジーで製造され、最大10コアのCPU(高性能コア×4、高効率コア×6。256GBおよび512GBモデルは高性能コア×3の9コア構成)と、10コアのGPUを搭載する。最大の強化点はGPUであり、各コアが「Neural Accelerator」を内蔵し、3世代目となるレイトレーシングエンジンを実装する。これらを最大限に活用するため、メモリ帯域幅は前世代比約30%増の150GB/s超に拡大され、ストレージの読み書き速度は最大2倍に高速化された。

Appleによると、M4と比べてで最大3.5倍高速で、M1搭載iPad Proと比較して最大5.6倍のAI性能向上を実現したという。これにより、画像生成、動画のアップスケール、マスク処理といった高負荷なAIワークフローをより短時間で処理可能となる。

具体的な例としては、M4搭載のiPad Proとの比較で、「Octane X」でのレイトレーシングを使用した3Dレンダリングが最大1.5倍、「DaVinci Resolve for iPad」のAIビデオアップスケーリングのパフォーマンスが最大2.3倍高速化される。

通信面では、N1チップがWi-Fi 7、Bluetooth 6、Threadに対応する。また、C1Xモデムを搭載したWi-Fi + Cellularモデルでは、M4世代比でモバイル通信性能が最大50%向上し、消費電力は最大30%削減されるという。なお、Wi-Fi + CellularモデルはeSIMのみ対応で、物理SIMには非対応である。

ディスプレイは前世代と同様、タンデムOLEDを採用した「Ultra Retina XDR」を搭載。SDRおよびHDRともに、フルスクリーン時最大1000ニト、HDRピーク輝度1600ニトを実現。ProMotionテクノロジー(最大120Hzのリフレッシュレート)、広色域(P3)、True Toneに対応する。1TBまたは2TBストレージ搭載モデルでは、反射低減の「ナノテクスチャガラス」の選択が可能である。

また、最大120Hzの外部ディスプレイを使用できるようになり、Adaptive Syncにも対応する。ビデオ編集などのクリエイティブなワークフローや、低レイテンシが求められるゲームにおいて、大画面で高リフレッシュレートの外部ディスプレイを活用できる。

カメラは、前面に12MP(f/2.0)のTrueDepthカメラ(横向き配置、センターフレーム対応)、背面に12MP広角カメラ(f/1.8、アダプティブTrue Toneフラッシュ)を備える。その他、4スピーカー、4基のスタジオ品質マイク、Thunderbolt/USB 4ポート、背面Smart Connector、Face IDなどを前世代から継承している。

  • ディスプレイ:Ultra Retina XDRディスプレイ、タンデムOLED、2,420 x 1,668ピクセル/ 264ppi(11インチ)、2,752 x 2,064ピクセル/ 264ppi(13インチ)
  • SoC:M5
  • ストレージ:256GB/ 512GB、1TB/ 2TB(10コアSoC、ナノテクスチャガラス選択可能)
  • RAM:12GB(256GB/ 512GBモデル)、16GB(1TB/ 2TBモデル)
  • リアカメラ:12MP広角、f/1.8絞、5枚構成レンズ、アダプティブTrue Toneフラッシュ
  • フロントTrueDepthカメラ:12MPセンターフレームカメラ(横向き)、f/2.0
  • モバイル/ワイヤレス:4x4 MIMO対応5G(sub-6 GHz)、4x4 MIMO対応ギガビットLTE、Wi-Fi 7(802.11be)、Bluetooth 6、Thread
  • サイズ:249.7x177.5x5.3mm(11インチ)、281.6x215.5x5.1mm(13インチ)
  • 重量:444g(11インチWi-Fiモデル)/ 446g(同Wi-Fi + Cellularモデル)、579g(13インチWi-Fiモデル)/ 582g(同Wi-Fi + Cellularモデル)
  • カラー:スペースブラック、シルバー
  • アクセサリ:Apple Pencil Pro、iPad Pro用Magic Keyboard

購入判断のポイントは?

M4世代で実現された薄型軽量の筐体や、タンデムOLEDによる高いコントラスト表現はそのままに、M5の搭載によって処理性能が向上した。製品として成熟域に達しつつも、AI性能や通信機能の進化により、将来的なAI活用を見据えた投資としての価値も持つモデルである。

従来のNeural Engineに加えて、GPUにもNeural Acceleratorが統合されたことで、オンデバイスAI処理の可能性が広がった。通信機能の強化と合わせて、生成AIの活用や高解像度映像の編集、クラウドとローカルをまたぐ作業においても、より実用的なツールとなる。

M2搭載iPad Pro(11インチ第4世代/12.9インチ第6世代)以前を使用しているユーザーにとっては、薄くて軽いデザインが買い替えの動機となり得る。また、iPadやiPad Airからのアップグレードや、M4世代からの更新を検討するユーザーにとっては、(1)生成AIや3D・動画編集など高負荷な作業をiPad単体で行いたいか、(2)Wi-Fi 7やC1Xによる通信性能の向上が利用環境において有効か、という2点が判断のポイントになりそうだ。