AI機能をスマートフォンの中核に統合し「AIフォン」を謳うSamsungのGalaxy Sシリーズ。今回GalaxyのAI機能を体験できる韓国取材ツアーに参加し、Galaxy AIやS25シリーズの開発担当者にプロダクトの特徴や背景を改めて聞く機会を得たほか、高さ13mもの巨大な書架が来場者を圧倒するピョルマダン図書館(Starfield Library)にてGalaxy S25 UltraのAI機能を駆使して撮影してきました。

  • 韓国・ソウルにある商業施設コエックスモール内に位置するピョルマダン図書館。韓国ドラマ「青春の記録」のロケ地でもあり、世界中から観光客が訪れる一大観光名所だそう

    韓国・ソウルにある商業施設コエックスモール内に位置するピョルマダン図書館。韓国ドラマ「青春の記録」のロケ地でもあり、世界中から観光客が訪れる一大観光名所だそう

  • Galaxyシリーズの最新フラッグシップ機、Galaxy S25 Ultra。2025年1月23日に発表されており、国内でも2月14日から販売している

[取材協力:サムスン電子ジャパン]

巨大な書架が圧巻、ピョルマダン図書館をGalaxy S25 Ultraで撮影

ソウル市江南区の商業施設コエックスモール内に位置するピョルマダン図書館は、透明な天井や壁面大型窓を多く配置した、吹き抜け構造の図書館です。天井に届く高さ約13mの巨大な4つの書架は圧巻で、透明屋根やライティングも美しく、多くの観光客でにぎわっていました。図書館らしく本の背表紙には管理番号が付与されており、自由にソファや机で読むことができます。

試したのは「AI消しゴム」「ベストフェイス」「ズーム撮影」「オーディオ消しゴム」といった機能。普段Pixel 8aを使っている筆者はGalaxy S25 Ultraでの撮影機能を初めて試す機会でしたが、編集画面の操作UIがわかりやすく好印象。またこれら4つの機能は基本的にオンデバイスAIで処理されるため通信環境が不要で、かつスムーズに動作していた点もよかったです。

  • 観光客に大人気のピョルマダン図書館。AI消しゴムを適用してみると……

  • 人がまとめて削除され、人で隠れていた部分も含めてAIが生成した画像が現れました

【動画】ピョルマダン図書館で撮影した写真に、「AI消しゴム」を適用してみました。Galaxyの写真ギャラリーからGalaxy AI(キラキラマーク)を選択し、今回は消しゴムアイコンを選ぶだけの自動選択で消したいオブジェクトを選んでいます(対象オブジェクトは指でかこって選ぶことも可能)

  • ベストフェイス機能。男性は目をつぶってしまっていますが……

  • 目が開いている顔と差し替えることで、ベストな1枚に。静止画を3秒前後の動画として記録できる「モーションフォト」をオンすると同機能を適用できます

  • ベストフェイスの加工画面。目が開いている表情を選ぶと違和感なく元画像へ加工できます

  • Galaxy S25 Ultraでは最大100倍ズーム撮影(デジタルズーム)が可能。画像は0.6x(超広角)

  • 1x

  • 2xズーム

  • 3xズーム

  • 5xズーム

  • 10xズーム

  • 30xズーム

  • 100xズーム

【動画】ピョルマダン図書館で撮影した動画に「オーディオ消しゴム」を適用したところ。AIが収録音声を分析し、人の声(スピーカーとして話している人)や人混み、ノイズ、風の音といった6種類に分類。それぞれの音を好きなバランスに再調節できます ※音が出ます

  • 「オーディオ消しゴム」の編集画面。人混みの音量を「-100」に設定しています

Galaxy AIはスマホ中心にエコシステム全般へ拡大

Galaxy AIおよびGalaxy S25シリーズ・カメラ機能については、サムスン電子の担当者から改めて製品の狙いや特徴が紹介されました。

Galaxy AIが搭載されるGalaxy S25シリーズを「真のAIスマートフォン」と定義したサムスン電子 MX(Mobile eXperience)事業本部 技術戦略チーム長・常務のソン・インガン(Inkang Song)氏は、Galaxy AIの特徴を「マルチモーダルAIエージェントをベースに、実際の人間が見る/聞く/答えるかのようなモバイルAI体験ができる」と説明。

  • サムスン電子 MX(Mobile eXperience)事業本部 技術戦略チーム長・常務のソン・インガン(Inkang Song)氏

マルチモーダルAIとは、テキストだけでなく、音声や画像、センサーなど複数のデータを統合して処理するAIを指します。Galaxy AIは「日常生活に役立つAI」を目標に開発されており、ボタン1つで手軽に起動し、普通の話し言葉を理解し、直感的に使えることがポイントの1つ。

またS25シリーズでは多くの機能がオンデバイスAI処理に対応していますが、例えばGeminiベースの「かこって検索」や文章の要約、自動箇条書き、テキストの画像変換などはクラウドAIで処理します。Galaxy AIではオンデバイスAIとクラウドAIを、作業によってシームレスに切り替えられますが、ユーザー側でもクラウドAIを使用するかどうかの選択が可能です。

ソン・インガン氏はロンドン大学・経営研究所との協業により、AI使用率が高いユーザーの割合がこの1年で2倍になっているという研究結果を紹介。イギリス、フランス、ドイツ、メキシコ、UAE、ブラジル、日本、韓国、アメリカ、インドの10カ国全体では2024年7月の16%から直近では27%へ増加しているなか、日本に限ればAI使用率が高いユーザーの割合は約6%にとどまっているといいます。日本市場では個人情報漏えいの懸念と、健康に関するAI活用への需要が高いことがユニークな点であるとし、同氏は日本市場におけるAI使用率の低さを“ポテンシャルが高い”と評しながらも、広げるには「実用性/容易性/安全性」の3要素の解消が必要だと説明しました。

同社では長年蓄積してきたハードウェア革新の専門性を基に、Galaxy AIはスマートフォンを中心にしながらもSamsung製デバイスのエコシステム全般へ拡大し続けるとしています。SamsungがGoogleと共同開発した、XR用のオペレーティングシステム「Android XR」を搭載するXRデバイスを例に挙げ、「次のトレンドはデバイス間をまたいで使える“AIエージェント”。新しいフォームファクタの開発については常に可能性を開いている。エコシステム全般を強化することが自社の成長につながる」と語られました。

  • Galaxy AIの機能例

仮想と物理、両方の絞り機構を研究「時代に合ったレンズを」

またサムスン電子 MX(Mobile eXperience)事業本部 ビジュアルソリューションチーム長 副社長のジョシュア・チョ(Joshua Cho)氏は、カメラ機能の開発原則を次の3つだと紹介しました。

  • 誰がいつ撮影しても最高の撮影体験
  • プロも満足できる撮影、編集機能
  • 簡単・便利な編集で自分だけのコンテンツ制作
  • サムスン電子 MX(Mobile eXperience)事業本部 ビジュアルソリューションチーム長 副社長のジョシュア・チョ(Joshua Cho)氏

カメラ撮影に不慣れな人からこだわる人まで幅広いユーザーが撮影・編集で満足できるカメラ機能、ということで、最新のGalaxy S25シリーズではプロセッサ(Snapdragon 8 Elite for Galaxy)やレンズのハードウェア的向上、AI学習モデルの増加といった機能改善が図られています。

撮影機能ではポートレートやAIフィルター、ナイトグラフィーの性能改善が行われ、Expert RAWアプリとの組み合わせで絞り値をデジタルで再現するバーチャルアパーチャーを搭載しました。動画では新たに、プロフェッショナル向けに編集の自由度が高いLog形式での撮影が可能に。AI機能も進化し、例えば不要な被写体を消せる「AI消しゴム」では人とその影までまとめて削除できたり、「オーディオ消しゴム」では収録音声を6種類に分析しそれぞれの大きさを調節できるようになっています。

  • 【写真上下】Galaxyのカメラと連動する Expert RAWアプリを使うと、RAW撮影が可能となるほか、ISO感度やシャッタースピード、F値などの設定調整が可能になる。写真はバーチャルアパーチャーで絞り値をデジタル的に変更して撮影撮影した2枚

他社のスマートフォンではレンズに物理的な絞り機構を備えている機種もありますが、Galaxy S25はソフトウェア処理で被写界深度を再現する方式を採用しています。新商品における搭載レンズの組み合わせは長らく研究を進めているとし、「時代に合っているか」「ユーザーにどのような撮影体験をもたらすか」という観点から、適切な組み合わせを選んでいるといいます。

「現代はハードウェアやAIの発展が速い時代で、どちらが速く発展するかわからない。バーチャルでの“仮想可変絞り”と、物理的な絞り機構の両方を視野に入れ研究開発に取り組んでいる」と、ジョシュア・チョ氏。

例えばS25 Ultraではバーチャルアパーチャーを取り入れ、従来より明るく絞りの設定も調整したレンズを採用。今後発表されるであろう「S26」や「S27」シリーズもこの観点に準じ、時代に合った最適なレンズの組み合わせを選択する予定だとしました。