KDDIは2月5日、松田浩路取締役執行役員常務 CDOが4月1日付で代表取締役社長 CEOに昇格する人事を発表した。現代表取締役CEOの髙橋誠氏は同日付で代表取締役会長に就任する。現取締役会長の田中孝司氏は取締役相談役となり、6月に開催される定時株主総会をもって取締役を退任して非常勤の相談役に就任する予定。

  • 松田浩路氏

    4月1日付でKDDI代表取締役社長 CEOに就任する松田浩路氏(提供:KDDI)

松田氏は1996年4月にKDDIの前身のひとつである国際電信電話株式会社に入社。当初はエンジニアとして通信事業に携わり、のちには商品企画やマーケティングも経験。2020年4月にKDDI執行役員に就任し、2022年6月には取締役執行役員、2024年4月からは取締役執行役員常務を務めている。現在はそれに加え、同社CDO(Chief Digital Officer)、先端技術統括本部長、先端技術企画本部長を兼ねている。直近ではGoogle、Apple、Qualcomm、Starlinkといった直近のKDDIの海外パートナーとの折衝も松田氏が主に担当した。

  • 松田浩路氏(提供:KDDI)

    松田浩路氏(提供:KDDI)

同日行われた第3四半期決算説明会の第2部として急遽開催された会見では、髙橋現社長と松田次期社長が並んで登壇。髙橋氏は「かねて当社の社長は通信の世代ごとに交代すると言われており、私も5Gの成長とともに7年間務めてまいりました。世界では5Gの次は6GではなくAIの時代だと言われています。その意味から、今後の会社を牽引していく人材は、技術の経験が豊富で、グローバルのパートナーとも臆することなくビジネス構築ができる、そんな必要があると考えました」として、「私よりも10歳若く、新しいビジネス領域に果敢に挑戦してくれる人材。このAI時代に最適な人選と思っています」と松田氏を紹介した。

KDDIは来年度に現在の中期経営計画の最終年度を迎える。髙橋氏は2026年度からの次期中期経営戦略の策定を新たな体制で行うのが重要であるとして、このタイミングでの社長交代の理由を説明した。

  • 現代表取締役CEOの髙橋誠氏

    現代表取締役CEOの髙橋誠氏は代表取締役会長に就任する(提供:KDDI)

松田氏は、「髙橋社長が進めた通信とライフデザインの融合、サテライトグロース戦略は、あらゆる産業の基幹部分に通信が浸透し、その上に付加価値を加えて提供するという取り組みが加速させました。そして事業成長と社会課題の解決を結びつける好循環の基盤が構築されています」とKDDIの現状を振り返り、さらに「このバトンをしっかり受け取って、持続的な成長を確たるものにしていきます。5Gが本格期を迎え、AIをフル活用する時代に、当社のデータ資産をAI技術によって新しい価値を創造する原動力とし、“つなぐチカラ”を新次元にアップグレードし、事業に昇華していくことが私の責務と考えています」と語った。

髙橋氏は松田氏を後継社長に指名した理由としてグローバルパートナーとの関係構築を評価したと話したが、松田氏自身が印象深い交渉として挙げたのはスマホ以前のiPhone 4S/iPhone 5の導入時のことだという。

  • Starlinkとauスマートフォンの直接通信の実証実験を行った際の松田氏

    2024年10月に沖縄県の久米島でStarlinkとauスマートフォンの直接通信の実証実験を行った際の松田氏。Starlink(SpaceX)との折衝は基本的に松田氏が統括した

後継選定のプロセスは2024年の早い段階からはじまっており、髙橋氏は複数の候補者を挙げて社外取締役などを含めた調整を行っていた。そして11月ごろに「指名諮問委員会の承認が得られれば」という条件付きで松田氏に伝達したという。松田氏はそのときのことについて「固まってしまったというか、リアクションがとれなかった」と語っており、驚きが大きかったようだ。

「KDDIをどういう会社にしていきたいと考えているか」と問われた松田氏は、「“つなぐチカラ”には引き続き力を入れていきたい。“つなぐチカラ”を進化させて、誰もが想いを実現できるようにする」とそのビジョンを語っている。

髙橋氏は社長を務めた7年間を振り返り、「あっというまだった。いちばん印象に残るのは長時間の通信障害。皆さんには迷惑をおかけして申しわけなかったのですが、そこから技術陣と一緒になって、ネットワークとして一番になりたいと思った。去年やっとOpenSignalで1位になれて、僕としてもうれしかった」と話していた。

なお髙橋氏は会長就任後の活動について、「来年度は現在の中期経営計画の最終年なので、それをサポートしていきたい。それからNTT法のほうもだいぶ落ち着いてきたけれども、政官財界の活動も自分のほうで対応していくというのと、スタートアップの育成には関与していきたいと思っています」と言い、外向け/内向けともにサポートしていく姿勢だ。

4月の社長就任に合わせてあらためて松田新社長がその考えや事業方針を語る場が設けられるという。

  • フォトセッションでの両氏

    フォトセッションでの両氏(提供:KDDI)