頭部に装着すれば映像コンテンツが大画面で楽しめるヘッドマウントディスプレイ(HMD)ですが、「買ったけど使わなくなった」という人も多いのでは? 「重たくて疲れる」「装着感が悪い」「ふだん眼鏡をかけていると映像が美しく楽しめない、補正用のアタッチメントレンズが高価」「表示が小さく没入感に欠ける」といった不満が多く挙げられます。

そのような欠点を解消したエンタメ向けのHMD「GOOVIS G3X Pro」がMakuakeに登場し、応援購入金額が1800万円を超えるヒットとなっています。試作機を借りて試したところ、優れた視度調整機能のおかげでふだん眼鏡をかけていても裸眼で精細な表示が楽しめ、本体の軽さもあって映画も疲れることなく鑑賞できました。何より、iPhoneなどのスマートフォンならばUSB Type-Cケーブル1本で接続でき、iPhoneならAirPodsの利用でサウンドも大迫力。スマホと一緒に持ち歩いて自宅でも移動中でも大画面&高画質で動画が楽しめるスマホ時代のHMD、だと感じました。

  • 小型軽量と表示品質を両立したエンターテインメント向けのHMD「GOOVIS G3X Pro」。コンパクトサイズながら調整幅の広い視度調整機能を備えており、ふだん眼鏡をかけている人も裸眼で楽しめるのが魅力

バッテリーを省いて小型軽量化、ケーブル1本でスマホと接続

GOOVIS G3X Proは、HMDを専門に手がけるGOOVISが投入した最新モデル。まず注目したいのが軽さと小ささで、Meta QuestシリーズなどのHMDと比べると明らかにコンパクトな仕上がり。ヘッドバンドなどを含んだ重さは実測で約320gで、装着しても重たいという印象はありません。ちなみに、Webサイトでうたっている「200g」という重量は、バンドなどを含まない本体のみの重さとなります。

  • 未来的なデザインを採用するGOOVIS G3X Pro。使用時は、さらに付属のヘッドバンドを装着する形となる

  • 前面は鏡面仕上げで、周囲に金メッキが施されている。ヘッドバンドを装着するマウントは簡単に取り外せる

  • 接眼部のラバー素材のアイカップは磁力で固定されており、簡単に取り外して洗える

  • 実使用時の重量は320gほど。200g、といううたい文句はHMD本体のみの重量なので注意

おでこに当たる部分には柔軟性のある素材が張られていることもあり、装着感は上々。装着時、ゴーグル部を90度はね上げて固定できる仕組みも備えており、ヘッドバンドを外さなくても周囲の人と話したりできるのは便利だと感じました。

GOOVIS G3X Pro自体は表示機能しか持たないため、本体側面のUSB Type-C端子経由でパソコンやスマートフォン、ゲーム機などのデバイスと接続する必要があります。バッテリーも内蔵しないので、USB Type-C端子から電源も供給します。別売の変換ユニットを使えばHDMIの信号も入るので、ゲーム機やBDレコーダーなども接続できます。

  • 側面にUSB Type-C端子を搭載。信号入力と給電を担う

やはり便利だと感じたのは、iPhoneなどのスマホはUSB Type-Cケーブル1本で接続できること。スマホならではの軽快な操作や豊富なアプリを用い、ふだんスマホで動画を見るのと同じ感覚で格段に大きくキレイな画面で映画や動画をリッチに楽しめるのは満足でした。

  • USB Type-C端子を備えるiPhone 16シリーズなどのスマートフォンならば、ケーブル1本で接続できるので手間がない

  • HDMI出力のセットトップボックスや家庭用ゲーム機などは、HDMI→USB Type-Cの変換ユニットが必要で、そのユニットへの給電も必要となるため、配線がややこしくなる

パソコンに接続すればパソコンの画面も大きく表示できますが、手元がまったく見えなくなるので、キーボードやマウスが操作しづらくなります。周囲の様子がスルー画で見え、キーボードやマウスの操作もできるApple Vision Proとは異なり、GOOVIS G3X Proはあくまでエンタメ向けのHMD、と考えた方がよいでしょう。

内蔵の有機ELパネルは片目でフルHD、両目で4K相当の解像度を持ちます。表示も大きく、映画館の前方5列目ぐらいで見ている印象でした。大型のアイカップにより周囲の光はほぼ遮られるため、没入感は上々です。

  • 大型のアイカップを備え、周囲の光はほとんど遮断できる。メガネ型のデバイスにはない没入感が味わえる

視力の悪い人でも裸眼で楽しめる調整機能が優れる

この優れた表示性能を引き立てているのが、本体に備わる柔軟な補正機能です。視力に合わせて見え方を調整する視度調整機能と、瞳の間の距離を調整する機能を備えており、それぞれ本体下に設けた大型ダイヤルで細かく調整できます。特筆すべきなのが調整範囲の広さで、視度調整機能は+2D~-8Dまで調整でき、ド近眼&老眼が進む筆者でも裸眼で鮮明に見えるよう調整できました。

  • 上部には音量調整や明るさ調整のボタンを搭載。右端の3Dボタンを押せば、3D Blu-rayなどに対応した3Dコンテンツが表示できる

  • 底面にあるのが、GOOVIS G3X Proの注目装備である視度調整用のダイヤル。回せば視度が、横にスライドさせれば瞳の間の距離を調整できる

  • 視度調整の幅は+2D~-8Dまでと広いのがポイント

  • 瞳の間の距離を一番狭めたところ

  • 逆に、一番広げたところ

多くのHMDは眼鏡を外さないと使えず、それでいて専用の補正用レンズはかなり高価な場合が多く、眼鏡が手放せない人はHMDを満足して利用できないケースが少なくありません。眼鏡を外した裸眼でも精細に楽しめる構造を採用している点は、GOOVIS G3X Pro一番のポイントだと感じました。

優れた表示性能に反してガッカリしたのがサウンド性能です。両耳部分にステレオスピーカーを内蔵するものの、パンチのないペラペラなサウンドで拍子抜けしました。側面のイヤホン端子を利用すれば有線イヤホンが接続できますが、スマホを接続しているならスマホと連携させたワイヤレスイヤホンが使えます。iPhoneなら、ふだん使っているAirPodsシリーズがそのまま利用でき、アクティブノイズキャンセリングを効かせた状態で映像とサウンドに没入できます。Apple TV+の空間オーディオ対応ビデオならば、奥行き感のあるリアルなサウンドとともに楽しめます。

  • ヘッドバンド接続部の近くにスピーカーを内蔵するが、音質はかなりショボいうえ、音量を最小にしてもかなりのボリュームで鳴るなど、ちょっと残念な仕上がり

  • USB Type-C端子の反対側にはイヤホンジャックを備えており、有線のイヤホンが接続できる

  • iPhoneとAirPodsさえあれば、リッチな動画コンテンツや空間オーディオに対応した高音質サウンドが手軽に楽しめる

ちなみに、駆動時は冷却ファンの騒音が発生しますが、イヤホンのノイズキャンセリング機能があればほとんど気になりません。

スマホの軽快さを損なわず映像体験が圧倒的に豊かになる

GOOVIS G3X Proは、軽量コンパクトな設計ながら「重たい」「脱着が面倒」「視力が悪いと見えない」といったHMDの不満を解消した佳作だと感じます。スマホとワイヤレスイヤホンさえあれば、周囲がうるさくても場所を選ばず自分の世界に没頭でき、プロジェクターのように大仰な設備や設置の必要がない点は日本向きのデバイスといえます。付属の収納ケースはまぁまぁコンパクトな設計で、航空機や新幹線での出張や旅行にも手軽に持ち出せます。

  • 付属の収納ケースを利用すれば、USB Type-Cケーブルをはじめ必要なアクセサリーをまとめて保管できる

  • 外観は緩やかなシェイプを描いていて、カバンなどに収納しやすい

一般販売価格は149,800円で、Makuakeでの応援購入価格でも98,850円からとちょっと高価なのが悩ましいところ。ですが、さまざまな動画サブスクを契約してスマホやタブレットで動画を楽しんでいる人にとって、軽快な装備のまま映像体験が圧倒的にリッチになる体験は魅力的だと感じます。