ソニーがCES 2024の開催に合わせて発表した、高画質4K OLEDマイクロディスプレイとビデオシースルー機能を搭載するXRヘッドマウントディスプレイを体験してきました。プロのクリエイターの空間コンテンツクリエーションをサポートするために開発されたという、本機の映像は確かに驚きの没入感でした。

  • ソニーがCES 2024で発表した新しいXRヘッドマウントディスプレイを体験してきました

空間コンテンツクリエーションを支えるプロ向けデバイス

このXRヘッドマウントディスプレイは、独自のメタバース技術とハードウェアによる設計。今後、立体視で楽しむ3Dビデオコンテンツのクリエイターや、工業製品のデザインに携わるプロフェッショナルのワークフローを支援するためのデバイスとして開発されました。製品の型番や愛称のような「呼び名」はまだ決まっていません。

  • ソニーのXRヘッドマウントディスプレイと、立体空間内オブジェクトの操作に使うリング型デバイス、およびポインティングデバイス

先日、アップルがアメリカで2月2日に発売することが伝わってきた「Apple Vision Pro」は、一般のコンシューマー向けを想定した空間コンピュータであるところが違います。

ソニーのXRヘッドマウントディスプレイは片眼4K/両眼8Kの高精細な立体映像視を実現しています。映像表示の仕様についてはApple Vision Proと一緒です。その理由は推して知るべしです。

筆者は以前、2021年にソニーが開催した技術展示会「Sony Technology Day 2021」にて、当時、開発が発表されて間もなかったソニーの4K有機ELマイクロディスプレイを搭載するヘッドマウントディスプレイの試作機を体験しています。そのときの記事『超高画質HMDに“優しくつまめる”新ロボも! ソニー発の先端技術を見た』もぜひご覧いただくとして、おそらくこのデバイスが新しいXRヘッドマウントディスプレイにも使われているのだと思います。

今回、CES 2024の会場でメディアを限定した体験会を実施。筆者もこの機会に参加してXRヘッドマウントディスプレイを視聴しました。

メガネをかけた状態でも、フリップアップできる本体のディスプレイ側を顔の前に固定して見られるので、特別な補正レンズなどを使わずにユーザーの視力に合わせたシャキッとした映像が見られます。業務用のヘッドマウントディスプレイであれば、複数の仲間でシェアしながら使うことも考えられます。実機はコンセプト段階のデザインですが、ベルト部分の締め付けを調整して簡単に着脱できるところも好印象。質量は明かされていませんが、見た目よりもだいぶ軽く感じて、装着時の負担感は少なめでした。

  • 頭部の側面・後側を固定するバンド

  • ディスプレイ部分はフリップアップできる機構です

  • 片眼4K/両眼8Kの映像をのぞき込みます

画質・操作性の高い完成度に驚愕

ソニーのXRヘッドマウントディスプレイに付属するリング型デバイスとポインティングデバイスを使って、仮想空間でのオブジェクトをつかんだり動かしたりするデモを体験しました。利き手に装着するポインティングデバイスは、空間内のオブジェクトをクリックしたり、ホールドして移動させたりするような使い方です。

ヘッドマウントディスプレイが搭載する計6基のカメラは、2つがビデオシースルー表示、4つが空間認識に使用します。リング型デバイスを装着した手のジェスチャー操作をカメラが認識して、指によるピンチ動作で空間内のオブジェクトをつかんだり動かしたりという操作を両手でできます。

試作機であることを踏まえても、やはり操作に対するきびきびとした動作や、仮想空間に配置された細かなアルファベットの文字が並ぶドキュメントが「くっきり見える高画質」は秀逸でした。デモ体験の映像は透過しないVR状態だけでしたが、カメラを使ったシースルービューを体験できる機会が楽しみです。

  • パソコンがレンダリングした、左右の目に表示する4K映像のイメージ

XRヘッドマウントディスプレイはスタンドアロンよりも、有線/無線でパソコンと接続して使うことを想定しています。というのも、本機は最初のパートナーとして名乗りを上げたドイツのシーメンスとのコラボ展開が決まっており、シーメンスの空間コンテンツ制作用ソフト「NX Immersive Designer」と仕様を合わせ込んでいるからです。2024年内の商品化も予定しています。

3D画像の編集・レンダリングをパソコン側で行い、ヘッドセットは片眼4Kの映像をディスプレイに映したり、ジェスチャー操作をさばいたりします。OSはAndroidで、SoCはクアルコムがXRデバイス向けに最適化した「Snapdragon XR2+ Gen 2」という仕様です。

長時間におよぶ空間コンテンツクリエーションは、映像や入力操作に対する表示や入力操作の遅延が発生してしまうと、ユーザーの負担として跳ね返ります。ソニーのデバイス技術とクアルコムのチップセット、シーメンスのソフトウェア技術が連携する形で作り込まれているため、発売時にはデバイスの外観も含めてますます完成度が高まりそう。とても楽しみです。

  • 側面にあるUSB-Cポート。ケーブルでコンテンツの信号を伝送しながら、ヘッドマウントディスプレイへの給電も行います

XRヘッドマウントディスプレイを担当するソニー株式会社の近藤博仁氏は「従来の環境と手法ではたいていの場合、3Dコンテンツ制作に多くの手間とコストが求められました。当社が開発を進める高精細で直感的操作を実現する没入型空間コンテンツ制作システムが、空間コンテンツクリエーションの間口を広くすることにつながり、結果、たくさんのクリエイターの活躍を支える――。これ本機の開発に注力する狙い」と説明しています。

  • XRヘッドマウントディスプレイを担当するソニー株式会社の近藤博仁氏

今後、ソニーはシーメンスのほかにも多くのパートナーに新しいXRヘッドマウントディスプレイを中心とした空間コンテンツクリエーションのソリューションを提案するそうです。個人のクリエイターも大歓迎とのこと。商品化を迎えるときには販売価格にも要注目です。