アップルが、8.3インチのコンパクトな「iPad mini」を10月23日に発売します。新たに、高パフォーマンスなAppleシリコンであるA17 Proを載せて、Apple Intelligenceに設計を最適化した最新モデルを速報レポートします。

  • 根強い人気を誇る8.3インチのiPad miniに新製品が登場。A17 Proチップの搭載を中心に、Apple Intelligenceに最適化を図っています

小さく軽く、パワフルな最強デジタルノート

アップルがiPad miniを発売するのは2021年の秋以来、約3年ぶりです。初めてオールスクリーンデザインになった第6世代のiPad miniを筆者も当時すぐに購入して、仕事を中心に愛用してきました。

8.3インチのLiquid Retinaディスプレイを搭載する本体の縦横サイズは、ほぼB6判のノートと同じ。質量も290グラム台と、片手で持ちながらApple Pencilで手書きのメモを取る用途に最適なサイズであることが、筆者の業務と最高にフィットしました。展示会や発表会に出かけると、取材を受けていただく方々と立ち話をしながら大事な話題をメモ書きする機会がよくあります。

  • 4色のカラーバリエーションから、パープルのWi-Fi+セルラーモデルを試用しました

iPad miniは“デジタルノート”として、筆者の期待に最高の形で応えてくれる存在です。以前は、EInkの技術を使ったソニーのデジタルノート「デジタルペーパー」を使っていました。本機で作成したファイルをMacやiPhoneに読み込む作業は、専用アプリを使えばだいぶスムーズにできるようになるなど、発売後も改良されてきました。でも、iPad miniならiCloudを介してGoodnotesアプリのノートが同期してくれます。PDFファイルに変換しながらAirDropで転送もできるので、もはやこれ以上ラクな環境はありません。

今年の5月に、11インチのM4搭載iPad Proも買いました。iPad miniよりも本体が1ミリ薄いiPad Proですが、iPad miniは質量が約150グラムほど重いので、やはり長時間手に持ち続けてメモを書いたり、電子書籍を読む用途であればiPad miniがベター。筆者は、レビューやインタビューの原稿をパソコンで書き始める前に、iPadとApple Pencilを使って考えを手書きでまとめています。この時は大きな画面がほしいので、11インチのiPad Proが活躍しています。

  • 約6.3mmの薄い本体。USB-Cコネクターを搭載しています

ストレージ容量が拡大。活用場面が広がるApple Pencil Pro

新しいiPad miniは、正式には第7世代のiPad miniではなく「iPad mini(A17 Pro)」と搭載するチップセットで呼び分けられています。5月に発売したiPad Pro(M4)、iPad Air(M2)とネーミングを揃える狙いがあったそうです。でも名前が長いので、本稿では“新しいiPad mini”と呼び分けるようにします。

新しいiPad miniは、第6世代機とデザイン、サイズはほぼ変わりません。カラーバリエーションには、明るいブルーとパープルが加わりました。ほか2色はスターライトとスペースグレイです。nanoSIMカードが廃止されたため、Wi-Fi+Cellularモデルにもスロットがありません。

  • トップボタンには、Touch IDによる指紋認証技術を搭載。マスクを着けたまま画面のアンロックなどが素速くできます

新しいiPad miniは、最小ストレージサイズが従来の2倍、128GBからスタートします。大きい容量のモデルは、新たに512GBが追加されています。iPad miniは、飛行機や電車による長時間の旅に欠かせないエンターテイメントビュワーとしても人気のデバイス。オフライン環境を想定して、ストレージにより多くの映像・音楽コンテンツが保存できる点はうれしい進化です。

  • メインカメラの仕様は第6世代のiPad miniから変わりません

  • パープルのSmart Folioカバーを装着。側面のマグネットコネクターにApple Pencil Proを装着して充電ができます

筆者は、ハイレゾ対応のUSB-DAC搭載ヘッドホンアンプなどオーディオ製品の検証にも、よくiPad miniを使っています。iPhoneよりも大きな画面にジャケ写や楽曲の情報が快適に表示できるからです。ハイレゾ音源は、1件あたりのファイルサイズが大きくなるので、ストレージサイズの大きなiPadはなおさら頼もしく感じられます。

  • USB-Cにハイレゾ対応のUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプを接続。8.3インチの画面にアルバムのカバーアートが映えます

新しいiPad miniは、最も安価な128GBのWi-Fiモデルが78,800円から購入できます。アップルが5月に実施した第6世代iPad miniの価格改定(値上げ)の以前の価格に戻ったわけですが、ストレージの容量は2倍になっているので、お買い得であることは間違いありません。

Apple Pencil Proは販売価格が21,800円。贅沢なデジタルペンですが、触覚フィードバックやホバーの機能を使って、デジタルペンによる手書きがより確実にできる魅力が従来のApple Pencilとの違いです。Apple Pencil Proの本体を指先でぎゅっと握るスクイーズや、ペン先を回転させるバレルロールのジェスチャー操作に対応するアプリも徐々にですが増えています。Apple Storeなどで13,800円で買えるApple Pencil(USB-C)と、使い勝手の違いをよく吟味して選ぶことをおすすめします。

  • スクイーズ/バレルロールなどの新しいジェスチャー操作、触覚フィードバックを搭載するApple Pencil Proがおすすめです

  • Adobe Lightroomによる写真加工や色味の調整なども、Apple Pencil Proがあればより直感的に操作できます

10月から始まるApple Intelligenceも、iPad miniですぐに使える

Apple Intelligenceは、その初期機能が10月から、無料のソフトウェアアップデートとして公開を予定するiPadOS 18.1で、デバイスとSiriの言語を米国英語に設定すると利用可能になります。A17 Proを搭載する新しいiPad mini、またはM1以降を搭載するiPadシリーズが対応します。

アップル独自の生成AIモデルがテキストの要約やリライトを引き受けてくれる「作文ツール」など、Apple Intelligenceにはすぐに日本語で試せない機能もあります。新しいSiriは、テキストによるタイプ入力も日本語がまだあやふやでした。

ただ、写真アプリの「クリーンアップツール」に言語の壁はありません。写真に写り込んだ不要な被写体をスマートに消してくれます。追ってImage Playgroundやジェン文字(Genmoji)のような画像生成系のAI機能も拡充されてくれば、「7万円台からApple Intelligenceが試せるデバイス」としてiPad miniの魅力が増してくると思います。

  • Image Playgroundによる自動画像生成も、iPadとApple Pencilによる組み合わせと相性が良さそうな機能です

  • Apple IntelligenceによるAI画像加工機能「クリーンアップツール」は、操作に言語の理解は不要。本稿では、取材のため特別な許可を得てiOS 18.1パブリックベータ版の画面写真を紹介しています

  • 写真に写る不要な被写体が、指やApple Pencilによるタップ操作で簡単にできます

筆者は、第6世代のiPad miniを発売後から3年間使ってきました。新しいiPad miniには、今ではほかのiPadのラインナップが全機種対応したフロント側カメラのセンター配置を実現してほしかったです。筆者は、ビデオ通話の時によくiPad Proを使っているのですが、画面の向こうにいる通話相手に目線を合わせやすいセンター配置のカメラにすっかり慣れてしまいました。

また、新しいiPad miniにはSmart Connector端子が備わっていないため、アップル純正のカーバ兼キーボードがiPad mini向けに商品化される可能性は今後も低そうです。

それでもなお、iPad miniはMacや大きいiPad Proと2台持ちしながらでも、コンパクトなデジタルノートとしての高い利便性が実感されるユニークなデバイスだと思います。Apple Intelligenceと連携しながら、これからどんな方向に進化していくのか楽しみです。