Appleは、今後提供する「iOS 18.1」より、iPhone上のサードパーティ製アプリ内でセキュリティとプライバシーを保護しながらNFC非接触決済が行えるようにすると8月14日に発表した。

Appleがデベロッパ(アプリ開発者)向けに公表したもので、デベロッパはApple PayおよびAppleウォレットとは別に、iPhone上の自社アプリ内で、Secure Elementを使ってNFC非接触決済を提供できるようになる。ユーザーはそのアプリを直接開くか、iOSの標準の非接触アプリとして設定し、iPhoneのサイドボタンをダブルクリックすることで決済できる。

デベロッパは新しいNFC APIとSE(Secure Element)APIを使い、店内の支払いや車のキー、交通系ICカード、社員証、学生証、ホームキー、ホテルの部屋の鍵、店舗のメンバーズカードやポイントカード、イベントのチケット、今後サポート予定の政府機関発行の身分証明書に、アプリ内の非接触決済を提供できるようになる。

ユーザーのセキュリティとプライバシー、安全性をデベロッパに提供できるように設計しているのも特徴。NFC APIとSE APIは、デバイス上に機密情報を安全に保存するSecure Elementを使い、非接触決済時にはSecure Enclave、生体認証、Appleサーバなどを活用する。

2つのAPIは、iOS 18.1のデベロッパシードで、日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ニュージーランド、英国、および米国の開発者が利用できるようになり、さらに国・地域が追加される予定。

なお、デベロッパがこの新しいソリューションを自社のiPhoneアプリに組み込むには、Appleと商業契約を結び、NFCおよびSEのエンタイトルメントをリクエストし、関連する料金を支払う必要がある。これにより、一定の業界と規制に係る要件を満たし、Appleが進めているセキュリティとプライバシーの基準を約束し、権限を与えられたデベロッパのみが、関連APIにアクセスできるようになる。

iPhoneのアプリ内NFC決済は、従来はApple PayやAppleウォレットにのみに限定していた。欧州連合(EU)の欧州委員会はこの状況を「支配的地位の乱用にあたる」として調査を進めていたが、Appleが自社のモバイル決済技術(NFCアクセス)をサードパーティの開発者に開放する方針を示したことで、調査を終了。今回の発表も一連の流れを受けた対応とみられる。