既にRyzen 5 9600XとRyzen 7 9700Xについては性能評価をお届けした訳だが、やっとRyzen 9 9900X/9950Xの性能も解禁になったので、その性能をお届けしたいと思う。

  • Ryzen 9 9950X & Ryzen 9 9900Xを試す - Ryzen 9000シリーズ全モデルでZen 5を改めて詳細評価

    Photo01: 評価キットではシール無し。

評価キットと評価環境

今回はブリスターパッケージに入った状態で届いた(Photo01)のでパッケージ写真は無い。ただパッケージ写真そのものはAMDから既に公開されている(Photo02)ので、こちらでイメージはつかめると思う。

  • Photo02: Ryzen 5 9600X/Ryzen 7 9700Xと同じパッケージで印刷のみの違い。いやひょっとするとRyzen 9 9950Xだけ少し豪華なパッケージになる可能性もあるが(過去にはそうだった)。

CPUそのものの外観(Photo03)は特に目立つ違いなどは無い(Photo03,04)。Windowsからも問題なく認識された(Photo05~08)。

  • Photo03: まぁ違ったら問題なのだが。ちなみにRyzen 5 9600X/Ryzen 7 9700Xもそうだが、生産年度は2023年なのに注意。

  • Photo04: 当然こちらも差は無し。

  • Photo05: CPU-Zにて。コア数12個。RevisionはやっぱりGNR-B0。

  • Photo06: ちゃんと24個の仮想CPUが認識されている。

  • Photo07: Ryzen 9 9950Xはコア数16個。

  • Photo08: こちらもちゃんと32個の仮想CPUが認識されている。

その他の環境は全て先のRyzen 5 9600XとRyzen 7 9700Xのレポートと同じである。表1にテスト環境を示すが、Ryzen 9 7950X/9900X/9950XとCore i9-14900Kが追加されただけである。テスト項目やテスト方法なども同じなので、今回Game Benchmarkにおける手順や設定については割愛する。

■表1
CPU ・Core i5-14600K
・Core i9-14900K
・Ryzen 5 7600X
・Ryzen 5 9600X
・Ryzen 7 7800X3D
・Ryzen 7 9700X
・Ryzen 9 7950X
・Ryzen 9 9900X
・Ryzen 9 9950X
M/B ASUS Prime Z690-A ASUS Prime X670E PRO-WIFI
BIOS Version 3603 Version 3014
Memory Corsair VENGEANCE CMK32GX5M2D6000Z36
DDR5-6000 CL36 16GB×2
Video ASUS TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GB
Radeon Software Adrenalin Edition 24.6.1 WHQL
Storage Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 11 Pro 日本語版 23H2 Build 22631.3880

一つだけ追記しておくと、Intelの側。BIOS SettingでIntel Default Profileに設定したという話は前回説明した通りだが、前回利用したCore i5-14600Kや今回追加したCore i9-14900KはMicrocode Updateを掛けていない。Intelは7月にMicrocode 0x125、今月に入ってMicrocode 0x129をリリースしたが、テストに利用したものはどちらのMicrocodeも利用していない、出荷時設定のままである。その点は注意されたい。

グラフ中の表記は

Core i5-14600K :i5-14600K
Ryzen 5 7600X :R5 7600X
Ryzen 5 9600X :R5 8600X
Ryzen 7 7800X3D:R7 7800X3D
Ryzen 7 9700X :R7 9700X
Ryzen 9 7950X :R9 7950X
Ryzen 9 9900X :R9 9900X
Ryzen 9 9950X :R9 9950X
Core i9-14900K :i9-14900K

となっている。また解像度表記も何時もの通り

2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel

としている。

◆CineBench R23(グラフ1)

CineBench R23
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench

  • グラフ1

Multi Coreの結果を見ると5/7グレードと9グレードで性能が見事に2倍になってるあたりはコア数の暴力だが、それはそれとしてRyzen 9 9950Xが見事に最高速の座を奪取している。それでいて消費電力は低い(CineBench R23の消費電力は測定していないが、R24の結果からも類推できる)のだから申し分ないというべきか。Ryzen 9 9900Xは微妙なところではあるが、それでも12コアでこれは悪くないと思う。またSingle Threadでも割と良い数字ではある。まぁそのSingle ThreadではCore i9-14900Kがなんとか最高速の座を維持しているが。

◆CineBench R24(グラフ2)

CineBench R24
Maxon
https://www.maxon.net/ja/cinebench

  • グラフ2

こちらも傾向は似たようなものである。ちなみにこちらは消費電力を測定している(後で出てくる)が、結果をまとめたのが表2・3である。絶対性能もさることながらその効率の高さが圧倒的と言って良いと思う。ちなみにAll Coreの場合、一番効率が高いのはRyzen 7 9700Xで、Ryzen 5 9600Xが続き、その次がRyzen 9 9900X。Ryzen 9 9950Xは4番手というあたりはむべなるかなとしか思えない。効率よりも絶対性能に振ったのだからこういう結果になるのは当然だし、それでもCore i9-14900KはもとよりRyzen 9 7950Xよりも効率が良いのは賞賛すべきだろう。まぁでもそれを言うと、Ryzen 7 7800X3Dというお化けも居るのだが(3D V-Cache搭載CPUが動作周波数を低めに設定しているのはやっぱり正しい方向だよな、と思ってしまう)。

■表2
CineBench R24 Mutli Cores Score 実効消費電力差(W) 効率(Score/W)
Ryzen 5 7600X 879 137.2 6.4
Ryzen 5 9600X 918 80.5 11.4
Core i5-14600K 1185 180.9 6.6
Ryzen 7 7800X3D 1109 89.8 12.3
Ryzen 7 9700X 1096 75.1 14.6
Ryzen 9 7950X 2084 249.0 8.4
Ryzen 9 9900X 1762 167.6 10.5
Ryzen 9 9950X 2196 228.4 9.6
Core i9-14900K 2084 271.6 7.7
■表3
CineBench R24 Single Cores Score 実効消費電力差(W) 効率(Score/W)
Ryzen 5 7600X 118 45.2 2.6
Ryzen 5 9600X 133 35.0 3.8
Core i5-14600K 121 49.5 2.4
Ryzen 7 7800X3D 112 23.8 4.7
Ryzen 7 9700X 134 28.1 4.8
Ryzen 9 7950X 121 58.6 2.1
Ryzen 9 9900X 136 47.3 2.9
Ryzen 9 9950X 138 49.2 2.8
Core i9-14900K 136 61.5 2.2

◆POV-Ray V3.8.2 Beta2(グラフ3)

POV-Ray V3.8.2 Beta2
Persistence of Vision Raytracer Pty. Ltd
http://www.povray.org/

  • グラフ3

当然POV-Rayも同じ傾向である。One CPUだとCore i5-14600K/Core i9-14900Kの性能が高めなのはNoise Function周りのカーネルの最適化によるもので、ところがAll CPUだとそうした差を覆す位にRyzen 9000系の性能が高いのは立派である。といってもRyzen 9 9900Xはやはりコア数の差は如何ともしがたいようだが。

◆TMPGEnc Video Mastering Works V7.0.33.33(グラフ4)

TMPGEnc Video Mastering Works V7.0.33.33
ペガシス
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

  • グラフ4

ちょっと意外だったのはこのTMPGEncにおいて、Ryzen 9 9900XがCore i9-14900Kに肉薄するスコアを出している事。16コアのRyzen 9 7950X/9950XがCore i9-14900Kを上回るスコアを出すのは想定内だったが、Ryzen 9 9900Xの健闘はちょっと意外だった。

Ryzen 9 7950X vs 9950Xという観点で言えば、性能向上は1割無い程度(6%前後)であるが、そもそもエンコード処理ではストレージ速度とかも絡んでくる話だけに、例えばRAMDiskとか作ってそこから読み出し/書き込みをすればもう少し差が出るかもしれないが、あまり現実的とは言えないだろう。逆にそうした手間を掛けなくても6%程度の性能向上が得られる、というのは割と大きな違いだと思う。