パナソニックホールディングスは、2024年度第1四半期(2024年4月~6月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比4.5%増の2兆1216億円、営業利益は7.3%減の837億円、調整後営業利益は9.2%減の843億円、税引前利益は3.7%減の1047億円、当期純利益は64.8%減の706億円となった。
パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「インダストリーおよびエナジーで、生成AI関連の販売が好調だったが、欧州でのA2W(エア・トゥ・ウォーター)や、中国家電事業が減販となったほか、車載電池の国内工場での需要減が継続したことがマイナス要因になった」とコメントした。
なお、米国IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)に関して、2023年度の補助金の大半を、第三者に権利を売却することを決定したことも発表した。権利売却に伴う資金化コストとして55億円を第1四半期に計上しており、第2四半期以降に資金化することになる。
「資金化の時期は、当初想定よりも約2年の前倒しになる。相手(米国企業)との巡りあわせがあり、経済的合理性が認められたため資金化することにした。IRA法案の今後の行方や、当社の資金繰りといった問題ではない。資金は、IRAの主旨にあわせて、米国におけるエネルギー対策に活用していく」と説明した。
第1四半期のセグメント別業績は、家電などを担当するくらし事業の売上高が前年同期比4%増の8680億円、調整後営業利益が164億円減の224億円となった。
くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比1%減の1975億円、調整後営業利益は51億円減の84億円。空質空調社の売上高は前年同期比15%増の2657億円、調整後営業利益は59億円減の63億円。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比12%増の1045億円、調整後営業利益は2億円減の52億円。エレクトリックワークス社の売上高は前年同期並の2312億円、調整後営業利益は19億円減の105億円。なお、中国・北東アジア社の売上高は前年同期比10%増の2269億円、調整後営業利益は31億円減の134億円となっている。
「インドの電材事業や国内外のショーケース事業、アジアや日本でのルームエアコンなどが増収になったが、欧州A2Wや中国家電が減収。とくにA2Wは、市況低迷が続いている。まだ回復基調には転じていないが、長期的には拡大が見込める市場である。また、A2Wは利益率が高いという特徴もある。将来を見据え、InnovaやTado゜などとの協業を進め、競争力の強化を図っていく。一方で、中国家電は、不動産不況が家電の販売に想定以上に影響が出ている」と振り返った。
オートモーティブの売上高は前年同期比7%増の3636億円、調整後営業利益が52億円増の108億円。一部商品の生産終了や、中国での販売不振、自動車メーカーの減産の影響があったという。
コネクトの売上高は前年同期比13%増の2979億円、調整後営業利益は13億円減の52億円。中国でのスマホ需要の回復基調を捉えたプロセスオートメーションが好調だったほか、現場ソリューションやアビオニクスの増販がブラスに働いたものの、メディアエンターテインメントの減販損のほか、アビオニクスの機内通信分野での先行開発投資や、Blue Yonderの戦略投資の増加により減益になった。
Blue Yonderは、為替影響を除いたスタンドアローンの調整後営業利益が前年同期比23億円減の13億円。連結ベースの調整後営業利益は同28億円減のマイナス52億円の赤字となった。なお、戦略投資およびシナジー投資を除く、実力値ベースの調整後営業利益は6億円増の56億円の黒字となっている。また、SaaS ARR (Annual Recurring Revenue)は前年同期比9%増、SaaS NRR (Net Revenue Retention)は101%となっている。
「Blue Yonderは、今後、立ち上げていくための戦略投資を行っている。ここにきて、営業人材の戦力化が図れており、第2四半期からはSaaS ARRが上向いてくると聞いている。また、Blue Yonderの契約は3年間が多く、買収前に契約した案件の更改時期が来ている。現経営陣によるプロダクトロードマップでは、ネイティブクラウドへの移行が示されており、既存顧客との契約の見直しも実施している。オンプレミスでの契約を減らしながら、SaaS比率を高めていく」としている。Blue Yonderの第1四半期のSaaS売上比率は、前年同期の44%から49%に高まっている。
インダストリーの売上高は前年同期比10%増の2745億円、調整後営業利益は144億円増の177億円。欧州および中国での産業用リレーの減販はあったが、生成AIサーバー向けや、ICT端末向け製品の増販が見られたという。
エナジーの売上高は前年同期比11%減の2119億円、調整後営業利益が85億円減の217億円。なお、IRA影響を除くと、売上高は前年同期比12%減の2320億円、調整後営業利益が39億円減の55億円となった。産業・民生は、生成AI市場が牽引して、データセンター向け蓄電システムが好調に推移。その一方で、車載電池は、国内工場の需要減が継続したほか、原材料価格の低下などに伴う価格改定があり、減収になった。また、北米では、テスラが製造ラインの改善を行ったため、それにあわせて、一時的な生産調整に対応。第1四半期は減産となった。「だが、足元ではIRA補助金の対象車種の増加もあり、需要は回復している。第2四半期以降は好調な販売を見込んでいる」とした。調整後営業利益は、和歌山工場およびカンザス工場の立ち上げ費用の増加に加えて、IRA補助金の第三者への権利売却に伴う資金化コストの計上により減益になっている。
その他/消去・調整は、売上高が1058億円、調整後営業利益が19億円減の65億円となった。ここに含まれるエンターテインメント&コミュニケーション、ハウジングはいずれも減収になった。
一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比1.2%増の8兆6000億円、営業利益は5.3%増の3800億円、調整後営業利益は15.4%増の4500億円、税引前利益は1.1%増の4300億円、当期純利益は30.2%減の3100億円としている。
なお、同社では、プロジェクター事業などの戦略的資本提携と新会社設立を発表した。
パナソニックコネクトのメディアエンターテインメント事業部を母体とする新会社を2025年4月1日に設立し、オリックスが80%を出資し、パナソニックコネクトが20%を出資する。譲渡金額は1185億円となり、得られた資金はパナソニックコネクトの成長領域に投資する。新会社には、プロジェクター事業およびフラットパネルディスプレイ事業が移管される。同事業における2023年度の売上実績は約770億円だったという。
新会社は、当面の間、パナソニックブランドを継続し、パナソニックを冠した社名が付けられる。また、日本国内においては、パナソニックコネクト 現場ソリューションカンパニーが販売機能を担当する。
梅田グループCFOは、「しばらくはパナソニックの商標を使うことになり、取引先に安心してもらうために20%を出資して関与する。パナソニックグループが持つ技術力や知見、顧客基盤と、オリックスが持つ投資力、多数の企業への事業投資を通じて培った知識と経験を活用することで、さらなる事業成長の実現を図る。プロジェクターは、バーチャルな演出、ソフトウェアや機器の高度化による投資が必要であり、今回は、ベストオーナーという観点から判断した。ハードウェアへの継続的な技術開発投資と、グローバルでの戦略的アライアンス構築など、非連続的な成長戦略が可能になる」と語った。
現在、フランス・パリで開催されているパリオリンピックにおいて、パナソニックの業務用プロジェクターが納入されており、競技会場で使われる演出用途としては過去最大数となる130台が使用されている。
梅田グループCFOは、「ポートフォリオマネジメントの基本姿勢は、パナソニックグループが目指す方向性に合致しているか、競争力があるのか、ベストオーナーなのかという点である。現在も、ポートフォリオマネジメントにおいて、様々な検討を行い、着実に進めている」とも語り、今後も継続的な事業再編を進めていく姿勢を強調している。