自転車のように漕いで有酸素運動ができるフィットネスバイクは、使い方もわかりやすく、ジムだけでなく家庭向けにも多くの製品が発売されているフィットネスマシンの代表的なジャンルのひとつです。

こういったマシンを自宅に導入できたらと考える人にとっては、やはり「ジムに行く時間がない」「忙しい」というのが大きな理由ではないかと思いますが、そういった意味では「空いた時間にいつでも気軽に始められる」ということに加えて、「運動中の時間を他のことにも有効活用できる」というメリットもあります。

  • FlexiSpotの「デスクバイク V9」(49,800円)。フィットネスバイクとデスクが融合した製品だ

    FlexiSpotの「デスクバイク V9」(49,800円)。フィットネスバイクとデスクが融合した製品だ

今回は、電動昇降デスクなどでも知られるFlexiSpotから「デスクバイク V9」という製品を借りて試してみました。普通のフィットネスバイクとは一味違う“ながら運動”に特化した作りになっており、特にテレワークをしている方とは相性が良さそうなアイデア商品でした。

組立は簡単、搬入・開封は大変?

今回は通常購入する場合と同様のパッケージでサンプルを自宅に送っていただいたのですが、まず想像以上の梱包サイズにびっくり。箱に書かれている梱包重量が38kg、製品本体の仕様上の重量が34.5kgということで、いずれにせよかなりの大物です。一般的に家庭向けの宅配便で送れる荷物は各社30kg制限なので、箱の外側には「重量超過」のラベルが貼られていました。

  • 組立が不要な代わりに一辺80cmほどの大きな箱で届くため、搬入経路は要チェック。重量物なので配達員任せではなく補助が必要なケースも

    組立が不要な代わりに一辺80cmほどの大きな箱で届くため、搬入経路は要チェック。重量物なので配達員任せではなく補助が必要なケースも

配達員さん1人ではまず持って上がれないサイズということで、階段のある筆者宅の場合はお手伝いが必要でした。置き配などは難しいと思うので、購入するタイミングや搬入経路の確認は慎重に。

いきなり検討中の方をおどかすような話から入ってしまいましたが、なぜこんなに大きいパッケージかというと、実はほぼ組立不要の状態で本体が丸ごと入っています。大変なのは家の中に運び入れて、家電製品によくある大きな発泡スチロールのトレイに収められた中身箱から引きずり出すまで。そこまで行けば後は簡単で、本体から四方に広がる脚の部分をカチッと音が鳴るまで広げ、デスクの天板をセットするだけで完成です。

  • 本体から四方に伸びる脚を展開し、デスクの天板を取り付けるだけで完成

    本体から四方に伸びる脚を展開し、デスクの天板を取り付けるだけで完成。なお、脚は収納時に折りたたむこともできるが、裏側にあるピンを探ってロックを解除する必要があるため、日常的に繰り返すほど手軽に畳めるとは言い難い

動作音は静か、配線不要でどこにでも設置できる

まずデスクバイクとして肝心な「バイク」の部分から評価していくと、トレーニングの記録や細かな設定ができるような高度なマシンではないものの、シンプルで使いやすいものです。

基本的には座って漕ぐだけ。足の間、ロードバイクで言えばトップチューブにあたる部分に、8段階で負荷を変えられるダイヤルが付いています。その上には簡易的なメーターがあり、運動時間/速度/走行距離/消費カロリー/総走行距離/ホイール回転速度を表示できます。

メーターに情報を表示させるには単3電池が2本必要ですが、不要なら電池を入れなくても使用でき、負荷調整も通常通り可能です。スマートウォッチで運動時間や心拍数などを記録しているから要らないという人や、暇な時にちょっと乗るだけで細かい情報は見ないという人であれば、メーター無しでシンプルに使うのも良いでしょう。

  • サドルに座ってデスクバイクを見下ろすと、負荷調整ダイヤルやメーター、ドリンクホルダーがある。ドリンクホルダーは振動防止のラバーマット付き

    サドルに座ってデスクバイクを見下ろすと、負荷調整ダイヤルやメーター、ドリンクホルダーがある。ドリンクホルダーは振動防止のラバーマット付き

こういった機器を自宅で使うとなると、特に集合住宅であれば騒音が気になるところです。スマートフォンのアプリで計測したところ、使用中の騒音値は50dBぐらい。自転車のようなチェーンはないため一定の単調な音が続くのみで、身近な物に例えると蛇口から水が流れているような音がします。音量・音質ともに気になりにくく、夜でもさほど制約なく使える程度だと感じました。

騒音以外にも、細かい部分で家の中で使いやすい工夫が光っています。開封直後には自転車そっくりのペダルを見て「あれ?これって靴履いてないと痛いんじゃない?」と疑問が浮かびましたが、ちゃんと裸足や靴下でも快適に漕げるゴム製のペダルカバーが付属していますし、「重力ブレーキキャスター」なるものが装備されているのも便利です。

  • ペダルは硬質な樹脂製で、一般的な自転車のものに近い。チェーンやギアの露出はなく、巻き込みや油汚れの心配なく部屋着で気軽に乗れる

    ペダルは硬質な樹脂製で、一般的な自転車のものに近い。チェーンやギアの露出はなく、巻き込みや油汚れの心配なく部屋着で気軽に乗れる

  • 付属のゴム製ペダルカバーを着けておけば、裸足や靴下でも痛くない

    付属のゴム製ペダルカバーを着けておけば、裸足や靴下でも痛くない

よくある手動でレバーを動かしてロックするタイプのキャスターではなく、人が乗って負荷がかかっている間は自動的にロックされ、降りると押して転がせるようになるキャスターが付いています。

それなりに設置スペースを取るので使わない時は部屋の隅に寄せておきたい人も多いでしょうから、運動前後の小さなハードルを取り除く工夫としては細かなところまでよく考えられているなと思いました。逆に、使用時にロックをかけ忘れて意図せず動いてしまうことがないのも安全ですね。

  • キャスターは体重がかかった時だけ自動でロックされる優れもの

    キャスターは体重がかかった時だけ自動でロックされる優れもの

しっかりした作りでデスク部分が使いやすい

デスクバイク V9という製品名が表すように、デスクとフィットネスバイクを融合させた製品だということが最大の特徴です。

天板の幅は59cmもあり、奥行きはパームレスト部分を除いた自由に使える部分だけで40cmほど。「運動中にスマホやタブレットを置いて動画を観られますよ」というようなちょっとしたスペースではなく、むしろ最低限の事務作業ができる広さの机にフィットネスバイクが付いているというぐらいに主従関係が逆転しています。

実際にノートパソコンを置いて仕事をしてみましたが、横にマウスを置いて操作したり、あるいは紙の資料を見ながら作業したりといったパソコン+αのスペースが十分に残されていました。

  • 天板の幅は最も広い部分で約59cm、奥行きはパームレスト部分を除いて約40cm

    天板の幅は最も広い部分で約59cm、奥行きはパームレスト部分を除いて約40cm。パームレストはしっかりと天板に固定されていて柔らかく、肘をついて前傾姿勢で漕げるほか、PCなどの落下防止にも一役買う

  • ノートパソコン(13.3インチ)を置いてみたところ。マウスを使ったり紙の資料を参照したりできる程度にはスペースに余裕がある

    ノートパソコン(13.3インチ)を置いてみたところ。マウスを使ったり紙の資料を参照したりできる程度にはスペースに余裕がある

サドルの高さ以外に、デスクの高さと前後方向の位置を調整できるようになっており、ながら作業ゆえのやりにくさを感じないベストポジションを取れます。

サドルの形状も工夫されており、自転車のようにペダルを回しやすくするための縦長形状ではなく、横長でどっかりと座らせる作りになっています。運動効率は多少落ちるかもしれませんが、あえて椅子寄りの形状にすることで、たとえば電話対応をしている時など運動を中断して一旦仕事に集中したい時でも、場所を変えずにそのまま座っていられます。

  • サドルの高さ、天板の高さ、天板の前後位置をそれぞれ調整できる。調整幅も数十cm取られており、ポジションの自由度は高い

    サドルの高さ、天板の高さ、天板の前後位置をそれぞれ調整できる。調整幅も数十cm取られており、ポジションの自由度は高い

  • サドルは自転車のような縦長ではなく、しっかり座れる大きめのサイズで横長の形状となっている

    サドルは自転車のような縦長ではなく、しっかり座れる大きめのサイズで横長の形状となっている

また、意外な活用法も見つかりました。これは各々の身長やセッティングにもよるかと思いますが、漕ぎながら使いやすい高さにデスクをセットしたまま降りると、反対側に立ってスタンディングデスクとして使ってもちょうどいいのです。

「フィットネスバイクを漕ぎながら作業する」というピンポイントな利用シーンに1m四方ほどのスペースを割くのには抵抗があるとしても、もう一役担えるとなれば少しハードルが下がるかも。別途普通のデスクもある前提で言えば、3通りの姿勢に変えながら作業できるのはなかなか快適です。

一般的な家庭用フィットネスバイクはシンプルなものであれば1万円台半ばからあり、記録やアプリ連携ができる高度な製品でも5~6万円程度といったところ。

単にフィットネスバイクとして見ればデスクバイク V9の49,800円という価格は相場から見るとやや高めに感じるかもしれませんが、実際に使ってみると、フィットネス器具ではなく昇降式デスクなどデスクワークの生産性を高めるための家具を本業とするFlexiSpotらしい考え方が見て取れます。テレワークの運動不足解消などにはもってこいの製品でしょう。

V9のほかに、オフィスチェアとフィットネスバイクを合体させた「フィットネスチェア V6」などのバリエーションもあるので、ご自身の環境に合うスタイルを探してみてはいかがでしょうか。