ワコムは2023年12月21日、YouTube公式チャンネルにて「ワコムオンラインセミナー【キャラの塗りを上達!】ののこ先生のイラスト講座【液タブ】」を開催。人気イラストレーター・ののこ先生が登場し、キャラクターの塗り方についてライブドローイングで解説しました。
のの子先生の塗りに注目
ワコムがYouTube公式チャンネルにて無料配信している人気コンテンツの「ワコムオンラインセミナー」。この日のゲスト講師、ののこ先生は東方project、ボーカロイドをメインにイラスト制作している人気イラストレーターです。
ライブで使われた機材は「Wacom Cintiq Pro 17」、ソフトは「CLIP STUDIO PAINT」。そして本セミナーのために、東方Projectの人気キャラ「霧雨魔理沙」の描き下ろしイラストが用意されました。
普段、のの子先生はイラスト作成にどのくらいの時間を要しているのでしょう? 冒頭、そんな質問には「仕事の内容にもよりますが、通常のイラストであればラフ、線画、下塗りで1日、背景に1日、キャラに1日くらいでしょうか」と回答します。
さてライブ配信に映し出された画面には、右上のウィンドウにナビゲーター、右下にカラーラフが表示されました。でもよく見ると、ナビゲーターは反転表示されている様子。なぜでしょう? この理由については「ずっと同じ向きで描いているとバランスの悪さに気が付かないことがあって。反転させると気付けるんですよ」とののこ先生。そして「pixivやX(旧Twitter)にアップすることを想定すると、ナビゲーターの小さな画面で常に小さい状態の見栄えを確認しておくことも大事だと思います」とも説明します。とはいえイラストの完成後、反転させていたことを忘れてそのままSNSにアップしてしまうことも時々あるんですが、と苦笑い。
「最初に顔が仕上がるとテンションが上がる」ということで、この日も瞳から塗り始めました。瞳孔を描き、虹彩を描き、ハイライトを入れて、光の反射を入れて...。色彩のコントラストを意識しながら描いている、と説明します。ここで視聴者からは「目の色の塗り方が参考になります」との書き込みも。
服の描写については「生地の厚み、柔らかさなど、立体的に描くのは難しいですよね」と、ののこ先生。アニメのようにべたっと塗らない、ぼかしブラシは使いすぎない、と気を付けるべきポイントをあげます。「ぼかしブラシは便利ですが、テクニックがないと、ただボヤけただけの絵になってしまいがちです。私も最初の頃、使いすぎていたので『しばらく封印した方が良いのでは?』と人からアドバイスされたことがありました」と打ち明けます。
視聴者からの「服の影色はどうしたら良いですか」という質問には「服にしろ肌にしろ、影色の選択って悩みますよね。私は『全体の色のトーン』を統一することを心がけています」と回答。具体的には、CLIP STUDIO PAINTのカラーサークルの中に表示されている正方形を4分割したときに、どの領域の色を使うか、1枚のイラストの中で決めておけば全体の色のトーンが統一できて良いのでは、とアドバイスします。そして「時と場合にもよりますが、個人的には黒はあまり使っていません。汚く、くすんで見えてしまうことがあるので」とも説明。
「仕事をする上で心がけていることは?」という問いかけには「無理をしないことですかね。何事もそうですが、やるべきことを詰め込みすぎると楽しくなくなって、絵を描くことが嫌になります。だから『これ以上やったら辛くなる』というボーダーを決めておいて、それ以上はしない。ほかのイラストレーターさんの中には睡眠時間を削っても仕事はこなせる人もたくさんいますが、私はゲームもしたいし、アニメも見たい。『描き続けること』を大事にしているので、あくまで楽しい範囲でやっていきたいと思います」。以前、やりたい仕事が来たときにスケジュールが埋まっており、お断りしたことがあって悔しかった、と苦笑いします。
「寝ないで描き続けられる人もいますが、すごいと思う。あれも才能。寝ること、ご飯を食べることは大事なので、私は仕事量を決めてやっています」(ののこ先生)
光を入れるときのテクニックについては「逆光のシチュエーションのとき、ギラっとさせたいときなどは、加算・発光で色を置いています。色数も増えるのでオススメです」。基本的にレイヤーはあまり使っていないそうで「細かくレイヤー分けすると、あとから探すのが面倒で。『帽子の赤』など、色ごとにレイヤーを分けるやり方をしています」と話します。
これに関連して、オーバーレイはどんなときに使うんですか、と聞かれると「先ほどの加算・発光は明るくするときに使いますが、オーバーレイは明るくも暗くもできるんです。逆光の構図で使うと、光がキャラクターの正面側まで回り込んで明るく照らしているような、そんな効果が得られます。前髪を透かせたいとき、あるいは肌が暗くなってしまったときにもオーバーレイを使うと良いですね。色味も変えられます。いつもは仕上げのときに使っています」。
髪をふわっと描くのは難しいのでは、という質問には「私は最初にシルエットを描いて、次に輪郭をとって、あとは辻褄が合うように線画を足していくスタイルで描いています」とコツを紹介。「最近のイラストでは、あまり髪は描き込まないのが流行りみたいですね」とも話します。
最後、舞い落ちる雪を描き足すなどしてイラスト作成は終盤に差し掛かりましたが、あと少しのところで配信終了の時刻に。ののこ先生は「緊張しましたが、コメントもいただけて嬉しかったです」と話し、視聴者からは「すごい勉強になりました」「感動しました」といった声が寄せられました。ちなみにイラストは配信後に完成し、昨年のクリスマスイブの日に先生のX(旧Twitter)公式アカウントで公開されています。