今週はWindowsではなく、一般法人向けMicrosoft 365の話題を取り上げたい。Microsoft 365で別途契約できるOneDrive for Business(Plan 2)は、月額約1,000円で無制限のクラウドストレージを使用できた。ただし、サブスクリプションユーザーが5名以上という条件があり、5TB以上はMicrosoftサポートへの連絡を要するなど煩雑な面もある。筆者も最終的には自宅兼仕事場のNASと、OneDrive for BusinessのファイルオンデマンドでPC周りを取り回そうと考えていたが、当てが外れてしまった。

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Microsoftのクラウドストレージ方針変更は、これが初めてではない。2015年には個人・家族向けOffice 365の特典だった容量無制限を廃止。当時の日本マイクロソフトは「大容量のファイルをアップロードするユーザーがいた」と変更理由を説明していた。利用者の「自由・無限に使いたい」という意見も理解できるが、営利企業の立場を考慮すれば致し方ないだろう。今回、OneDrive for Businessの仕様変更と同じタイミングで、Dropbox Advancedも無制限プランを発表をした。クラウドストレージビジネスの難しさを考えさせられる。

もう一つは、EU(欧州連合)におけるMicrosoft Teamsのバンドル終了だ。Microsoftの発表によれば、2023年10月1日以降はMicrosoft TeamsなしのMicrosoft 365/Office 365と、独自のスタンドアロンサービスとしてMicrosoft Teamsを購入できるという。これはMicrosoftがEUのいわゆる独禁法に違反している可能性を調査という、欧州委員会の判断を受けてのもの。この点に特別な意見はなく、余談だが、iPhoneのUSB Type-C対応(とのウワサ)は1人の利用者として歓迎したい。

このような判断は、過去のWindowsからWindows Media Playerを取り除いた「Edition N」を連想させる。背景には、Windowsの市場優位性によ標準アプリの存在が、ユーザーが用いるアプリをMicrosoft製にうながし、欧州連合競争法に抵触するとの懸念があった。確かWindows Vistaの時代に、日本マイクロソフトへ取材した際、標準アプリの完成度が低い旨を質問したところ、担当者は「サードパーティーメーカーの開発をうながす」意味合いがあると述べていた。

長年ITに関わっている読者諸氏は、米国司法省がIBMを独占禁止法違反の疑いで起訴した約13年におよぶ調査を思い出すのではないだろうか。Microsoftに代表される巨大企業に多方面への進出を躊躇(ちゅうちょ)させる一方で、ソフトウェア産業の隆盛をうながした利点もあり、その善し悪しは視点によって異なるはず。

Microsoft Teamsが必要か否かは企業ごとに異なり、1ライセンスしか契約していない筆者も最近は使用頻度が減ってきた。あくまで個人的な感覚だが、オンライン発表会もZoomウェビナーが大半。Microsoft Teamsやほかのオンライン会議ツールを使用する機会は月に数回まで減少したように感じる。この数年、Microsoftはコロナ禍を背景にMicrosoft Teamsに注力しているが、今後いかなる施策で市場占有率を狙っていくのか、戦略に関心が集まるだろう。