イヤホンといえばワイヤレスが当たり前になりつつあるなか、音質やノイズキャンセリングなどの性能競争とは別軸で独自の魅力を打ち出す機種も増えています。特に、「ながら聴き」というコンセプトは最近よく見かけるようになりました。

代表的なものではソニーの穴あきイヤホン「LinkBuds」やNTTソノリティの「nwm」など、従来のイヤホンでは当たり前だった「音楽を聴きたい時に着ける」「没入感を高める」といった発想から転換し、「着けっぱなしにしておいて、外界の音もスマホからの音もシームレスに聴ける」という、誰もがSNSや動画メディアに日常的に触れ続けている時代ならではのイヤホンのあり方がじわじわと広まっています。

  • GLIDiC(SB C&S)の“ながら聴き”特化ワイヤレスイヤホン「mameBuds」。希望小売価格は9,980円

    GLIDiC(SB C&S)の“ながら聴き”特化ワイヤレスイヤホン「mameBuds」。希望小売価格は9,980円

今回紹介する「mameBuds」(マメバッズ)も、「ながら聴き」というトレンドを汲んだ完全ワイヤレスイヤホンです。

SB C&Sの「GLIDiC」ブランドから7月14日に発売され、直販価格は9,980円。先述の2製品のようにエポックメイキングな技術を用いたものではなく、一般的なイヤホンに近い構成としながら本体形状などの工夫によって「ながら聴き」向けに仕上げた製品なので、このジャンルとしては比較的手に取りやすい価格といえます。

また、ながら聴き以外の使い方でもうれしいコンパクトさや、着せ替えギミックによるファッション性の高さも大きな魅力です。今回は本体2色・カラージャケット6色すべてのサンプルを入手できたので、まずはポップな外観からチェックしていきましょう。

  • 本体は2色展開で、それぞれ装着済のものを含めて3種ずつカラージャケットが付属する

    本体は2色展開で、それぞれ装着済のものを含めて3種ずつカラージャケットが付属する

mameBuds本体はブラックとホワイトの2色展開。ブラックにはkuro、lemon(黄色)、suna(ベージュ)、ホワイトにはyuki(白)、fuji(紫)、sakura(ピンク)とカラージャケットが3色ずつ付属します。

音が出る内側の面を除いてほぼ全体がカラージャケットに覆われるため、着せ替えるとまったく別のイヤホンのように見た目の印象が変わります。また、カラージャケットは柔らかなシリコーン素材のため耳当たりも優しく、長時間着けっぱなしでも不快感は少ないです。丸ごと外してお掃除できるので衛生的でもあります。

  • イヤホン本体の外側全体が着せ替えジャケットとなっており、引っ張れば簡単に外せる

    イヤホン本体の外側全体が着せ替えジャケットとなっており、引っ張れば簡単に外せる

  • 左右で別々の色を組み合わせてみた。カラージャケットの単品販売もあれば着せ替えギミックの魅力が増しそうだ

    左右で別々の色を組み合わせてみた。カラージャケットの単品販売もあれば着せ替えギミックの魅力が増しそうだ

ベーシックな白黒以外は明るい印象のパステルカラーが揃っており、たとえば通勤時や休日のお出かけなどオンオフで選んでみても気分が上がりそう。あるいは、最近はアイドルから二次元コンテンツまでメンバーカラーやイメージカラーのあるジャンルが増えていますから、“推し色”を選ぶのも良いかもしれませんね。

ただし、今回は撮影用として全色揃った状態でお見せしていますが、実際の購入時には3色ずつの組み合わせで固定されており、せっかくの着せ替えの幅が狭まってしまっているのは惜しい点。ぜひともカラージャケットの単品販売、欲を言えば追加カラーの登場も期待したいところです。

  • ブラックにはkuro、lemon(黄色)、suna(ベージュ)、ホワイトにはyuki(白)、fuji(紫)、sakura(ピンク)のカラージャケットが付属する

    ブラックにはkuro、lemon(黄色)、suna(ベージュ)、ホワイトにはyuki(白)、fuji(紫)、sakura(ピンク)のカラージャケットが付属する

ながら聴きのためのイヤホンとして特に重要なのは、「着けっぱなしでも周りの音が聴こえること」「着けっぱなしでも負担にならない装着感」の2点です。

このためにリング型ドライバーや骨伝導式など各社さまざまな工夫を凝らしているわけですが、mameBudsのアプローチは極めてシンプル。イヤーピースを耳の奥まで入れるカナル型ではなく、耳穴を密閉しないオープン型を採用し、他のオープン型イヤホンと比べてもコンパクトなボディとすることで、あえてすき間が多く宙に浮くような状態を作り出しています。

実際にmameBudsを着けて作業しながら屋外を歩いてみたり、オフィスで作業してみたりしましたが、周囲の話し声や自分のタイピング音はイヤホンを着けていない時とほぼ変わらないぐらい、素通しで聴こえてきます。高価な特殊設計のイヤホンでなくとも、シンプルな工夫でここまで「ながら聴き」のコンセプトを具現化できるのかという点ではかえって新鮮な驚きがありました。

  • カナル型ではなくオープン型(開放型)を採用。特殊な機構は採用せずあくまで形状の工夫によるものだが、予想以上にうまく“ながら聴き”できるちょうどいい外音の入り具合になっている

    カナル型ではなくオープン型(開放型)を採用。特殊な機構は採用せずあくまで形状の工夫によるものだが、予想以上にうまく“ながら聴き”できるちょうどいい外音の入り具合になっている

もっとも、それはかなり慎重に音もれに配慮する必要があることの裏返しでもあります。特殊な仕組みで開放感と自分にだけ音が伝わる指向性を両立させているような高級機とは違うので、たとえば電車内で周囲に迷惑をかけずに音楽をしっかり聴けるだけの音量を得るのは難しいでしょう。

小型軽量であること、あえて密閉しない作りになっていること、そして先述のようにシリコン素材のカバーで全体が覆われていることの3点が相まって、長時間着けていても耳が痛くなったり蒸れたりすることはほぼなく、軽やかな装着感が好印象でした。

あまり意識せずイヤホンを着けっぱなしにしておけるので、ふとSNSのタイムラインに流れてきた動画を開いたり、電話に出たりといった場面でガサゴソとイヤホンを取り出さなくてもサッと対応できるのは快適でした。もちろん、個室など音もれの気にならない環境ならBGMを流しておくのも良いでしょう。

耳からあまりはみ出さない形状・サイズのため、寝転びながら使ってみても圧迫感はありません。耳の形状にもよるでしょうが、装着感の軽さからのイメージに反して、横になってもポロッと外れ落ちてしまうことは少なかったです。

また、イヤホン本体だけでなく充電ケースも非常にコンパクトです。コインポケットなどに入れて気軽に持ち出せますし、しっかり音楽を聴くためのイヤホンとは別に、サブで持っておいても負担にならないサイズなので使い方が広がります。

  • 本体重量は片側3.5g、ケースサイズは約49×24×28mmと、いずれもコンパクト

    本体重量は片側3.5g、ケースサイズは約49×24×28mmと、いずれもコンパクト。また、IPX4相当の防水性があり、着けっぱなしで多少汗をかく程度なら問題ない

「ながら聴き」特化のイヤホンは、一度体験してみないと価値がわかりにくいものの、構造の特殊さゆえに高価でお試し感覚では手を出しにくい製品が多い一面もあります。1万円以下で買えるmameBudsなら、ながら聴き入門機としてはうってつけでしょう。

ながら聴きという文脈を抜きにしても、耳の小さい方やイヤホンで耳が痛くなりやすい方でも着けやすそうな構造や着せ替えギミックなどおすすめできる部分は多く、個性的なワイヤレスイヤホンをお探しなら検討してみる価値はある製品です。

  • スマートフォンと並べてもこの小ささ。胸ポケットどころかズボンのコインポケットにも入れておけるサイズだ

    スマートフォンと並べてもこの小ささ。胸ポケットどころかズボンのコインポケットにも入れておけるサイズだ

  • イマドキの製品らしく、パッケージは再生紙を用いた環境配慮型となっている

    イマドキの製品らしく、パッケージは再生紙を用いた環境配慮型となっている