タイガー魔法瓶(以下、タイガー)のフラッグシップ炊飯器は、内釜に本物の「土鍋」を使っている点が特徴です。そんな「土鍋ご包火炊き」シリーズに、最上位となる新製品「土鍋ご泡火炊き JRXシリーズ」(JRX-T100、JRX-T060)が登場します。

発売は7月21日の予定、価格はオープン、推定市場価格は5.5合炊きのJRX-T100が148,500円前後、3.5合炊きのJRX-T060が137,500円前後です。10万円を超えるプレミアム機種の小容量(3.5合炊き)というのは業界初(タイガー調べ)。

大きな見どころは、IHコイルを増やすことによる一層の大火力化と、豊富な炊きわけ機能です。土鍋ご包火炊きシリーズはもともと「ごはんが美味しい」と評価の高い炊飯器でしたが、この進化で味はどうなったのか、ごはん好きとしてはとっても気になるところ。さっそく、JRX-T100・JRX-T060の実機をチェックしつつ、炊いたごはんを試食してきました。

  • 土鍋ご泡火炊き JRXシリーズが目指しているのは「一流料亭のごはん」。今回の試食会では、ごはんと一緒に加賀の料亭「つば甚」の料理も提供されました

300℃の高温でより「かまど」に近い炊き上がり

JRX-T100・JRX-T060はさまざまな機能が進化していますが、もっとも大きいのは火力アップ。IH炊飯器は「IHコイル」から磁力線を放出し、この磁力線が鍋の金属部を通過する電気抵抗で鍋自体が発熱する仕組みです。JRX-T100・JRX-T060は、IHコイルの量が従来モデルの1.6倍まで増え、さらにコイルの形状も大きく変わりました。これにより、最高炊飯温度はタイガー史上最高という約300℃まで高くなっています。

  • 左が従来モデルのIHコイル、右が新モデル(JRX-T100・JRX-T060)のコイルです。外からではわかりにくいのですが、中央のコイルは一部が上下2段に重なっています。また、従来モデルに見られる側面と中央間の隙間もほとんどなくなり、熱ムラが出にくくなりました

  • 内釜は三重県の「萬古焼き」を採用。ただし、そのままだとIHに反応しないため、釜の下側(約3分の1のエリア)に特殊コーティングを施しています。JRX-T100・JRX-T060はこのコーティングに含有する銀の量を約14%アップし、よりIHで発熱しやすくなりました

ただし、火力が強いだけの炊飯器は、炊飯時に米同士がぶつかってお米が傷つくことも。こうなると、お米の傷から水分が入り過ぎてごはん表面がふやけたり、ハリのない炊き上がりになったりすることがあります。

タイガーの土鍋内釜は、土鍋表面の自然な凹凸が沸騰時に小さな泡を生み出します。この泡がお米を包み込むことでお米同士がぶつかって傷つくことを防ぐというわけ。

  • JRX-T100の内釜。表面に土鍋特有の細かな凹凸があります。土鍋というと割れが心配ですが、一般的な土鍋の2倍以上という強度があるそうです。しかも、内釜のみ3年間の保証が付いています

さて、わくわくしながら試食したのは、山形県産「つや姫」。炊き上がったごはんを見たときの第一印象は、名前の通りツヤがある! お米に傷が付きにくい土鍋炊飯だからか、ごはん表面が全体的に滑らかでツヤッとしています。

口に含むと、ハリと弾力のある粒感のあとに、お米の爽やかな香りが。ごはんをかみしめると強い甘みと旨みが広がり、ごはんだけでも美味しく食べられそうです。最初の一口は「味が濃厚」と感じましたが、繊細な香りの料理と一緒に食べても、料理のジャマをしないのも印象的でした。

  • 炊き上がり後、炊飯器のフタを開けたところ。お米の表面がツヤツヤ! 一粒一粒がしっかりと主張しているのがわかりますね

  • ごはんそのままでも味が濃くて美味しいのですが、加賀の料亭「つば甚」による料理と試食すると、また異なる味わい。写真は赤烏賊香味漬けを乗せたもの。ごはんの旨みが繊細な味の副菜をしっかりと包み込んでくれます

銘柄炊きわけがさらに充実、「コシヒカリ」でもこんなに違う!

各メーカーがラインナップしている高機能炊飯器の多くは、お米の銘柄によって炊飯プログラムを調整する機能を備えています。もちろんJRX-T100・JRX-T060も「銘柄炊きわけ」を搭載。70種類の銘柄に合わせた炊飯が可能です。

また、お米の銘柄が同じでも、生産する土地の土・水・気候によってお米の状態は変わります。JRX-T100・JRX-T060では、たとえば人気のコシヒカリはなんと、東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州沖縄という6エリアで炊き分けられる「産地炊き」に対応しました。

実際のところ、そんなに味が変わるもの? この疑問に答えるため、体験会では山形県・石川県・佐賀県のコシヒカリを炊き分けたものを試食できました。

どれも同じ水分量で炊いていますが、味も見た目も食感も、驚くほど違っていてびっくり。タイガーによると、産地炊きではそれぞれの個性が際立つように炊飯プログラムを調整しているそうです。

  • 山形県高畠町の「遠藤五一コシヒカリ」。今回食べた3種類のなかで、一番「自分が知っているコシヒカリ」でした。ハリのある食感と、甘みの強い「これぞゴハン!」という間違いのない味

  • 石川県の「えちゃけなコシヒカリ」。モチモチとした少し柔らかめの食感。香りと甘み、旨みはしっかりありますが、それぞれ主張し過ぎずバランスが優秀です。満腹でもスッと喉を通ります(これってヤバイ)。全体的に優しい味と食感です

  • 佐賀県唐津市巌木町の「天川コシヒカリ」。3種類のなかでもっとも弾力があって、ごはん独特の香りや旨みが強く感じられました。一言でいえば「個性が強いごはん」ですが、個人的に一番気に入ったのはコレ

日本では8月末ごろから新米が収穫され始めますが、新米は水分量が多いため炊飯にコツがあります。JRX-T100・JRX-T060はフラッグシップモデルということで、スマートフォンと連携するIoT機能も装備。新米の時期は新米に合わせた特別炊飯プログラム「新米誉れ炊き」が配信される予定です。

従来モデルから本体デザインに大きな変更はありませんが、本体前面に新しく「エモーショナルランプ」を設けました。このランプは、炊飯時に赤、保温時にオレンジ、予約時に緑色で点灯するため、遠くからでも炊飯器の状態が一目でわかります。

  • フタの境目部分がフワッと優しく光る「エモーショナルランプ」。写真は保温時のオレンジ点灯です

JRX-T100・JRX-T060を見て「現行モデルとあんまり変わっていない?」などと思った筆者ですが、JRX-T100・JRX-T060は炊飯器の心臓部であるIH部分を大きく改良。ごはんの甘みや旨みは従来モデルより強くなりました。銘柄だけでなく、産地やその年の新米に合わせた炊き分け機能など、とにかく「お米」に対するタイガーの本気が伝わってくる製品です。