NVIDIAとAMD、GPUの2大巨頭は2023年5月末、ほぼ同じタイミングでフルHD解像度でのゲームプレイをターゲットにしたミドルレンジGPUを投入した。NVIDIAは「GeForce RTX 4060 Ti」、AMDは「Radeon RX 7600」だ。そこで、今回は発売されたばかりのストリートファイター6やディアブロIVを含めた最新&人気ゲーム10本でベンチマークを実行。どちらが自分の目的にマッチしたGPUなのか参考になれば幸いだ。
スペックに共通点は多いが価格に差
まずは、スペックに軽く触れておこう。それぞれ詳しくは「「GeForce RTX 4060 Ti」(8GB版)の実力を徹底検証 - RTX 3070と同クラスで圧倒的な省電力!」、「「Radeon RX 7600」を試す - 価格/性能比が圧倒的? 2Kゲームなら最優GPU候補」で確認してほしい。
GPU名 | RTX 4060(8GB版) | RX 7600 |
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コア数 | 4,352(CUDA) | 2,048(SP) |
ブーストクロック | 2535MHz | 2635MHz |
メモリサイズ | GDDR6 8GB | GDDR6 8GB |
メモリバス幅 | 128bit | 128bit |
アーキテクチャ | Ada Lovelace | RDNA 3 |
PCI Express | Gen 4 x8 | Gen 4 x8 |
カード電力 (W) | 160 | 165 |
電源コネクタ | 8ピン×1または300W以上の12VHPWR×1 | 8ピン×1 |
コア数に関してはアーキテクチャがそもそも異なるので比較には使えないが、メモリの容量やメモリバス幅、インタフェースは共通、カード電力はRTX 4060 Tiが160W、RX 7600が165Wとスペック上は近くなっている。
ただ、大きく異なるのは価格帯だ。RTX 4060 Tiは最安クラスで6万円前後、RX 7600は4万3,000円前後と1万7,000円前後も差がある。ベンチマークテストの結果は、この価格差も加味して見てほしい。
人気、最新ゲームを中心に10タイトルでテスト
ここからはさっそくベンチマークに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。CPUのパワーリミットは無制限に設定。RTX 4060 Tiのドライバは「Game Ready 535.98」、RX 7600は「Adrenalin 23.5.1」を使用している。今回はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を導入しているので、ゲーム系のベンチマークではカード単体の消費電力も合わせて掲載。消費電力の差にも注目してほしい。
また、どちらもフルHDでのゲームプレイをターゲットにしたGPUであるため、フレームレートの測定はフルHDとWQHDの2種類とし、4Kは除外した。
【検証環境】 | |
CPU | Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド) |
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マザーボード | MSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z790) |
メモリ | Kingston FURY Beast DDR5 KF556C36BBEK2-32(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2) |
システムSSD | Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition、AMD Radeon RX 7600リファレンスカード |
CPUクーラー | Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス) |
電源 | Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(22H2) |
まずは、実ゲームの前に3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」での差を見てみよう。
Fire StrikeではRTX 4060 Tiが約1.1倍、Time Spyが約1.2倍上程度と大きな差にはなっていないが、レイトレーシングが絡むPort Royalだと約1.47倍、Speed Wayで約1.63倍もスコアが上。Radeonシリーズのレイトレーシングでの弱さが出てしまっている。
次は、実際のゲームを試していこう。まずは、多くの人が気になるであろう最新ゲームから「ディアブロIV」と「ストリートファイター6」を用意した。ディアブロIVは、キヨヴァシャド周辺の一定コースを移動した際のフレームレート、ストリートファイター6」はCPU同士の対戦を実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。
ディアブロIVは最高画質設定のウルトラにしても、どちらのカードもWQHDまで快適なプレイの目安と言える平均60fps以上をクリア。このクラスのGPUで快適遊べるゲームと言ってよいだろう。消費電力で見るとRTX 4060 Tiのほうがフレームレートが上回りながら30Wも少ないと、ワットパフォーマンスでは圧勝している。しかし、1フレームあたりのかかるコスト(フルHD時)をRTX 4060 Tiは6万円、RX 7600は4万3,000円で計算すると違った側面が見えてくる。RTX 4060 Tiは1フレームあたり約365.8円、RX 7600は約346.7円とコストパフォーマンスではRX 7600のほうが優位だ。
ストリートファイター6は、120fpsまで設定できるが対戦時は最大60fpsまで。どちらのGPUもWQHDまでなら、ほぼ最大fpsが出ている。ただし、RTX 4060 TiのフルHDは消費電力がわずか41.9W。RT 7600は98.5Wなので50W差以上と、ワットパフォーマンスの強さがここでも発揮されている。
続いて、レイトレーシング対応しない軽量から中量級のゲームとして「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「オーバーウォッチ 2」を試してみよう。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ 2はBotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。
レインボーシックス シージ、Apex Legend、オーバーウォッチ 2ともの傾向はディアブロIVと同じだ。フレームレートとワットパフォーマンスではRTX 4060 Tiが上、コストパフォーマンス見るとRX 7600という関係だ。あとは、どこまでのフレームレートを求めるで選ぶGPUが決まると言ってよいだろう。Apex Legendsを240Hzなどの高リフレッシュレート液晶の性能を活かし切れる性能が欲しいとなればRTX 4060 Tiになり、144Hzのリフレッシュレート液晶と組み合わせるならRX 7600でも十分だ。