JBLブランドのパーティースピーカー「JBL PartyBox 710」の日本導入に向けたクラウドファンディングプロジェクトが、GREEN FUNDINGで6月15日にスタートした。支援募集開始に先がけて、実機のサウンドを確かめることができたので、そのインプレッションをお届けする。

  • JBL PartyBox 710を2本並べたところ

今回のクラウドファンディング実施期間は6月15日から9月30日までの予定。期間中は「実機を試してから支援したい」という人のために、東京・世田谷にある二子玉川 蔦屋家電内「蔦屋家電+」で実機展示が行われる。

  • JBL PartyBox 710の隣に人が並んで立ったときのサイズ感はこんな感じ。全高905mmで、成人男性の腰くらいの高さになる

  • JBL PartyBox 710の実機を、二子玉川 蔦屋家電で展示中。実際にサウンドや使い勝手を体験してからプロジェクトに参加することもできる

一般販売の時期は未定だが、99,900円での販売を予定。クラウドファンディングではリターンプランの一例として、先着75個限定で18%オフの「Super Early Bird」(74,538円)や、先着150個限定で17%オフになる「Early Bird」(75,447円)のほか、SNSで共同購入する“シェア買い”ユーザーをターゲットにした2個セットプランも用意。プロジェクト成立後、支援者には10月より順次発送予定だ。

  • リターンプランの一例

JBLでは、迫力サウンドとカラフルなLEDライティングを特徴とするパーティースピーカー「PartyBox」シリーズを展開しており、欧州を中心に人気を集めているという。国内市場でもこれまでに、シリーズ最小の100W出力「Partybox Encore Essential」(直販38,500円)、160W出力の「Partybox 110」(同60,500円)、240W出力の「Partybox 310」(同79,200円)をラインナップ。2019年の国内導入以降、コロナ禍にもかかわらずこの4年で販売台数は6.3倍まで成長しているとのこと。

  • JBL PartyBoxシリーズが集結。(左から)Partybox Encore Essential、Partybox 110、Partybox 310、今回の新機種PartyBox 710

最上位機となる新機種のPartyBox 710では、持ち運んでどこでも使える利便性のために内蔵していたバッテリーをあえて排除。従来機種の3倍以上となる800Wもの大出力アンプを搭載し、独自設計の20cm径ウーファー×2基と7cm径ツイーター×2基の組み合わせで大迫力サウンドを実現している。

  • PartyBox 710の概要

  • 後述のように、音楽をワイヤレス再生するだけでなく、マイクやギターの音声を入力して簡易なPA機器としても活用できる

「バッテリーをなくすとどんなメリットがあるのだろう?」と思ってしまうが、 従来機種よりも搭載できるスピーカードライバーの口径の自由度が上がるほか、一般的なコンセントにつなぐAC電源に対応することで、バッテリー駆動時より安定して電流を供給できるといったメリットがあるという。

たとえばバッテリー残量が少ないとき、急に大音量や低音が入力されるとスピーカーからの音がボワついてしまうが、AC電源による太い電流供給があれば常に安定したサウンドパワーを発揮できるとする。さらにバッテリーをなくすことで回路の最短化を図り、不要パーツも排除できるため、音の純度が上がるとのこと。

PartyBox 710を使うには別途電源が必要で、市販のポータブル電源などと組み合わせればアウトドア活用も可能だ。本体はIPX4の防水仕様で、小雨やちょっとした水しぶきには対応できる。ただし、背面にあるケーブルポートを開けると部分的に水が浸入してしまうおそれもあるため、設置場所は慎重に選んだほうが良さそうだ。

  • 電源端子はメガネ型のACインレット。蓋を閉じると防水性を確保できる

スピーカードライバーの振動板素材には、JBLの業務用製品でも採用例があるパルプコーンを使用。総合出力800Wのアンプは、中低域用に250W×2、高域用150W×2の独立4ch構成となっており、デジタル信号処理フィルター(FIRフィルター・IIRフィルター)を使い分けることで正確なクロスオーバーを追求。見た目は派手だが、中身はきわめて真面目な音作りとなっている。周波数特性は35Hz~20kHz。

  • 独自設計の20cm径ウーファー×2基を搭載

  • 7cm径ツイーター×2基も装備する

  • 背面にバスレフポートを備える

実機を使い、短時間ながらダンスミュージックや歌モノなど数曲を聴いてみた。スピーカーに近い位置で聴いていると量感ある低音がグワッと胸に迫り、ド迫力のサウンドにとにかく圧倒される。“怪物級の大出力”とうたうだけあって、そのパワフルさは本物だ。JBLのポータブルスピーカーを使っているユーザーにはおなじみだと思うが、電源オン/オフやワイヤレス機器との接続時のサウンドエフェクトも力強く鳴らしてくれるので、思わずニヤッとしてしまった。

  • 横倒しにして横置きすることも可能。本体の各部に設置用のラバー部品を備えている

大迫力といっても、ただ勢いに任せて音楽を鳴らしているわけではない。ドラムやベース、打ち込みトラックなど低音の鳴り方にはキレがあるし、ボーカルの力強さやクリアさも負けておらず、低域に埋もれてしまうこともない。迫力あるサウンドの中にも、多くの情報量が含まれていることが分かる。

  • 横置きにしてサイドから見るとこんな感じ。少し上向きに角度を付けて置ける

今回の試聴場所は蔦屋家電内に設えた30人ほどが入れそうなスペースだったが、デモ再生中はまるでコンパクトなライブハウスにいるような感覚を味わえた。なんといってもパーティースピーカーなので、じっくり耳を傾けて聴く使い方というよりはリズムに任せた自然と体を動かす、そんな楽しい音楽体験に向いたスピーカーだ。

  • JBLプロのPAスピーカー「EON ONE MK2」と主な仕様を比べたところ。同製品は最大1,500Wとさらに大出力で、アーティストが現場で活用できるようマイク入力を5系統備えるなど本格的な仕様となっている。こうしたJBLプロの技術力を、Partybox 710にも活かしているそうだ

  • EON ONE MK2の実機も体験会場に置かれていた

PartyBoxシリーズならではのLEDライティング機能も装備。計172基のLEDとストロボを内蔵しており、ウーファーの外周を囲みながら8の字を描くリングライトのほか、本体上部から前面を照らすストロボライト、星の瞬きのように光を放つスターリーライト、両端を線状に彩るライトなど、多彩な発光部を備えているのがユニークだ。これらを連携させ、聴いている音楽のビートにあわせたユニークなライティング演出を楽しめる。従来機種と比べて本体前面を彩る光のウェーブ感や解像感が高いため、思わず見入ってしまう。

発光部の内訳は以下の通り。

  • インフィニティライト:LED 64基(ウーファー外周を含む8の字型で配置)
  • ダイナミックストロボライト:LED 8基(上下各4基ずつ)
  • スターリーライト:LED 16基(ランダム配置)
  • デュアルストライプライト:LED 84基(左右各42基)
  • LEDライティング機能の概要

ライトショー機能は既存のPartyBoxシリーズと同様に、モバイルデバイス向け「JBL PARTYBOX」アプリでカスタマイズ可能。65,536色のカラーパレットから発光色を変えたり、発光パターンを選んだりして好みの演出ができる。また、“ホーン”や“拍手”といった9種類のサウンドエフェクトで合いの手を入れるなど、場を盛り上げる機能も備えている。

  • JBL PARTYBOXアプリの画面。PartyBox 710の上面にはくぼみを設けており、そこにタブレットやスマホを置ける

Bluetooth 5.1準拠で、対応コーデックはSBC。TWSモードで同じ機種を2台接続すると、ワイヤレスでステレオ再生もできる。同型機を有線で接続するデイジーチェーン接続でさらに多くのスピーカーを連結・増設することもできる。

  • 複数台の増設にも対応

  • TWSモードで2台のPartyBox 710をワイヤレス接続し、ステレオ再生しているところ

音声入力ではほかにも、6.3mm標準のマイクとギター入力を各1系統装備し、再生している音楽に合わせてカラオケを楽しんだり、小規模なイベントMC用の機材として活用したりと、簡易なPA機器のニーズにも対応可能だ。USB端子も装備し、別途用意したUSBメモリー内の音楽を聴ける。

  • 背面のインタフェース

本体上面には、音量調節ノブやゲイン調節などを装備。また、大型ハンドルと滑らかなホイールによって移動時もストレスフリーな設計とした。本体サイズは399×436×905mm(幅×奥行き×高さ)、重さは約27.8kg。電源ケーブル(2m)が付属する。

  • 上面に音量調節ノブやゲイン調節などを装備

  • 本体背面

  • 本体下部のホイール

クラウドファンディング開始に先がけて、メディア向けに開催された体験会では、ジャズやソウルミュージックをバックグラウンドに持つシンガーソングライター、Hanah Spring(ハナ・スプリング)さんが登場。PartyBox 710とギター、マイクをつないで弾き語りを披露し、パワフルなサウンドだけでなくギター演奏で弦をつま弾くときや、歌い出しのときのブレスといった繊細な音を聴かせられる高い実力を持っていることをアピールしていた。

なお、Hanah Springさんは7月1日、ビルボードライブ横浜で最新アルバム「SOZO」を引っさげてのライブを開催予定とのこと。

  • PartyBox 710で弾き語りを披露するHanah Springさん

JBLにとって、今回のようにクラウドファンディングを活用した試みは、2022年のサウンドバー「BAR 1000」プロジェクトに続く第2弾となる。

BAR 1000はサウンドバーでありながら、左右端にワイヤレス接続対応の着脱式リアスピーカーを備えた革新的な製品として注目を集め、1億1,537万円近い支援を獲得するヒット商品となった。プロジェクト成功のカギは、高機能なサウンドバーを求めている層にクラウドファンディングを通じて届けられたことだけでなく、斬新なコンセプトや潜在的なニーズの掘り起こしに成功したことにもあるそうだ。

JBLには日本国内で既に販売している製品以外にも、200を超える日本未導入製品があるという。ハーマンインターナショナルでは、例年1月の海外イベント「CES」などに合わせてさまざまなプロダクトを発表しているものの、「サイズやカラーリングなどが日本国内の市場には合わないのではないか」、「製品コンセプトが斬新すぎて売れるかわからない」、「展示スペースを確保できるだろうか」、「仕様が難しいので(実店舗の)店員が説明できそうにない」といったさまざまな理由から、製品個別では魅力があるものの国内市場で展開できていない製品があるのが実情だ。

JBLの担当者によれば、クラウドファンディングではそうした新しいガジェットを探しているアーリーアダプター層のユーザーにリーチでき、プロジェクトページで製品にまつわるストーリーを紹介できるメリットがある。プロジェクトの資金集めを達成できれば話題となり、メインストリームのユーザーの興味を惹くこともできる。また、支援者との直接対話によるフィードバックの蓄積・製品の改善も行えるなど、クラウドファンディングを通じて「メーカーとユーザー双方がハッピーになる」ことが分かったとのこと。ハーマンインターナショナルでは今後もクラウドファンディングを活用する意向で、その第2弾として選ばれたのがPartyBox 710だったというわけだ。

記事更新時点でPartyBox 710のプロジェクトは既に成立し、支援総額は目標金額100万を大きく超える、221万9,000円近くまで上っている。今後の一般販売にも期待がかかりそうだ。