JBLのユニークな7.1.4ch“完全ワイヤレスサラウンドシステム”「BAR 1000」の日本上陸に向けたクラウドファンディングが、GREEN FUNDINGで9月15日にスタート。既に700万円以上の支援金額を集めており、支援者の手元には11月下旬以降に順次届く予定だ。

  • BAR 1000(後ろのプロジェクターは別売)

クラウドファンディングのプロジェクト実施期間は9月15日~11月7日まで。「実機を試してから支援したい」という人のために、期間中は東京・世田谷にある二子玉川 蔦屋家電内「蔦屋家電+」で製品展示が行われている。筆者もそこで実機のサウンドを確かめてきたので、そのインプレッションをお届けする。

なお、BAR 1000の一般販売の時期はまだ未定だが、14万3,000円での販売を予定している。リターンプランの一例として、先着100人限定で18%オフになる「Super Early Bird」(117,000円)、先着150人限定で17%オフになる「Early Bird」(119,000円)のほかに、BAR 1000の2個セット(228,000円)など、SNSで共同購入する“シェア買い”ユーザーをターゲットにしたプランも用意している。

  • リターンプランの一例

  • 二子玉川 蔦屋家電で実機を体験してからのプロジェクト参加も可能だ

ユニークな“着脱できるバッテリ内蔵リアスピーカー”

BAR 1000は、JBLサウンドバーのハイグレードモデルと位置づける、Dolby Atmos/DTS:X対応の7.1.4chのサラウンドシステムだ。

最大の特徴は、サウンドバー本体の両端に、電源ケーブルやオーディオケーブルなしで使えるバッテリー内蔵式のスピーカーが備わっており、取り外して“完全ワイヤレス”のリアスピーカーとして活用できること。

  • 一見すると、天井反射用のアップファイアリングスピーカーを本体上面に備えたサウンドバーに見える

  • 同梱のワイヤレスサブウーファー

フロントに設置するサウンドバー本体、ダウンファイアリング方式ワイヤレスサブウーファー、着脱可能な充電式のワイヤレスサラウンドスピーカーで構成。サウンドバー本体とサブウーファーはAC電源ケーブルが必要だが、リアに関してはワイヤレスで接続でき、サラウンドシステムながらレイアウトの自由度の高さで利便性を高めている。

  • 着脱可能な充電式のワイヤレスサラウンドスピーカー

  • 両端から外して手に持ったところ

小ぶりな弁当箱くらいのサイズ感で、この中に20mm径ツイーターと天井反射用の70mm径フルレンジドライバーを内蔵しており、これによって音の広がり感を強化する。ワイヤレススピーカーとサウンドバー本体には、充電などで使う接点を備えているが、外したときにそれらを隠せるカバーも付属。マグネットで確実な装着が可能だ。

  • 弁当箱くらいのサイズ感といえば伝わるだろうか

  • マグネット式のカバーがリアスピーカー、本体の両方に用意されている

左右のワイヤレススピーカーのバッテリー容量は3,283mAhで、約12時間連続で再生できるとのこと。サウンドバー本体に装着した状態で充電できるが、USB-C給電にも対応しているので、切り離した状態で別途用意したUSBアダプターなどから給電しながら使うこともできるという。

  • くぼみの中にUSB-C端子(手前)を装備。USB給電にも対応する

この左右スピーカーを装着したままで1本のバースピーカーとしても使え、利用シーンに合わせて2通りのスタイルで楽しめるのがウリだ。JBLでは「設置の容易さはそのままに、本格的なシアターサウンドが楽しめる第3世代の革命的リビングシアターシステム」とアピールしている。

ちなみに、左右スピーカーを本体に装着したときのサイズは1,194×125×56mm(幅×奥行き×高さ)で、横幅に関しては65V型の薄型テレビに近いサイズ感となる。

  • サウンドバー本体とくっつけるとこんな感じ

  • 本格的なシアターサウンドが楽しめる“第3世代の革命的リビングシアターシステム”としてアピール

接続できる機器の数も豊富だ。最近のサウンドバー製品では複数のHDMI入力を搭載する機種をあまり見かけなくなったが、BAR 1000は3つのHDMI入力を背面に装備。HDCP 2.3をサポートし、4K映像やHDR10信号、Dolby Vision映像のパススルーに対応する。ほかにも、eARC対応のHDMI出力、光デジタル音声入力、Ethernet端子を各1基装備している。

ワイヤレス接続については、最新のWi-Fi 6にも対応するデュアルバンド(2.4GHz/5GHz)の無線LAN機能を装備。Apple AirPlay2や、Google Chromecast built-in、Amazon Alexa Multi-Room Musicをサポートし、スマートフォンやタブレットからシームレスに音楽をストリーミング再生できる。Bluetoothによるワイヤレス再生も可能だ。

  • サウンドバー背面のインタフェース

BAR 1000で聴く、DTS:Xリマスター盤「アポロ13」の音に心奪われる

ガジェットとしても非常にユニークな作りの“新世代サウンドバー”だが、サウンドも抜かりのない設計だ。音のビームを発生させて部屋の壁と反射を利用する、JBLの独自技術「MultiBeam」テクノロジーを搭載しており、これによって前方のサウンドステージを拡大し、リスニング位置の左右から来るサラウンドチャンネルの信号を再現する。セリフなどの声成分を明瞭に聞き取りやすくする独自技術「PureVoice」テクノロジーも備えている。

  • JBLの独自技術「MultiBeam」テクノロジーを搭載

  • BAR 1000のユニット構成

ユニット構成は、2ウェイ構成のセンター/レフト/ライト用スピーカー6基、ハイトスピーカー4基、サラウンドスピーカー4基、250mm径サブウーファーの合計15基。総合出力は880Wで、大迫力のサウンドを鳴らせる。

  • 同梱のサブウーファーが迫力の重低音を鳴らす

JBLサウンドバー初のDTS:X対応製品ということもあって、今回はDTSのデモディスクを視聴した。

さまざまな素材を叩いたり弾いたりすることで、ひとつの音楽に仕立てた「Recycled Sound」では、背後の音の定位感がとても自然に再現され、リアスピーカーがあることのメリットを実感。

また、4K+DTS:Xリマスター盤も発売されている映画『アポロ13』の離陸シーンでは、BAR 1000のハイパワーなサウンドによって“サターンVロケットの打ち上げをその場で見ているかのような感覚”をバッチリ体感できた。

『アポロ13』では、サターンVロケットの打ち上げを見下ろし、カメラをかすめるようにしてロケットが右後方に飛び去っていくカットがあるのだが、もちろんエンジンの轟音も映像に追従して、音像の迫力やクリアさを保ったまま移動していく。一瞬のワンシーンなのだが、この再現性の高さには思わず笑ってしまった。リアスピーカーのないサウンドバーでは味わえない面白さを、BAR 1000であれば難なく実現する。それも自由なレイアウトスタイルで、だ。

アニメ映画『竜とそばかすの姫』でも、あたりを埋め尽くす無数の声が合唱となって昇華するクライマックスのシーンの奥行き感、広がり感の再現度の高さがハンパではなく、天井の高い蔦屋家電店内の試聴エリアにいることを忘れてしまうほど、映画館のそれに近い臨場感があった。

自由なレイアウトスタイルと言ったが、臨場感を高めるためには「ルーム・キャリブレーション」機能が欠かせない。BAR 1000では、サウンドバー本体上面のマイクを活用し、部屋の形状やスピーカーの設置場所、視聴位置にあわせて音を最適化。ワイヤレスリアスピーカーを活用して没入感を最大限高めた設定や、背後のサラウンド感は弱まるがMultiBeamによって“音の包まれ感”を維持する1本バー利用向けの設定が選べる。

  • サウンドバー本体の上面にマイク(中央の穴の内部)を内蔵。各種操作ボタンも備える

  • シチュエーションにあわせたサラウンド設定ができる

これらの設定は付属のリモコンのほか、JBLのワイヤレスオーディオ製品向けの新しいアプリ「JBL ONE」から一元管理できる。アプリではさらに、音楽ストリーミングサービスの楽曲をBAR 1000でワイヤレス再生することも可能。音楽サービスを横串で検索する機能も備える。

  • 付属のリモコン

  • JBLのワイヤレスオーディオ製品向けの新しいアプリ「JBL ONE」

  • サウンドバー本体の前面に、現在のサウンドモードなどを表示するディスプレイがある

ガジェットとしてもAV機器としても見どころが満載のBAR 1000。リアスピーカーを着脱するひと手間はかかるが、リアスピーカーを常にソファの周りに置かれては困る(邪魔に感じる)という家族にも配慮しつつ、平日は1本バースタイルでテレビ番組や音楽を楽しみ、休日はリアスピーカーを外してじっくり映画鑑賞……といった使い分けができて便利そうだ。

JBLでは今回、近年のマーケットの変化も踏まえて初めて、GREEN FUNDINGでのクラウドファンディングでのBAR 1000の販売を実施中だ。注目度の高さは700万円以上の支援をプロジェクト開始日に集めていることからもうかがえるが、今後の一般販売にも期待したい。