1.9kmのトンネルは約9か月で掘り進められ、2022年2月にはその先のアプローチトンネルの掘削がスタート。アプローチトンネルは3つに分岐して、本体空洞底部、中間部、上部に取り付く。同年6月には、本体空洞上部へのトンネルが空洞ドームの中心部に到達しており、その後、本体空洞を取り巻く周辺空洞の掘削が行われ、2022年11月に周回坑道が貫通したという。

  • 掘削開始直後のアクセストンネル入口。

    掘削開始直後のアクセストンネル入口。(c)東大 ICCR 神岡宇宙素粒子研究施設(出所:東大 ICRR 神岡宇宙素粒子研究施設Webサイト)

検出器施設グループは、コロナ禍によりさまざまな制約を受ける中、予定通りにアプローチトンネルが完成したとする。またトンネル工事の支障となる湧水もなく、長孔発破などの掘削技術を駆使することで、短期間に掘り切ることができたとしている。

  • アプローチトンネルの第一分岐点。

    アプローチトンネルの第一分岐点。(c)東大 ICCR 神岡宇宙素粒子研究施設(出所:東大 ICRR 神岡宇宙素粒子研究施設Webサイト)

そして2022年11月、検出器建設の最も重要な局面となる、超大型の本体空洞の掘削が開始された。空洞上部のドーム部は天頂部からかたつむりの殻のように掘り進め、天井部にアンカーを埋め込んで岩盤の安定性を確保しながら空間を広げていくという。

完成時の直径が69mとなるドーム部は、その上600m分の山の圧力に耐え、安定した空間を保持する必要がある。大空間を保持する要は、日本有数の堅牢な岩盤であり、太古に巨大な圧力を受けて造成された「飛騨片麻岩」で、その岩盤を総数600本以上のアンカーがサポートする仕組みである。さらに日々の計測データとシミュレーションを比較しながら岩盤の安定性の確認を行い、アンカーの長さや間隔、掘削の順序などが計画され、そして施工されるという。この空洞掘削には2年がかけられる計画で、その後水槽ライナー設置工事へと移る予定だ。

なお、直径69mという地下空洞の掘削は、人類がこれまでに経験したことがない規模だという。特に、ドーム部分の掘削はさまざまな困難が予想される難工事としている。

  • 掘削中のドーム部分。

    掘削中のドーム部分。(c)東大 ICCR 神岡宇宙素粒子研究施設(出所:東大 ICRR 神岡宇宙素粒子研究施設Webサイト)

HK計画において、ホスト国である日本の役割分担は、HK検出器の地下空洞掘削、水槽と構造体、内水槽光センサの半数、水循環システムの主要部分、初段データ解析システム、J-PARC加速器およびビームラインのアップグレード、前置検出器のための施設整備だ。

一方、海外の参加国の分担は、光センサの防爆カバー、内水槽光センサの残り半分、外水槽光センサ、データ読み出し回路、検出器較正システム、前置検出器などとなる。現在海外参加国でも予算措置が順次行われ、機器の生産に向けた準備が進められているとしている。