Windowsはこのまま軽微な機能拡張でバージョン番号を重ねていくと思っていた。Microsoftは稼ぎ頭のMicrosoft AzureやMicrosoft 365に注力し、Windowsの開発リソースを減らしている(ように筆者からは見える)。営利企業であれば至極当然だが、MicrosoftはWindowsをAI開発のベストクライアントと定義付け、現地時間2023年5月23日から開催した開発者イベント「Microsoft Build 2023」にて、その各機能を発表した。
各所に改善の手を加えているが、最初に紹介すべきは「Windows Copilot」だろう。簡単に言うと、New BingのAI機能を利用するダッシュボードだ。ただ、それだけではMicrosoft Edgeが備えたBingボタンで十分。Windows Copilotは、アプリの起動や設定の変更、プレイリストの再生といったアクションも実行できる。一種のAIアシスタントと述べてもよいだろう。
個人的には面白い取り組みに見えるが、正直、多くのユーザーはWindowsのアシスタントに良い印象を持っていないと思う。古くは「Officeのイルカ」でおなじみのOfficeアシスタント、最近では鳴り物入りで登場したものの、エンドユーザーレベルでは役に立たなかった「Cortana(コルタナ)」――。この両者について、もっとも有効なTipsは無効化だった。Windows Copilotは2023年6月にWindows 11 Insider Previewで利用可能になる予定なので、実際に操作できるタイミングになったらぜひ評価してみてほしい。
次は「Dev Home」。文字どおり開発者を支援するために、PCのセットアップからGitHubへの接続、PCリソースの監視や進捗を管理するダッシュボードを用意する。このダッシュボードはユーザーに自由なカスタマイズを提供し、ウィジェットとしてピン留めもできるようだ。
PowerShellのwinget(Windows Package Manager)と連携して、開発に必要なアプリやツール、フレームワークを自動的にインストールする機能も便利だが、新たなファイルシステムの「Dev Drive」も注目株として挙げたい。
Microsoftは「ReFS(Resilient File System)をベースにMicrosoft Defenderウイルス対策の新しいパフォーマンスモードを組み合わせる」と説明しつつ、ファイルI/O速度を30%高速化させるとしている。ReFSが持つ利点のひとつは高い堅牢性だが、一方で最近のMicrosoft Defenderはシステム負荷が高いと評されることが多い。おそらく今後のWindows 11で上記のようなメリットを備えたリアルタイム保護機能を備えてくるのだろう。
今後のWindows 11は、開発者向けにはMicrosoft Storeの強化、ビジネスユーザー向けにはAzure AD(Azure Active Directory)を前提としたMicrosoft Edge for Businessの提供、さらにOS自身もタスクバーの改善やrarや7zといった圧縮形式のサポートを予定している。より詳しい発表内容は、MicrosoftのBook of Newsも合わせてご覧いただきたい。