我々の身の回りにはAIが満ちあふれるようになった。ここでいうAIとは人格を伴わないジェネレーティブAI(生成系人工知能)を指すが、MicrosoftはさまざまなソリューションにAI機能を取り込み、ビジネスから日常生活まで変化を与えている。日本政府もAI戦略会議を立ち上げ、リスクと利便性のバランスを模索している最中だ。

Microsoftは現地時間(以下同)の2023年5月4日、Microsoft Bingに実装したAI機能の一般公開を公式ブログで公表。利用者の拡大を目指している。

振り返れば2019年や2021年にOpenAIへの投資を拡大し、2023年1月23日もさらなる拡充を発表した。すでにMicrosoft AzureのAI機能はOpenAIを基盤として強化を図り、「~Copilot」シリーズとして製品・サービス群のAI機能強化に努めている。New Bingの自然言語検索や、チャット経由で画像を生成するBing Image Creatorもその一環だ。

  • Bing Image Creatorによる画像生成(公式ブログから)

さらにチャット履歴のエクスポートや共有機能の実装も予定しており、近々にはPDFファイルに代表される長文コンテンツや動画コンテンツを最適化するEdge Actionも備える予定だ。Microsoftは一連のAI機能実装について、「製品からプラットフォームへの移行」と称している。

サードパーティー製プラグインのNew Bing組み込みも予定し、「夕食のレストランを探している場合はOpenTableの予約機能が役立つ」そうだ。こちらの詳細は年次開発者会議「Microsoft Build 2023」(5月23日~25日)で発表される予定だが、Microsoftお得意のエコシステムがプラットフォームとして成功するか否かは興味深い。

  • Edge Actionを動画に適用(公式ブログから)

これまではキーワードを並べて精度を高めていた検索サイトも、岐路に立たされている。市場を席巻したGoogleも急遽、チャットAI「Bard」をリリースし、先ごろ日本語にも対応した。ただし、日本語フォントに対する理解度は低いようだ。あくまで個人的には、各デバイスのOSで利用する検索サイトをMicrosoft Bingに切り替えた環境を、再び元に戻すつもりはない。

先日のGoogle I/O 2023で発表したPaLM 2モデルは用途に合わせて最適化する仕組みで効果を期待できそうだが、先の理由で多言語に対するアプローチは時間を要するだろう。GoogleもジェネレーティブAIを取り込んだ検索体験を提供する予定としており、このあたりはGoogleとMicrosoft Bingを比較して使い勝手を見比べればよい。

攻勢に転じたMicrosoftだが、消費者に優しくない施策も同時に実行するようだ。サポートサイトによれば、Microsoft Outlook for Windowsで受信したメール内のリンクからは強制的にMicrosoft Edgeが起動する仕組みになるという。将来的にはMicrosoft Teamsメッセージのリンクも含まれ、最終的にはMicrosoft Edge側の設定で一連の機能を無効にする仕組みを用意するようだ。

  • 「リンクの処理」に新たな選択肢として、「Microsoft Edge」「Default Browser」が加わる予定

Microsoftは、Microsoft Outlook for Windowsではなく、Webベースの「新しいOutlook」を推し進めている。利用者の減少に伴い影響度はそれほど大きくないと思われるが、かつてWebブラウザー市場を各社が争った時代を連想するユーザーも少なくないだろう。MicrosoftがAIによって次世代の覇権を握るのか、市場確保の施策で評価を下げるのか(上がるかもしれないが)、次の一手に注目が集まる。