スタートアップ企業・issinから発売された「スマートバスマット」。シーリング一体型プロジェクター「popIn Aladdin」(2018年)を生み出した企業・popInの創業者・程 涛氏が創設した企業の最初のプロダクトで、存在を感じさせない“ステルス家電”としても話題になっています。
一言でいえば、体重計とバスマットを一体化したアイテム。2022年4月のクラウドファンディングによる先行販売を経て、2022年秋から正式に発売しました。
スマートバスマットは体重データを「記録」し続けることが目的の製品のため、一定期間使い続けないことには製品の良し悪しは判断しにくいところがあります。
そこで今回は、「家電王」として活躍中の中村剛さんをはじめ、発売から半年ほど使用中のユーザーが、それぞれの視点からスマートバスマットについて語り合った座談会の模様をお届けします!
対談の参加者
■中村剛さん
東京電力エナジーパートナー(株) 販売本部 お客さま営業部
副部長(リビング・デジタルメディア担当)2002年に『TVチャンピオン』スーパー家電通選手権で優勝し、銀座にて体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営に従事。現在は“家電王”として動画マガジン『くらしのラボ』をFacebookとYouTubeで毎週配信している他、テレビや雑誌、新聞などのさまざまなメディアで暮らしに役立つ情報発信をしている。無類のネコ好き! スマートバスマット使用歴は2022年4月~。
■モニター・Kさん
男子高校生の子を持つワーキングマザー。スマートバスマット使用歴は2022年11月~。
■モニター・Sさん
3歳児の育児に奔走中の本誌編集者。スマートバスマット使用歴は2022年11月~。
「体重測定」のストレスが消えた!
――まず中村さんに伺いたいのですが、いつ「スマートバスマット」を使われていますか?
中村:もう本当に普通に、お風呂から出たときに乗ってます。致命的にこれがだめとかいうことは全くなく、普通に使えていますね。
体重計ってどうしても「乗らなきゃいけない」と思ってしまって、だんだんやらなくなるじゃないですか。その点、スマートバスマットは連続して記録できることだけ考えても良いものですね。気軽なゲーム感覚でできる。
(体重計に)Bluetooth接続でデータ同期できる機能なんかがあっても、その都度接続するのは結構面倒くさいですよね。それがWi-Fiで常時繋がってクラウドにデータが自動で上がり、変化の様子がわかるのはとても良いです。
――スマートバスマットのアプリで最初にモード選択をしますが、今はどのモードで使っていますか?
中村: やはり今は一応、「ダイエットモード」にしています。この間issinから発表がありましたけど、ダイエットモードに設定しているユーザーが一番多いそうですね。
アプリはいちいち見なくていいように設計されてますけど、意外と見ていますし、見るのが嫌じゃないんです。
K:私、(アプリで体重のデータを)見るのが楽しくて。それで毎日一喜一憂してます。
中村:見るのが嫌なのは、“一般的な体重計”の話なんですよ。目の前に数字がポンと出てくると、やっぱり精神的ハードルがあるじゃないですか。
対してスマートバスマットは乗ったその瞬間ではまだ(体重が何キロだったか)分からないから、その辺りの精神的ハードルが下げられます。私もデータ見てますよ。(体重に一定以上の変化があると)通知もちゃんと出るし。
K:私は、普通の体重計を使った時にメモリーが残って、それを自分の家族に見られるのが嫌だったんです。子供が中学生ぐらいの時に、「お母さん、もう(この体重じゃ)痩せてるとは言えないよ」とか嫌味を言ってきたことがあって……。スマートバスマットはアプリでデータ共有をしても体重の数値は見せない設定ができるのがいいなと思います。
中村:複数人で使うと、また状況が違ってくるんですね。
自動算出のBMI、育ち盛りの子供にはちょっと難あり
――Kさんの場合はどんなふうに使っていますか?
K:うちは子供と二人暮らしですが、ちょっと特殊な使い方をしていて、息子は自分のスマホから登録して、私ともデータを共有しているのですが、私のスマホにも彼のアカウントを別に登録しています。
要するに本人のスマホで1アカウント、親のスマホでもう1アカウント登録しているというかたちです。1回乗るとちゃんと両方のアカウントのデータが更新されるんですよ。体重の数値でユーザーを判別しているとわかったら納得しましたが、最初はちょっと不思議でした。
――お子さんのアカウントを2つ作ったのはなぜですか?
K:いま子供が高校生で、スポーツをやっています。体重を増やさなければならなくてたくさん食べていますが、成長期である上に激しい運動で消費されてしまって、なかなかウエイトには行きわたらなくて。そういった関係で、体重の数値と正しいBMI(チャイルドモードの場合肥満指数)を把握したくて(スマートバスマットを)使っています。
BMIと肥満指数、どちらも身長と体重から割り出す数値で、アプリが自動計算してくれるのは便利です。しかし、子供は成長期で身長が毎月伸びています。彼は身長の入力を忘れがちで正しい指数にならないので、そこをフォローしたくて親子で相談し、複数アカウントを作っている状況です。
大人は身長がほぼ変わらないので自動入力される体重データがあればいいですが、子供の場合、こまめに身長データを更新しないと正しいデータが出ません。でも、今のアプリだと身長データを入れる画面がかなり奥にあります。だから、チャイルドモードにした場合、ポップアップで身長の入力を促す機能はあったほうがいいかなと感じています。
中村:その年齢に応じた案内をしてほしいですよね。逆に、一律で身長入力アラートを出すと、大人が「毎回身長を測り直しましょう」って言われてるみたいで煩わしいですし。
K:きっとメーカーさんの方もお気づきではあると思うんだけど、実装が追いついていないということもあるとは思います。頻繁にアップデートがあって、知らないうちに新しい機能が追加されていたり、UIが微妙に変わっていたりするのを見ているので。
体重が近い家族がいると起こる「困りごと」
――Sさんのところはまだお子さんが小さかったですよね?
S:はい、うちの子供は保育園児で、私と夫の3人家族で暮らしています。
子供が喜んで体重を測ってくれるなど、スマートバスマットはとても便利だと思っていますが、実はちょっと問題があって……。夫と私の体重が近いので、自動でデータ収集ができないんです。
スマートバスマットは体重の数値でユーザーを識別するので、家族の中に体重が近い人がいる場合、現状は手動でデータを登録するしかないです。また、測った時刻しか手がかりがない中で、自分か夫かを判断しないといけないのもちょっとしんどいな、と。
加えて、測定データは私と夫両方に送られるので、アプリ側の共有を切っていても体重はバレちゃいますね。多分、体脂肪率も取得すると我が家のようなケースでも自動判別してもらえると思うので、アップデートに期待したいです。
中村:なるほど、そんなことが。自分も一人暮らしなんですが、前にそういうことがありました。あまりにも体重変化があると「この人は誰ですか?」みたいな感じで表示が出て手動承認を要求するようになるんですよ。
K:そんなに変化があったんですか?
中村:その日はしっかり運動しようと思って走ったら、4kgぐらい減っちゃったんですよ。まあほぼ水分でしょうが(笑)
――1日4kgって! それ、体重計が心配してくれてるんですよ。
中村:でも、一人しか使ってない時は(数値によらず1つのアカウントに)勝手に紐づけちゃっていいじゃないの?って思いましたけどね。
S:確かにそうですね……。実はissinに問い合わせたところ、スマートバスマットでは体重が3kg以内の差だと同一人物と判定するそうなんです。だから、我が家の場合は私と夫両方に(測定結果が)送信されるんです。
逆に、中村さんの場合は3kg以上の差が急に発生したから、「別人が乗った」と判断して警告が出たのだと思います。
中村:なるほどなあ。それにしても、手動承認ステップが分かりづらいんですよね。UIの表現の仕方も変えてほしいなあ。
――さっきSさんが言っていた「体脂肪を測る」機能ですが、本体には(今は機能していない)電極があって、issin側でもいずれ対応できるようにしています。
K:でも、電極の上にバスマットを載せてますよね? 今の使い方で体脂肪は測れるんでしょうか?
中村:そう思いますよね。スマートバスマットを体脂肪計としても使うのは結構ハードルが高いですよ。
そもそも、体脂肪計はメーカーによってかなり測定方法が違います。個人的には、スマートバスマットの場合、両手で棒を握るようなタイプの別のデバイスと組み合わせるほうが向いているんじゃないかなと思いますね。
K:そっちのほうがありえそうですね。それこそクラウドでデータを紐づければいいですし。
「バスマット」部分の使い心地は?
――話は変わりますが、バスマット部分である珪藻土マットの使い心地はどうでしょうか?
中村: 洗濯機で洗えると言ってはいますが、心配だから拭いています。でも完璧に綺麗にはならないですよ。
K: わかります。私は一番色の濃いのを使っています。だから汚れはそんなに目立たないかな。
S:うちは洗濯機で洗っていますが、毛玉みたいに毛羽立ってきますね。リフレッシュ感は少ないです。かといって、うちは子どもが小さくて、拭かずにマットに飛び乗ってすぐビショビショにしちゃうので頻回洗っています。
K:でも、確かにすぐに乾きますよね。濡れて冷たいとかいうのもない。気持ちいいですよね。
中村:ええ、珪藻土を練り込んだあの素材を使っているのがいいんでしょうね。
「ミニサイズ」があったらなあ
K: そういえば、バスマット本体が強化ガラス製なのはどうしてでしょう? 毎朝ロボット掃除機を使うので、毎回、壁に立てかけてるんですが、ちょっと重いですよね。ガラスじゃなくてもいいんじゃないかって。
中村:強度だと思います。金属でもいいんでしょうけどもっと重くなっちゃうと思います。
K: もう少し軽いと嬉しいかな。置きっぱなしっていうのを想定してのことだと思うんだけど。ロボット掃除機でなくてもやっぱり掃除はすると思うので、本体を動かす時にもうちょっと軽いといいな。割と「よいしょ」って動かすので。充電する時も動かしますし。
中村:しかもガラスだから丁寧に扱わないといけないしね。ど真ん中に立たなきゃ測れないわけじゃないから、それもあって多分剛性を高めているんだと思うんですね。
もしかしたら開発してる人たちは、しまうことは考えていなかったのかもしれないですね。確かに下を綺麗にしようと思うときもあるけど、自分は本当に置きっぱなしで使ってますね。
――今のサイズは、市場に出回っている世の中のバスマットの平均的なサイズから決めたと、程社長がインタビューでおっしゃっていました。
K:家庭によってはもっと小さくてもいいかもしれないですね。「スマートバスマット・ミニ」みたいな。軽くもなるし、邪魔にもならないし。
スマートバスマットの生みの親・程社長に聞く「今後」
座談会で飛び出したいろいろなリクエスト。これらの実現可能性はあるのでしょうか?issinの程涛社長がコメントを寄せてくれました。
座談会の開催、ありがとうございます。ご指摘についてごもっともです。一部ですが回答いたします。
子供の身長入力
- 18歳未満の子供の身長提示とUI改善はすぐにできますので、次のリリースで改善いたします。
体重が近い人がいると手動入力になること
- 体重が近しい場合のUIは相変わらず課題で、引き続き工夫いたします。
ミニサイズが欲しいこと
- サイズについて、次のモデルで検討いたします。
後編では、スマートバスマットを使ってからのライフスタイルの変化や最近搭載された新機能について語ります!