耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」の新しい40周年記念モデル「RECRYSTALLIZED SERIES」(リクリスタライズドシリーズ)として、「GMW-B5000PG」「GMW-B5000PS」「DW-5040PG」という3モデルが発表に。新作発表会では、開発担当者から商品コンセプトに加え、カタログには書かれない開発秘話が飛び出した。

「復刻」ではなく「現代風解釈」と「進化」

発表会に訪れたメディアの前で熱く語ったのは、RECRYSTALLIZED SERIESの商品企画を担当したカシオ計算機の泉潤一氏と、デザインを担当した森翔馬氏だ。

  • カシオ計算機 技術本部 企画開発統括部 泉潤一氏

  • カシオ計算機 技術本部 デザイン開発統括部 森翔馬氏

泉氏は本シリーズの概要を解説。ゴールドの「GMW-B5000PG」とシルバーの「GMW-B5000PS」は、フルメタルオリジンとしてヒット作となった「GMW-B5000」シリーズがベースとなっている。

ステンレス外装に数百度の熱処理を加えて再結晶化(リクリスタライズ)させ、さらに炭素を浸透させる深層硬化処理を施して、通常のステンレスと比較して3倍の硬度を実現した点に注目だ。再結晶化によって、デザイン面でもマットな表面に金属の破片が散らばったような独特の質感を得ることができるという。

  • ゴールドの「GMW-B5000PG」(121,000円)

  • シルバーの「GMW-B5000PS」(121,000円)

  • 再結晶化処理により、金属の破片が散りばめられた雰囲気に! 1本1本、模様の現れ方が異なる

そしてブラックの樹脂モデル「DW-5040PG」は初代G-SHOCK「DW-B5000C」がベース。深層硬化処理のスクリューバックやゴールドIPを施した40周年記念仕様のステンレス製尾錠と遊環、ボタン類、そして樹脂外装には環境に配慮したバイオマスプラスチックを採用していることなどを紹介した。

  • G-SHOCK初号機「DW-5000C」の最新進化形「DW-5040PG」(38,500円)

DW-B5000Cへのオマージュとしてデザインの再現を目指しているが、泉氏いわく「単純な復刻モデルではありません」と。「最新技術での新しいタフネスや新しい表現への挑戦、そして環境への配慮といった視点を加え、DW-5000Cを現代風に解釈して進化させたもの」と語った。「それは“周年記念モデル”だからできること」とも。

  • G-SHOCK 40周年記念モデル 第1弾「FLARE RED」(フレアレッド)

  • G-SHOCK 40周年記念モデル 第2弾「Adventure's Stone」(アドベンチャーズストーン)

  • 今回の「RECRYSTALLIZED SERIES」はG-SHOCK 40周年記念モデル 第3弾となる

  • G-SHOCKのCMF(Color、Material、Finish)デザインと独自技術によるモデルの数々

特に環境への配慮は、今後のG-SHOCKの進化としても重要な位置付けにあると泉氏は言う。

「タフネスを保ちながら、バイオマスプラスチックの採用やプラレスな梱包といったプラスチックの削減、海への配慮、タフソーラーや長い電池寿命といった長く使い続けられるロングライフ、この3つのキーワードを念頭に商品開発をしています」(泉氏)

  • 「(プラスチックの)削減」「海への配慮」「ロングライフ」は、G-SHOCKの未来にとっても重要なテーマだ

泉氏が言うように、RECRYSTALLIZED SERIESはパッケージングについても再生紙やベジタブルインク、再生プラスチック、布袋などを積極的に使用している。膨大な生産量を誇るG-SHOCKだけに、その効果と役割は大きいだろう。

  • 「GMW-B5000PG」と「GMW-B5000PS」のボックスは再生プラスチック、「DW-5040PG」のボックスは再生紙を使用

  • 「DW-5040PG」のパッケージの実物も展示されていた

RECRYSTALLIZED SERIESについての概要は、別記事『G-SHOCK 40周年 - 初号機を現代技術で進化「RECRYSTALLIZED SERIES」』をご覧いただきたい。

複雑な工程への挑戦

RECRYSTALLIZED SERIES、特にメタル外装モデルの2本における最大の特徴とも言えるステンレスの再結晶化について、デザイン担当の森氏は「再結晶化は外装担当のスタッフからたまたま提案された技術にデザインのスタッフが注目した」ことや、「こんなことはできないかという要望や意見を交換しながら協業で実現していった」ことなどを明らかに。泉氏も「金属の破片の模様や色調、光沢感などは個体ごとに異なる風合いが楽しめる」と語った。

  • 「GMW-B5000PG」のデザインの特徴。シルバーの「GMW-B5000PS」もこれに準じる

  • 中央の「金属調のパーツ」とは、特徴的なレンガ模様を再現するもの

  • 「GMW-B5000PS」のスクリューバック。DLCの上から、レーザーで40周年記念ロゴなどを刻印している

  • 「DW-5040PG」のデザインの特徴。ゴールド液晶はメッシュパーツで再現されている

ちなみに、カシオはこれまでもチタンモデルで深層硬化処理を使用していたが、ステンレスモデルではこれが初。ステンレスの深層硬化処理は時計の外装では一般的な技術ではなく、産業マシンやエンジンのギアやシャフトといった強度を要求される内部パーツで使われることが多いという。

「カシオでは企画からデザイン、設計、外装、品質保証などのチームが日ごろから頻繁に情報を共有していて、そのやりとりからブラッシュアップして面白い製品が生まれたりします」(森氏)

とはいえ、やはり新技術への初挑戦ゆえの苦労も大きかった。

「深層硬化処理を上手く行うためには、前段の再結晶処理の安定性を上げておく必要があります。そのため、外装すべてにあらかじめ研磨をかけてミラー面にする必要があったり、パーツをセットするために専用の治具を開発したり、そのほかにも細かい工程が必要。とにかく工数がかかるうえ、やはり各部署の連携が大切で、工程面でとても手間がかかっています」(泉氏)

  • 再結晶化と深層硬化処理のおおまかな工程(左)、そしてステンレスの断面(右)の硬化層のイメージ

「たとえばDW-5040PGの遊環は天面がヘアライン、サイドはミラー仕上げなのですが、このまま再結晶化させると、結晶の出方が(各部の仕上げごとに)まったく違ってしまいます。再結晶するのだから同じだろうと最初は考えていたのですが、そうじゃなかった。表面処理が肝心ということを思い知らされました」(森氏)

  • 「DW-5040PG」の遊環と尾錠

森氏いわく「メチャクチャ大変です」とのこと。泉氏も「設計チームがメチャクチャ大変そうでした(笑)」とコメント。記者からの「では、あまり本数が作れなさそうですね」との問いにも「そうですね。どうしても大変な工数がかかる技術なので」と答えた。

そんな名実ともに特別仕様の「RECRYSTALLIZED SERIES」は4月21日発売。価格は「DW-5040PG」と「DW-B5000C」が121,000円、「DW-5040PG」が38,500円だ。