• 「情シスはヒーローだ」 インテルが今、「vPro」プラットフォームを推す理由

インテルが今年、満を持して「vPro」プラットフォームのマーケティングを強化するようだ。コロナ禍によるデジタル環境の急速な変化は、遅れていた日本企業のデジタル化を後押しした一方で、IT管理の負荷が急激に増大するという課題も生んだ。インテル日本法人でマーケティング本部長をつとめる上野晶子氏が、この課題の解決策として提案する同社最新の取り組みを説明した。

  • インテル マーケティング本部の上野晶子本部長

怪我の功名と言って正しいのかわからないが、コロナ禍がきっかけとなり、日本では遅々として進まなかったオフィスのデジタル化が一気に進んだ。そのことがさらに反面、新たな「怪我」の要因にもなっている。働き方の改善が進む一方で、そのための負担は企業の情報システム部門に集中してしまっているのだ。

オンラインで働く場所が点在してしまったり、今までとは異なるIT物件の使われ方が常態化したり、セキュリティリスクが増大する要因が増えた。社内ユーザーから情報システム部門への問い合わせは、量はもちろん内容も多岐にわたるようになった。管理コストが増加するなかで、情報システム部門が「本来やるべきだったこと」を推進できなくなっている状況だ。ここを効率化して負担を軽減できなければ、本来やるべきだったことが推進できなくなってしまう。そして本来やるべきだったこととは、デジタル環境の整備や、DX/DcXの推進、サイバー攻撃対策など、管理コスト増大による受け身の活動ではない、企業の生産性向上などに向けた活動だ。

  • デジタル環境の課題が増大した結果、本来取り組むべきだった課題に手がつけられないという状況に

上野氏はそもそも、「インテルはどうしてvProを出したのか? インテルがテクノロジーの力であらゆる生活を豊かにすることを企業の目的としているからだ」と話す。インテルでは情報システム部門に対し、近年の不満に関するアンケ―トもとったそうだ。実際に現場の生の声として、IT機材の性能不足や煩雑な管理業務が挙がっており、さらに生々しい話だが、「軽視されている」「業務がつまらない」といった声まで出ている。

  • 情報システム部の生の声。笑えない不満が並んでしまう

そこでインテルのvProプラットフォームを強く推したい、というのが現在の同社で、そもそも、vProは成り立ちからして、インテルの自社IT管理部門の人間が最初の設計を担当していたそうだ。そこにあったのは「自分の仕事を楽にしたい」という欲求だったという。インテルとしては、社内ユーザー=使う人の効率は、最新のIntel Coreプロセッサがあり、一方で管理する人の効率のために、vProプラットフォームがあると位置付けている。

vProプラットフォームを推すにあたり、インテルは機能面や、直近の新たな課題を受けての機能アップデートを当然アピールしているのだが、今回、面白いのは、情報システム部門を「ヒーローにする」「輝かせる」「報われる仕事にする」と、現場のモチベーションにスポットライトを当てて訴求している点だ。vProプラットフォームが、急速な変化で顕在化した課題や不満に、いち早くアップデートで対処してきているという自信もあるのだろう。

  • vProプラットフォームはIT管理の自動化や効率化、システムの安定を実現する機能を搭載している

  • チップレベルからの専用ハードウェア、ソフトウェア、使うツールまで一貫しているvProならではの機能の優位性がある

このvProプラットフォーム推しの施策として、東京のインテルの本社内に、vProプラットフォームのショウケースを設け、ユーザーに実際に体験してもらうという試みも実施している。中身を見学する機会があったが、例えば、社内LANではない、インターネット越しのネットワークで使用していても、遠隔サポートを可能とする機能や、UEFI(BIOS)レベルからリモートサポートできる機能などを体験できる場となっていた。

  • インテル社内に設置されたショウケースの様子。最新のvPro対応PCを揃え、まずはそれらを一斉にリモート起動するデモで出迎えてくれた

  • vProのIntel EMAを使い、クライアントPCのUEFI(BIOS)操作までリモートサポートできるというデモ。情シスの現場の、「そもそもPCが立ち上がらない」という段階からの問い合わせが多くて困る、という声に対処できる機能だ

  • よく見るとクライアントPCにLANケーブルがつながっていないが、これはWi-Fi越しにリモートサポートが可能という機能のデモだ

  • こちらは大量のPCをIntel EMAで同時にリモート監視しているというデモ

  • ショウケースではvProの導入事例も紹介していたのだが、韓国・釜山の高校が同時リモート監視機能を応用して、学校の先生が、この機能によって教室の生徒のPC画面を一覧することで、生徒それぞれの学習をサポートするという興味深い使い方をしていた

ところで、インテルは最近、vProに限らず「プラットフォーム推し」をアピールする機会が増えている。昨年末からは、クライアントPCでも「Evoプラットフォーム」を前面に推し出したマーケティング活動を強化していた。デジタル化が急速に進む中で、様々な背景のなかでPCを使う人が増加していきそうな中、これまでのように性能や機能の細かい話だけではなく、PCで何がしたいのか、PCで何ができるのかといった、まずは使う人のニーズに応えなければならないということなのだろう。vProなら〇〇ができる、〇〇がしたいならEvo、という分かりやすさが必要になっているのだと思う。

  • インテルは「Evoプラットフォーム」の「プラットフォーム推し」も強化していた

  • PコアとEコアによる効率的なプロセッシング能力が性能面での最大の特徴だが、vProと同様、Evoにおいても一貫した設計基準によって、プラットフォームレベルでユーザー体験を担保できるという強みがある。これは新しい体験を生む源泉となる、開発のしやすさにも貢献し、オープンプラットフォームであることも強調している

  • つくりたい作品のためのEvoプラットフォームや、スキマ時間に場所に縛られずゲームするならEvoといった、ユーセージから逆引きしてプラットフォームを推している。そのためにバッテリ駆動時間が…とか、メモリ性能が…といった精査はは、まずEvoならあまり気にしなくても大丈夫となるなら、確かにわかりやすい。量販店のPC売り場もこういったわかりやすさに気を使ったカタチになりそうである

なお、Evoプラットフォームでは既に新世代の第13世代CoreプロセッサをベースとしたPCが登場しはじめているが、今回のvProでは第13世代CoreベースのPCがまだ登場していない。これは「近いうちにお見せできる」(同社)とのこと。企業のデジタル化の鍵を握る「情シスが輝ける環境」が実現するよう、プラットフォームの進化を加速してくれるよう期待したい。

  • 第13世代Coreはまだだが、第12世代Coreでもハイブリッドアーキテクチャの恩恵は既に受けることができる。今回のショウケース見学の際に、少しだけ競合比較の性能テストも披露していた

  • その性能テストで面白かったのが、バックグラウンド処理時におけるIbtel CoreとRyzenとの挙動の違いだ。まず掲載の画像は、「Blender」による3Dレンダリングの処理を、ウインドウ最小化した時のIntel CoreとRyzenのCPU使用率の推移を比較したもの。Intel Coreでは最小化してバックグランド処理に回ったタイミングで、Pコアの使用率が一気に落ち、Eコアの使用率があがっている。一方のRyzenの方も少し振り分けの変更が見られるが、Intel Coreほど明確なコントロールが入るわけでなない。良し悪しはあるが、バックグラウンド処理が邪魔でメイン作業の効率が滞るという事態は、Intel Coreでは起こりづらいことを表している