国内最大級の写真映像関連イベント「CP+2023」(シーピープラス2023)が2月23日、パシフィコ横浜で開幕した。オンラインイベントもあわせて開催され、期間は2月26日まで。入場無料だが、Web事前登録制となる(オンラインは参加登録不要)。ここでは“過去最大級”のソニーブース(ホールD)の展示を中心にレポートする。
CP+2023のソニーブースは過去最大級のコマ数を確保し、中央のタッチアンドトライコーナーを含む大型ブースを展開。デジタル一眼カメラαシリーズと、G Masterレンズをはじめとする豊富なEマウントレンズ群、VLOGCAM、映像制作用カメラ「Cinema Line」といった、最新のイメージング製品が来場者を出迎える。
主な製品は「α1」、「α9 II」、「α7R V」、「α7S III」、「α7 IV」、「FX6」、「FX3」、「FX30」、「VLOGCAM ZV-E10」、「VLOGCAM ZV-1」、「VLOGCAM ZV-1F」、「FE 50mm F1.4 GM」、「FE 20-70mm F4 G」など。
中央エリアのシューティングコーナーでは、若手ダンサーによるダンスパフォーマンスを前に、ソニーの最新カメラ+レンズの組み合わせで画質や撮影速度、機動性、スタミナなどを体感できる。CP+でおなじみのモデル撮影も、もちろん楽しめる。
さらに国内初展示となる、G Masterの大口径標準単焦点レンズ「FE 50mm F1.4 GM」も登場。4月21日の発売を前に、実機に触れて撮影体験ができる。
ソニーブースの左側には、最新のAIプロセッシングユニット搭載のミラーレスカメラ「α7R V」を使った“リアルタイム被写体認識”の体験コーナーを構える。人物、動物、鳥に加えて、昆虫、車/列車、飛行機といった被写体もこのカメラで認識対象として選べ、実際にこのコーナーでは女性モデルだけでなく、走る電車の模型なども用意していた。
α7R Vのリアルタイム認識AFは、被写体の骨格情報を使ってその動きを高精度に認識。人物の瞳の認識精度をα7R IV比で60%向上させただけでなく、姿勢推定技術を用いて処理を行うことで、人の胴体や頭部の位置も高精度に認識する。
たとえば、顔が見えていない後ろ向きの状態の人物もしっかり捉えられ、マスクなどで顔が見えないシーンでも人物の頭部を認識し続けるという。画面内で人物のサイズが小さいシーンでも、確実に狙った人物を捉えてAFを合わせ続けるのも特徴だ。
発表されたばかりの新製品として、3月24日に発売予定の「DSC-HX99 RNV kit」も展示。QDレーザとの協業により、ロービジョン者の創作意欲に寄り添う網膜投影カメラキットとして注目を集める製品だ。
ロービジョン者とは、何らかの原因により視覚に障がいがあり、メガネやコンタクトレンズを装着しても見えにくい、まぶしい、見える範囲が狭くて歩きにくい……といった、日常生活での不自由さをきたしている状態の人のことを指す。
ソニーは、ロービジョン者の”見えづらい”を“見える”に変えるQDレーザのプロジェクト「With My Eyes」に、主要賛同企業として参加している。今回は新たな取り組みとして、ソニーのコンパクトデジカメ・サイバーショット「DSC-HX99」に、レーザ網膜投影技術を応用したビューファインダー「RETISSA NEOVIEWER」(レティッサネオビューワ)を組み合わせた、網膜投影カメラキット「DSC-HX99 RNV Kit」を市場投入していく。
DSC-HX99 RNV Kitでは、カメラがとらえる景色をHDMI経由で専用ビューファインダーに送り、眼のピント調節能力の影響を受けにくいレーザ網膜投影方式を用いて、ユーザーの目の奥にある網膜に直接投写。これによって写真や動画の撮影を可能にする。
実際にメガネを外した状態で筆者もファインダーをのぞいてみたところ、カメラのライブビュー映像や各種メニュー表示がメガネなしでクリアに見えた。視力に問題がなくメガネがいらない人には伝わりにくいかもしれないが、視力補正のためにメガネが手放せない人にとっては実に画期的で不思議な体験だ。
QDレーザではこれまでにも、レーザ網膜投影方式を利用したアイウェアやスマートグラスなどを他社と組んで展開してきている。ソニーと協業して作ったDSC-HX99 RNV Kitにも、同様の技術を応用。従来のビューファインダーや画面では見えづらかったという人にも、カメラを使った撮影体験を提供していく。なお、この製品から出力するレーザーは通常のライトなどの光源よりも弱く、安全性を確保していて、関連法令に適合していることを示すPSCマークを付して販売するとのこと。
ソニーブースでは他にも、映像クリエイターのコンテンツ制作を支えるサービス群を紹介していた。新たに個人向けにも提供を開始したクラウド制作プラットフォーム「Creators' Cloud」も紹介。最先端のカメラ技術とクラウド技術を掛け合わせ、撮影からコンテンツ制作全般までクリエイターをサポートする。
個人向けには、カメラで撮影した動画・静止画をクラウドサービスへアップロードするスマホアプリ「Creators’ App」、カメラメタデータとクラウドAIを活用した動画編集クラウドサービス「Master Cut(Beta)」、クリエイター同士がつながって作品を発信できるコミュニティ機能「Discover」などを新たに提供。
Creators’ Appは、カメラで撮影した動画・静止画をクラウド上へアップロードするスマホアプリで、2月下旬以降に提供予定。Creators’ Cloudのクラウドストレージには、PCやスマホ、Master Cut(Beta)などからアクセスでき、手軽にファイルの閲覧や管理が可能になるという。
Master Cut(Beta)は、撮影する動画だけでなく、撮影時に収録されるカメラとレンズのさまざまなメタデータを、クラウドAI技術を活用してクラウド上で高速・高精度に動画を補正。「最終制作前の高品質な下地作りを簡単に行える」というものだ。
具体的には、短時間で高精度な手ブレ補正を実現。加えて、クラウドAIの画像解析が類似するシーンごとに自動でグルーピングするため、クリップを仕分ける手間が省け、より効率的に動画を選びやすくなるという。また、音源分離による音ノイズ除去と音声レベルの最適化も実現する。
クラウド上で使えるストレージ容量などが異なる、4つのプランを展開。このうち、無料プランでは5GBのクラウドストレージを使用でき、さらにソニー製カメラを登録すると25GBまで容量を拡大できる。有料の100GB、500GBプランも用意する。
ソニーブース内には、映像制作クリエイターを目指す人に向けた動画コンサルティング・ワークショップコーナーも設けている。
ここでは映像制作用カメラ「Cinema Line」シリーズのなかでもコンパクトな「FX3」(フルサイズ機)、「FX30」(APS-C機)をはじめ、プロ向けの映像制作用カメラとロボティクス技術を融合させ、シネマ風の映像をリモート撮影できるカメラ「FR7」などの実機デモも見られるしつらえになっていた。
ブース展示什器の一部には、環境への取り組みとして、ソニーグループが開発した紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」を使用。産地を特定した竹、さとうきび、市場回収したリサイクル紙を原料に開発し、環境に配慮した紙素材だ。また、ブース内スタッフが着用するウェアとマスクには「Triporous」(トリポーラス)と名付けた、米の籾殻を原料にした素材を採用している。
ソニーブースで開催するセミナーには、今回初登壇となる写真家・映画監督の蜷川実花氏や、マルチクリエイターの「平成フラミンゴ」をはじめ、著名なプロフェッショナルのクリエイターを多数講師として迎える。ほかにも、第一線で活躍するクリエイターからソニー製品の魅力や撮影テクニックなどが学べる、各種スペシャルセミナーも行う。一部のセミナーはオンラインでも同時配信を予定しており、オンラインイベントは2月27日から3月31日までアーカイブを提供する予定。