反応開始3時間後にPEEKが完全分解され、19時間後には解重合中間体である「ベンゾフェノンジチオラート」と「ベンゼンビスオラート」が生成された。ここに「ヨウ化メチル」が添加され、ベンゾフェノンジチオラートのみが反応。最終的に。「4,4’-ジメチルチオベンゾフェノン」とPEEKのモノマーの1つである「ヒドロキノン」の回収に成功したという。4,4’-ジメチルチオベンゾフェノンは重合可能なモノマーに再生でき、実際にPEEKと類似した構造の交互共重合体の合成が達成されたという。

また、ヨウ化メチルの替わりに、「2-ブロモエタノール」と「塩化メタクリロイル」が順次加えられたところ、高屈折率樹脂の原料として利用できる「機能化ジチオベンゾフェノン」が得られたという。

このように、今回の解重合法は単にモノマー再生にとどまらず、さまざまな機能性分子を合成できることから、PEEKのアップサイクリング法にもなり得ると研究チームでは指摘している。また、粉末状だけでなく、ペレット状やフィルム状のPEEKにも適用できるので、素材に対して汎用性があるともしている。

  • PEEKのモノマー単位解重合

    PEEKのモノマー単位解重合。図は、原論文の図の引用・改変されたもの (出所:産総研Webサイト)

さらに今回の解重合法は、純粋なPEEK素材だけでなく、炭素繊維やガラス繊維で強化されたPEEK材料にも利用可能だという。炭素繊維を30wt%含む強化PEEK素材を細かく粉砕し、適量の硫黄求核剤とアミド系溶媒を用いて解重合し、ヨウ化メチルで処理すると、PEEKのモノマー単位まで分解した4,4’-ジメチルチオベンゾフェノンとヒドロキノンを含む解重合混合物が得られるとする。ガラス繊維強化PEEKを用いて同じ解重合を適用しても、同様の生成物が得られるという。

  • 強化PEEKの解重合

    強化PEEKの解重合。図は、原論文の図の引用・改変されたもの (出所:産総研Webサイト)

それに加え、純粋なPEEK素材の解重合にポリプロピレンやポリスチレン、ポリアミドを共存させても、PEEKの解重合が問題なく進行することも確認された。今回の解重合法は、複合PEEK材料やほかのポリマーの共存下でも適用できるとしている。

研究チームは今後、今回の研究成果をもとに、すべてのプラスチックをリサイクルする社会の実現に向けてPEEK以外のさまざまなスーパーエンプラ、スーパーエンプラ以外の安定プラスチックの解重合を実施するとした。また、新たな解重合触媒を開発することで、より効率的な解重合技術を開発し、社会実装を目指すとしている。