ウイルスは病気を引き起こすことから病原体として扱われてきた。米ネブラスカ大学の研究チームは、そんなウイルスを餌とする微生物を発見したという。米国科学アカデミーの機関誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」にて、研究結果を掲載している。

  • 食物連鎖の下剋上? ウイルスを食べる微生物を発見 - 米ネブラスカ大学

    ウイルスを餌とする微生物が発見される

ウイルスの中には、アミノ酸、核酸、脂質、窒素、リンなど、餌を求める生物にとって重要な栄養素で構成されており、同研究チームは、「きっと、何かがそれをエサにしようとするはずだ」と考えたそう。

本研究では、近くの池の水を採取し、そこに特定の藻類に感染することで知られるクロロウイルスを加えて実験を行った。結果として、2日間でクロロウイルスの数は100分の1に減少。しかし、淡水に生息する微小な繊毛虫の一種であるハルテリアは、約15倍の大きさに成長したというのだ。

次に、クロロウイルスの遺伝子を蛍光グリーンで染色しハルテリアに投与。すると、ハルテリアの胃袋に相当する液胞が緑色に光り、ウイルスを食べていることが分かったそう。さらに、ハルテリアは、クロロウイルスを食べないと成長しないことも判明したという。

同研究チームは、ハルテリア1匹が1日あたり1万~100万個のウイルスを食べていると推定。小さな池では1日あたり100兆~1京個のウイルスが消費されている可能性があると見積もっている。

同研究チームは、ウイルスは食物連鎖の頂点に立つ捕食者として位置づけられているが、他の捕食者と同様、ウイルスもまた食物として機能することができると主張。この現象を「ウイルス食(virovory)」と呼んでいる。「これが本質的に真実であるかどうかを調べなければなりません。」と述べ、今後は、自然界でもウイルス食が発生しているかどうかを確認する予定だとしている。