候補となるリスク因子としては、出産時の年齢・BMI・喫煙量・内科的な既往症(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)・精神科的な既往症(うつ病・統合失調症・人格障害・不安障害・アルコール使用障害・適応障害など)・向精神薬の服用歴・産前の自殺企図の既往などが網羅的に検証された。

またこれらの精神科疾患は、一部の患者では何種類か合併しやすい傾向があったとする。そのため、それぞれの説明変数で単変量解析を行うだけでなく、適切な変数選択を行った上で、ロジスティック回帰による多変量解析も実施され、それらの説明変数が独立したリスク因子とみなせるかどうかの検討がなされた。また、産前に自殺企図のある妊婦は産後も自殺しやすい傾向があったことから、産前に自殺企図のある妊婦を母集団から除いた感度解析も行い、得られたリスク因子についての再現性が評価された。

その結果、BMIや解析対象とした内科的疾患の既往は、産後の自殺企図の有意なリスク因子ではなかったという。一方で、うつ病・統合失調症・人格障害・不安障害・アルコール使用障害などの精神疾患の産前既往は、産後の自殺企図の有意なリスク因子であることが明らかになった。

多変量解析で算出された産後自殺企図に対するオッズ比は、うつ病のオッズ比と比較して、アルコール使用障害・Brinkman指数600以上の多量喫煙歴・統合失調症・不安障害・人格障害などでより高いオッズ比が得られたとする。また産後の自殺企図は、喫煙歴があると頻度が増し、若い女性でやや多い傾向も見られたという。

  • 産後1年以内の自殺企図入院における各リスク候補因子のオッズ比

    産後1年以内の自殺企図入院における各リスク候補因子のオッズ比(出所:東北大プレスリリースPDF)

研究チームは今回の研究によって、産後1年以内に発生する母親の自殺企図のリスク因子として、産前のうつ病既往にも増してアルコールやタバコの使用障害・統合失調症・不安障害・人格障害などの精神疾患の産前既往が重要であることが示唆されたとする。また、今後産後の自殺を予防するために、これらの産前リスクを有する妊婦への適切な評価法や介入法の確立が望ましいとしている。