ソフトバンクから2022年10月7日に発売された「AQUOS sense7 plus」を試用しました。人気のミドルレンジスマホ「AQUOS sense」シリーズの最新機種で、他販路向けのAQUOS sense7とはひと味違う魅力を持ったソフトバンク限定モデルです。
AQUOS sense7/sense7 plusはカメラ性能が進化
2017年から続くAQUOS senseシリーズは3万円台のボリュームゾーンを中心に展開され、AQUOSスマートフォンの国内シェア向上に大きく貢献してきた看板商品です。ただし、2022年モデルからは弟分のAQUOS wishシリーズがラインナップに加わり、少し立ち位置が変化しています。ベーシックな性能で手頃に買える機種というポジションはそちらに譲り、AQUOS sense7/sense7 plusはスマートフォンを使いこなしている目の肥えたユーザーにも、より魅力的に映るような機種にパワーアップしました。
価格は通常のAQUOS sense7が5万円前後(※取扱事業者によって異なる)、ソフトバンク独占販売のAQUOS sense7 plusが69,840円。SoCは2022年夏モデル~冬モデルのミドルレンジスマートフォンの多くに採用された「Snapdragon 695 5G」を搭載しています。処理速度だけを見れば現行のミドルレンジスマートフォンとしては平均的なレベルですが、カメラ性能や充実した機能、作りの良さなど隅々まで見ていくと、ミドルレンジとしてはやや高めでも差額分以上の価値はあると感じます。
まず、AQUOS sense7/sense7 plusに共通する最大の進化点はカメラです。メインカメラのセンサーは前モデル(AQUOS sense6)の1/2型から1/1.55型に拡大され、全画素像面位相差AF対応でAF速度も2倍高速化されました。
シャープは2021年から世界的カメラブランドのライカと協業しており、AQUOS R7などの上位機種はライカ監修のカメラを搭載しています。普及機のsenseシリーズのカメラにはライカは携わっていませんが、AQUOS R6/R7や兄弟機のLEITZ PHONE 1/2の共同開発で得られたノウハウは蓄積されており、画質チューニングなどの面でシャープ側の開発チームのレベルアップにも繋がっていると思われます。特に風景写真などでは自然かつ綺麗な発色になったと感じました。
AQUOS sense7 plusのカメラで試し撮りしてみたところ、大型センサーの採用で特に夜景などの写りがノイズも少なく鮮明になったこと、オートフォーカスがハイエンドスマートフォンにも負けず劣らないレベルで速く正確になったことが好印象でした。
ちなみに、AQUOS sense6では超広角/広角/望遠のトリプルカメラが搭載されていましたが、AQUOS sense7/sense7 plusは超広角/広角のデュアルカメラになりました。
しかし、「望遠カメラが無くなった」とがっかりするのは早計です。広角のメインカメラを1/1.55型で約5,030万画素という大型かつ高解像度のセンサーに変更することで、2倍相当に切り取っても従来機の望遠専用カメラ並みの画質を保っています。プリントしたりさらにトリミングを試みたりしない限り、さほど大きな欠点には感じないでしょう。
plusだけの魅力はAV性能、動画をよく見る人に最適
ここまでに紹介したカメラの性能は、通常のAQUOS sense7でもAQUOS sense7 plusでも変わりません。では“plus”の違いはどこにあるのかというと、名前の通り画面サイズを6.1インチから6.4インチに拡大した上で、大画面を活かせるAV性能が大幅に強化されています。分かりやすく言えば、動画を観るのにうれしい機能が揃っているのです。
ディスプレイはsense7/sense7 plusともにシャープ独自の有機EL「IGZO OLED」を採用。10億色表示の「リッチカラーテクノロジーモバイル」、最大輝度1300nit、コントラスト比1,300万:1などといった映像表現の美しさだけでなく、液晶のIGZOと同様にアイドリング技術による省電力性能も秀でています。
その上で、AQUOS sense7 plusではリフレッシュレートを60Hzから120Hz、さらに実効120コマ+黒画面挿入120コマの疑似240Hzまで高速化。この時点でハイエンドのRシリーズと同等ということになりますが、さらにAQUOSスマートフォン史上初の動画専用プロセッサまで搭載されました。
この動画専用プロセッサはフレーム補間に特化しており、ごく普通の60fpsの映像を120fps相当の滑らかな映像にグレードアップしてくれます。特別な設定は必要なく、YouTubeやNetflixなどのストリーミング再生に対しても適用されるため、意識せずとも多くの身近なシーンで恩恵を受けられます。発売前のメディア向け体験会で特別に補間機能を有効/無効にした端末を並べて見比べる機会がありましたが、一定の速度でパン/チルトしていくようなカメラワークだと特に効果が表れやすいようでした。
そして、美しい映像には良い音も組み合わさればさらに臨場感・没入感が増すというもの。音響にもこだわり、plus専用の「ステレオスピーカーBOX構造」が採用されています(通常モデルはモノラルスピーカー)。ボディの内部空間にそのまま音を響かせるのではなく、他のパーツの影響を避けて区切られた専用スペースにスピーカーユニットを閉じ込めることで、音の響きを整えてあります。特に低音域の音圧が増しており、AQUOS sense6比で約2倍とのこと。映画なども滑らかな映像と迫力のある音で楽しめます。
イマドキ珍しい「欲しい機種のためにキャリアを選ぶ」価値がある
2022年モデルでは、軽量化などの尖ったコンセプトを持つプレミアム寄りのシリーズだった「AQUOS zero」シリーズが一旦姿を消していますが、価格帯やターゲットからすれば、AQUOS sense7 plusはAQUOS zero5G basicやAQUOS zero6に近い「ワンランク上のミドルレンジスマホ」とも言えます。
カメラ性能や映像品質のほかにも、剛性感のあるしっかりした作りで質感も高いアルミボディ、マスクを着けたままでも使える顔認証、今後を見据えるとあるに越したことはないeSIMなど、死角の少ない仕様となっています。CPU/GPU性能は高くないのでゲーマー向きではありませんが、それ以外の面ではフラッグシップレベルのスマートフォンに慣れた人が買い替えても見劣りしにくいでしょう。たとえば3年程度使った(発売当時の)ハイエンドスマートフォンから「最近のスマホは高いから、次はそこそこの機種で……」と買い替え先に選んだとしても満足できるはずです。
近年では、通信と端末の分離などの総務省主導による販売環境の変化や、SIMフリーモデル(オープンマーケットモデル)というキャリアを通さない買い方の浸透もあり、各キャリアが扱う端末の仕様やラインナップは差が少なくなりつつあります。そのなかで、ソフトバンクはLEITZ PHONE 2、BALMUDA Phoneなど個性的な端末の「独占販売」を掲げ、一人気を吐いている状況です。
AQUOS sense7 plusも単なるサイズ違いかと思いきや、知れば知るほど「せっかくAQUOS sense7を買うならplusがいい」と通信キャリアの選択も含めて考えるきっかけになるだけの特徴を持った機種でした。
普通のAQUOS sense7と差別化するための後付けの追加機能ではなく、「大画面ならもっと綺麗に動画を見られたらいいよね」「映像が綺麗になったら音も良くしたいよね」という各要素がリンクしており、動画に特化したスマートフォンというキャラクターがしっかり立っています。「写真を撮る」「動画を観る」という多くのスマートフォンユーザーが重視していそうな利用シーンに強みを持つ機種だけに、魅力を感じる人も多いでしょう。