今回KEKにて独自に開発されたビームモニターは、棒状の電極が電子と陽電子にできるだけ近づくように設計されており、電極は90度ごと4か所に取り付けた構造が採用されている。この電極により、わずかな飛行時間差でも精密な計測が可能になったという。さらに、4つの電極により電子と陽電子の通過位置も同時分離計測が実現されたともするほか、厳しい放射線環境下でも安定した超短パルス計測が可能であることが実証されたともしている。

  • 電子・陽電子同時分離計測が可能な広帯域ビームモニター

    電子・陽電子同時分離計測が可能な広帯域ビームモニター。モニター内壁からわずかに張り出した棒状の電極が、90度ごとの4か所に取り付けられている (出所:KEKプレスリリースPDF)

今回のシステムは、上述したビームモニターに加え、耐放射線信号伝送ケーブルおよび広帯域オシロスコープから構成される。特に、システム全体の周波数応答の広帯域化が今回の超短パルス計測の実現に重要だったとする。

なお、研究チームでは、最近の加速器技術の進展により、電子ビームのみならず陽電子、イオン、放射光など、多様で高品質な量子ビームが生成されるようになってきた。利用分野は、産業応用のみならず、医学、薬学、環境や宇宙など、多岐に広がっており、今後の利用研究の発展のためには、極短パルス量子ビームの発生やその可視化技術は欠かせないとしている。そうした中、今回の計測技術は、研究用の高エネルギー加速器のみならず、厳しい放射線環境下にある量子ビーム施設においても広範な応用が期待されるとしている。