しかし、これまでSGLT2阻害薬と腎結石形成に関する詳細な検討はなされていなかったことから、今回の研究では、まず日本のDPCデータベース(糖尿病患者約153万人)を使用し、リアルワールドデータ(医療ビッグデータ)を用いて、SGLT2阻害薬処方の有無で尿路結石の有病率に差があるのかどうかを検証することにしたという。

約90万人の男性糖尿病患者のうち、SGLT2阻害薬を処方されている患者での尿路結石有病率は2.28%、SGLT2阻害薬の処方されていない患者での尿路結石有病率は2.54%であり、SGLT2阻害薬の使用患者では尿路結石の有病割合が有意に低下していることが確認された。

また、シュウ酸カルシウム腎結石形成ラットとマウスを使用した動物実験により、SLGT2の阻害が結石形成にどのように関与しているかの検討が行われたところ、シュウ酸カルシウム腎結石形成ラットでは、SGLT1/2阻害薬であるフロリジン投与により、腎結石形成量が有意に抑制されたとする。

さらに、結石形成に重要なタンパク質であるオステオポンチン(OPN)の発現や炎症マーカータンパク質、腎障害・線維化マーカータンパク質もフロリジン投与により有意に低下することが判明した。

一方、フロリジンの利尿作用による尿量増加が想定されていたが、飲水量と尿量に有意な差は認められなかったとのことで、今回の腎結石形成抑制作用は利尿作用ではなく、抗炎症作用によるものと考えられると研究チームでは説明している。

加えて、SGLT2ノックアウトマウスでは、シュウ酸カルシウム腎結石の形成がほとんど認められず、OPNを含む結石形成や炎症に関わる遺伝子発現もワイルドタイプマウスに比べて有意に低下していることが判明したほか、ヒト近位尿細管培養細胞を使用した検討においても、動物実験の結果と同様に、SGLT2の阻害によりシュウ酸カルシウム結晶接着量の低下ならびにOPNを含む結石形成や炎症に関わる遺伝子発現の有意な低下を認められたという。

  • SGLT2阻害による腎結石形成抑制メカニズム

    SGLT2阻害による腎結石形成抑制メカニズム (出所:プレスリリースPDF)

なお、今回の研究結果を受けて研究チームでは、カルシウム含有腎結石に対する予防薬・治療薬はこれまで存在していないので、腎結石形成メカニズムの解明ならびに腎結石治療薬への応用が期待できるとしている。