理化学研究所(理研)、東京電機大学(電大)、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の3者は10月20日、ガラスと水の電気的相互作用を利用し、圧力で水を流すことで電力発生可能な圧力駆動型の小型発電機を開発したことを発表した。

同成果は、理研 生命機能科学研究センター 集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダー(研究当時)、同・ヤリクン・ヤシャイラ客員研究員(NAIST 先端科学技術研究科 物質創成科学領域 生体プロセス工学研究室 准教授兼任)、電大 未来科学部 ロボット・メカトロニクス学科の釜道紀浩教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

環境発電(エネルギー・ハーベスティング)技術において、歩行などにより発生する圧力(振動)を利用した振動発電が注目されている。しかし、従来の電磁誘導は小型化が難しく、圧電素子では歩行のような遅い動きでは効率が落ちるなどの課題があった。

そこで研究チームは今回、水とガラス流路壁の電気的相互作用を利用し、流路に圧力をかけて水を流し、水を水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に分離することで、電力を発生させることを着想したという。この仕組みなら水がある限り発電が持続するため、歩行のような遅い動きでも十分に電力を発生させることが可能だとする。

ガラスで微細流路を作製して圧力で水を流せば、水中では負に帯電するというガラスの特性でH+は流路に入りやすくOH-は入りにくいため、イオンの分離が生じる。ここで流路の入口と出口をワイヤーで接続すると、電流が流れるというのが今回の発電機の仕組みであり、残った水は再び一定の割合でイオンの電離が生じるため、水を流路に戻せば繰り返し発電が可能だという。

電圧は圧力に、電流は流路数に比例するため、その積である電力を高めるには耐圧性の高い多数の流路を集積する必要がある。それを実現する発電機のデザインとして、円形状の微細ガラスフィルターを作製してゴムパッキンを装着し、耐圧性能の高いホルダーに組み込むという方法が検討された。フィルターの上下にはメッシュ状の電極が取り付けられ、外部の測定機にワイヤーで接続。広い面積から電流を回収できる構造とされた。

  • 微細ガラスフィルターを用いた振動環境発電機のコンセプト

    微細ガラスフィルターを用いた振動環境発電機のコンセプト (出所:電大Webサイト)